その6 ~ハワイの謎 その3~

山中 慎太郎やまなか しんたろうは理不尽な結末を迎え、山田 花子やまだ はなこと言う少女に転生&転性した。今世では人類共通の敵エネミーが居て、微力ながら対抗組織が存在する…元の世界ではないが近しい世界であり、エネミーという異物から人類を守る組織がある世界だった。花子は人類の敵を倒す為に対抗組織「対エネミー自衛隊」に入隊の後、自らの高い肉体性能と魔法少女に変身することにより発揮する人外となったと自覚した今…半ばやけっぱちとなってはいるが自らの生活と母親を守る為に頑張ることとなる。そして…ダブルTS少女から魔法少女にクラスチェンジした山中慎太郎…否、山田花子は…本人の意思を他所に何処の誰かもわからない意図に依り、本人が気付かない内に身体を張った実験をさせられるのであった…

━━━━━━━━━━━━━━━


- 日本・対エネミー自衛隊 高円寺支部サイド -


〈ビーッ!ビーッ!ビーッ!〉


『緊急警報!緊急警報!…詳細は通信ルームにて説明します!…手が空いている隊員は全員集まって下さい!…緊急警報!緊急警報!…詳細は…』


2人は顔を見合わせ、事務作業を中断して通信ルームへと急いだ。そして…そこで花子の出張地であるハワイ諸島の現状を知る。



「一体何事だっ!?」


ダンこと段田 弾ダンダ ダンが怒鳴りながら通信ルームへと雪崩れ込む。その背後には安西 奏アンザイ カナデも心配そうな顔で付いて来ている。


「あ、ダンさんお疲れ様です」


通信士が一言挨拶をしてから報告する。


「…その、ハワイ地方にエネルギー性の振動を感知しました…地震かと思ったんですが…」


「まぁ…ハワイじゃ余り地震は発生しないらしいからな…」


どちらかといえば太平洋のほぼど真ん中の島だからハリケーンやら豪雨による洪水の方が被害が多いらしい。高円寺支部は周辺のエネミーに対する事件に集中してる関係上…いちいち海外のニュースには意識を割いている余裕は無い…無いが、日本まで影響がありそうな異変をスルーする程ではない。


「で…何が起こった?」


「それが…」


聞けば、花子が…山田花子が駐留しているオアフ島にエネルギー性の振動を感知したとアメリカ軍から連絡があったと…そこまで聞いた時、


「何ぃっ!?…花子が巻き込まれたのかぁっ!?」


「ちょっ!…部隊長落ち着いて下さい!!…まだ詳細はこれからです!…あちょ!…誰か部隊長を抑えてっ!!」


有無をいわさずに通信ルームから駆けだそうとするダンを、カナデが首トンをして意識を刈り取る…


「はい、これでいい?…重いから誰かコレ、そこのソファに寝かしてくれる?」


…と、圧し掛かれて重そうにしているカナデに冷や汗を流しながら、他隊員がダンを2人がかりでソファへと運ぶのだった…


(相変わらずカナデさん、キレ過ぎ…)


(怒らすとヤヴァイナンバーワンだけはあるな…)


と、そこまでヒソヒソ話をした時点で睨まれて固まる他隊員2名であった…(怖)



- 花子サイド -


「はぁ~…ヤバかった…」


緊急事態だった為…闇の靄ダークマターの吸引機能を全開で使用した。結局…全てを吸い込む前に「基地」が自爆してしまった為に爆発してしまった訳で…


〈でも、本島…オアフ島といいましたか。その一部だけ溶解しただけで済みました。元々、ハワイ諸島には地上生物が存在しない隔離地域となっていたようなので問題は少ないと思われます〉


この基地に居た人間は敵対的行動しか取ってないので生死は気にしてないらしい。そういえば脱出した連中は…?


〈先程脱出した悪の組織の者ですが、垂直離着陸機VTOLで逃亡を図ったようですが…放射された熱波で燃料に引火したようでそのまま爆発四散したようです。殆どは機内で即死…機外に放り出された者も放射熱で瞬時に焼死…というよりは血液と脳が…あ、詳細は不要ですか〉


報告に思い切り渋い顔をしていたら中断してくれた…いや、余りにも惨い死に様とうっかり想像しそうになって止めてくれないかなと思っただけなんだけど…意思疎通も過ぎると対処に困るというか…ま、まぁ…ぼちぼち慣れてくれると助かるかな…ハァ。


ちなみに、ブラック黒壱号はゆっくりと地上へと上昇中だ。周囲は余りの高熱ですり鉢状に開いた穴に溶岩が流れ込んでいて…はっきりいって噴煙のように上がっている煙の暗闇の中だというのにむっちゃ明るい。


「今、何時なんじだろ…」


ちなみにデカホは戦闘時にぶっ壊すと事なので…瞬時には取り出せないけどステータスの収納に入れてある。これはレベル100になった時に生えていた機能の1つだ。衛星電話も使えるので「壊すなよ?絶対壊すなよ?」…と、フリじゃないからなと念押しされているのでまだ容量が少ないのだが入れてある。何処ぞの●チョウ●楽部と違って火傷じゃ済まないからな…


〈13時13分13秒となっています…ハワイ標準時に合わせましたが日本標準時でお答えした方が宜しいでしょうか?〉


ブラックから何故か丁度13繋がりの時刻を知らされる花子。


(なにそれ縁起が悪そうな…)


