◆おとこの娘in出張保健室
道中はずっとモデルウォークをしていたが意外なことに誰も指摘してこなかった。
みんな私のことに興味ないのかな?
「さてそれでは~。みなさんにはこれから教室の中で身体測定を行ってもらいます。身長・体重を図った後に検診を行います」
先生のどこか艶のおびた声で指示された通りクラスメイト達は順番に教室に入っていく。
教室の中には身長計と体重計があり、教室の一角には白いカーテンで仕切られた簡易型の出張保健室が作られている。
おとこの娘になってからの初めての診察。
あの中で私は胸をさらけ出さなければならない。
例年通りなら若い女の先生だ。
いくら元女の子だからといって女性の前で胸をさらけ出すには抵抗がある。男性医師じゃないだけまだましだ。
私がおとこの娘としてちゃんと機能していればきっと反応してしまう。
悠聖は女性に胸を観られても何にも感じないと言っていたが、私みたいにおとこの娘になりたての元女の子は何がきっかけで反応してしまうかわからない。
数字の8とかローマ字のWYで反応してしまうかもしれない。
…… さすがにそれはないか。男の子でも反応しないと思うし。
とにかく!若い女医にでも観られでもしたらきっと私は反応してしまう。
それを観た女医のリアクションはわかっている。
間違いなく悲鳴を上げる。
そしてその悲鳴を聞き駆け付けた先生やクラスメイトに私の正体がバレてしまう。
それだけは避ければならない。
そのために悠聖に股に挟むというアイデアを出してもらった。
最初は半信半疑だったがクリちゃんに抱きつかれたときに反応しなかったので効果のほどは保証できる。たとえ反応しても股に挟んでいれば表には出てこないだろう。
あとは精神力の問題かな。
「がんばれ私。集中しろ」
「そんなに頑張っても体重は減らないと思うな」
「!」
後ろに並んでいたクリちゃんに急に話しかけられた。
びっくりした。
まさか声に出ていたなんて、大丈夫だよね。前半部分は声に出していなかったよね?
「私、声に出してた?」
「『がんばれ私。集中しろ』って言ってた」
「その前の部分は?」
「…… ?何にも聞こえなかったけど、もしかしてとんでもないこと考えてた」
とりあえず声に出していなかったみたい。
危なかった。こんな迂闊なミスでバレるわけにはいかない。
「とんでもないことなんて考えてないよ。ただもうちょっと身長が欲しいなぁって思ってたの」
「なぁんだ。考えてなかったんだ。残念」
何が残念なんだろう?
もしかしてクリちゃんもとんでもないこと考えていたのかな?
「それはそうとどれほど集中しても身長は伸びないと思うよ」
「うっ…… 。わかってはいるけど希望は捨てたくない」
「そこまで身長気にしてたっけ?」
「平均以上は欲しいかなって」
「そんなもんなんだ」
「バレー部のエース様にはわかりませんよーだ!」
私の身長は平均的で高くもなく低くもない。
クリちゃんはバレー部のエースということもあり高身長だ。手足も長くスラっとしていて出るところはしっかり出ているモデル体型。
こんな子がモデルウォークをすれば様になるんだろうなぁ。
今度一度やってもらおうかな。
きっと似合うはずだ。
そんなことを考えているうちにいつの間にか私たちの番が回ってきた。
「私たちの番だよ。集中しよ!」
「あたしはこれ以上伸びなくてもいいかな」
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