第95話 私の考えるミステリー

 毎度おなじみクロノヒョウさんのお題系自主企画。

 今回の縛りは文字数とジャンルだけという緩いもの。あと完結していることって条件もありましたね。

 ところが、実際は全然緩くないの。厳しかったの。

 だって、5,000字以内のミステリーなんですよ?

 いやね、ジャンルがミステリーで5,000字以内ってだけならこれまでも書いたものもあるし、別に難しく考えなければそれっぽいものは書けるんですよ、サラッと。

 ところが今回、難しく考えてしまう理由があったんですね。それは自主企画の内容には書かれていないこと。

 企画主さんが「ミステリーの書き方の参考にしたい」という思いで自主企画を立ち上げたという事実。

 それを知ってしまっていると、書く側にしたら「ちゃんとしたミステリー書かなきゃ」ってなるでしょ、そりゃ。


 そして悩む日々が続きました。

 ごめんなさい、大袈裟ですね。一日ほど悩みました。

 で、近況ノートに書きましたが、三作品没にしたのち私自身初めての挑戦である倒叙ミステリーを書くことにしたのです。

 あ、倒叙ミステリーとは、ですか?

 はい、よく言われる例としてはドラマの「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」のように、最初に犯行現場のシーンから始まり、犯人も明らかにし、それを刑事なり探偵なりが追い込んでいく様子を楽しませるというミステリーです。

 しかし、例に挙げられる二つのドラマ。どちらも古すぎて分からない人が多そう。


 とにかく、私が今回書いた倒叙ミステリー「密室と死体」も被害者が死亡するシーンから始まります。そして、犯人が密室を作り上げる。


 ところで、昔のミステリー界には様々な指針のようなものがありました。

 ノックスの十戒、ヴァン・ダインの二十則、Who, How, Why done it. などなど。

 今では誰もそんなことにはこだわりませんけどね。いや、誰もってことはないか。少なくとも私はこだわりません。


 私の創作に関する指針はふたつ。

 ・筆者が答えや思想を押し付けるのではなく、読者に考えさせること。

 ・期待に応え、予想を裏切ること。

 ジャンルが何であろうが変わりません。

 ミステリーでは後者を色濃く感じさせるようにはしますけどね。


 予想を裏切る。

 これ、凄く大事だと思います。楽しませるためには。

「こういう流れになるとは思わなかった。あれ、でも序盤にあんなこと書いてたから不自然なのでは?」

 とか思わせてもう一度読み返させると、

「ああ、この文はそういうことだったのか」

 なんて発見がある。そういう読まれ方が理想です。


 ミステリー作品の帯に「ラストに潜むどんでん返し!」とかあるじゃないですか。

 あれ、「それを書いたらどんでん返しを構えて読むじゃん」とはならないんですよね。

 なぜかって、近年のミステリーってほぼ確実にどんでん返しが用意されているものだから。あって当たり前。そう思って読まれても「予想を裏切る」書き方ができなければ読者は満足しないのです。特にミステリー慣れしている読者は。


 で、今回の自主企画も期待に応え予想を裏切るような作品にしようと力尽くしたわけです。5,000字の中でね。

 不完全燃焼ではありましたが、まあ、それなりのものはできたのではないでしょうか。

 しかし、もうひとつ書けたら書いてみたい気もしますね。あと二日しかないけど。

 うん、無理か。

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