読者には伝わりにくい作者の思い※意見には個人差があります
西野ゆう
第1話「伏線が回収されていない」とか言うな!
そもそもいつのころからですか?
「伏線」
なんてことばが一般的になったのは。
実は「伏線が回収されていない」という表現は存在しないのです。※意見には個人差があります。
「回収されていない伏線」は「伏線」ではなく「いかにも伏線っぽく書かれたもの」だから。
読者が勝手に深読みして
「序盤に伏線が色々張られていたが、その多くが回収されずに終わってしまったのが残念」
とか言われたら、もうアレです。
「はあ?」
ってしかならんです。それは回収されなかった伏線ではなく、「いかにも伏線っぽく大ぶろしきを広げて無計画に書いた駄文の欠片」なのです。
そう。指摘の仕方は違えど、「けしからん文章」であることには違いない。ただ「伏線がぁ……」ってふんずり返って言っているのがむずむずするのです。
「回収されなかった」あるいは「未回収の」と言われると、執筆歴の浅く素直な作家は「回収しなくちゃダメだった」なんて反省しかねません。
反省すべきは「未回収」だったことではなく、「伏線風のいらない文章」を書いてしまっていることです。
わかります? わかりますよね、書かれる人なら。
さて、そもそも「伏線」とはなんぞ、なんですが、例を挙げます。わかりやすく、だれにも遠慮のいらない自作の中から。
「指導課長・平沙院」より冒頭部分
「おい安部、待て! おい待てって! おっ、くそっ!」
江戸時代からの歴史を持つ
だがそんな看板の力も、営業部がある六階フロアーまでは及んでいないようで、電話口で叫んだ後、受話器を持った左手を耳の横からだらりと力なく下に降ろした男は、「もーっ」と情けない声を上げていた。
はい、以上引用しましたが、この中の「屋根看板」に関する描写が伏線になっています。
仮にこのシーン以降、屋根看板の話題に触れていなかったとしても、誰も「伏線が回収されていない」なんて言わないでしょうね。
だからこその伏線なのです。
どのように回収されるかは、短い物語ですから、実際に読んで確かめてみてください。という宣伝。
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