思わず13日の金曜日を連想するが…まぁジェイ●ンがチェーンソーを構えて襲ってくる訳ではないので取り敢えずスルーし、


「あ、ありがと。もうお昼過ぎてたのかぁ…」


と、今更ながらお昼どうしよう…と考えるが、それよりはとブラックに訊く。


「で、被害は?」


と。



- 被害規模は悪の組織の想定より遥かに… -


〈まず、直接的な被害規模…爆心の規模ですが…〉


「うん」


〈爆心地の此処から100km程です〉


「え…そんなに?」


〈当初の推測範囲より1/40ですし、余波も相当抑え込まれてますから…少なくとも、人類の生息域にはサイクロン程度の熱波で収まってます〉


「え…熱波って?」


〈瞬間的にですが、風速50m前後で50℃程度の熱波が吹いた程度ですね…〉


(え…っと、サウナより弱い温度の熱風が台風並みの威力で吹き荒れたってこと?)


「大丈夫なのか?…それ」


〈子供が外で何の備えも無しにぶつけられない限りには大丈夫じゃないかと…〉


(そりゃ…子供は体重が軽いからなぁ。まぁ…ここで気を揉んでても対処できないし各々の対処に任せるか…)


取り敢えず爆心地である此処の状況確認と対処が最優先事項だろうと、花子は頭を振ってから考える。


「じゃ、状況確n〈まとめておきましたのでこれを〉…お、おう…」


サブスクリーンである手元の小型スクリーンに、まとめておいたもの…が表示される。そのままでは文字が小さくて見難いなぁ…と思っていたら、ヘルメットのバイザーに転送されたので暫く集中する。



【ハワイ諸島の被害状況報告】

---------------

◎オアフ島:火口内部は小破(人工火口の表面装甲が溶解程度)

      地上部分は高熱波により半ば溶解され、残存する建造物などは全て消し飛んでいる模様

◎他の島 :オアフ島の地上部分と大差無し(焼け野原というよりは熱で溶解して一部ガラス質に変

      じている模様)

※マスターの拠点も巻き込まれて吹き飛んで消失済み

---------------



「え…ちょっ…」


残り29日を拠点も飲料水も食料も無しに過ごせとっ!?


〈…尚、悪の組織のバックですが…お聞きしますか?〉


バック?…と聞いて、聞かなかった方がいいような気もするが…このままトンズラしても追いかけてきそうな気もするし聞かない儘にしても結局聞く羽目に遭いそうな気もする。


「…うん」


少し考え…後でショックを受けるより、此処で聞いておいた方がいいと判断した。どちらにせよ、地球上で最も安全そうな巨大ロボのコクピットだ。ショックを受け暫く呆けてても命を狙われる危険は少ないだろうし…



「まさかとは思ってたけど…」


〈事実は小説より奇なりって諺もありますし…〉


(こいつの居た世界って…)


諸々の技術体系が違っててこちらより進んでるけど、時々似たようなことをいってる辺り…


(類似した世界ってことか?)


それは兎も角…だ。


「まさか、あの国がね…」


あの国とはアメリカが…正確には北アメリカ諸国と南アメリカ諸国が連邦国家となった南北アメリカ連邦国家と…何故か地続きとなったカナダの先のソビエト連邦国家の一部を含む、


アソ連邦(アメリカ・ソビエト連邦連合国家の略)


が、バックについているらしい。このオアフ島の地下構造物は南北アメリカ連邦の所有物ということだが…


※本物語に出演している人物と国家などは現実のそれとは何の関係も無いですし、またモデル等も存在しません(全て作者の妄想の産物です!(時折織り込まれる元ネタのあるアニメ・ラノベ等のオマージュは除く(ちょっ!))



「はぁ…もっかい確認するけど」


〈はい〉


「俺の拠点、全部ぶっ飛んじゃったの?」


〈はい〉


「本当に?」


〈…映像を出しますね〉


何故かメインスクリーンのでっかい画面に…真っ平になった地面が映し出される。


「え…っと?」


〈拠点のテントがあった場所です〉


「…マジ?」


〈真面と書いてマジと読みます〉


あ~これはマジもんのマジだわ…と思った花子は


「はぁ~…」


と長い長い溜息を吐き。


「帰ろっか…」


〈私の故郷に来ますか?〉


「いや行けるんかい!?…じゃなくてっ!!」


と、巨大ロボと誰も見てない疲れるコントをしつつ、花子はあっさりと日本へと帰還の途へと就く…。尚、ハワイ諸島に来る時も特に出国手続きをしてないし、パスポートも持って来いといわれてないので所持してない今…真っ当な入国は無理がある為…かなりの高空を飛んで日本の対エ自・高円寺支部の上空へ達してから姿を隠してから演習場(大型ロボの訓練場みたいな広場)に静かに着地する方法を取った。


※どっち道、支部のみんなに驚かれたり騒がれたりしたけどねっ!



- いきなりの帰還と報告 -


昨夜の騒ぎは取り敢えずスルー。狂ったように喜んだバックアップ部隊の皆がブラックを見たい触りたい分解したいと騒いで…分解されたら堪らないとブラックが逃げ送還したので、狂喜乱舞が狂気だけ残って荒ぶっていた…ので、カナデさんが首トンして大人しくさせてただけだし(よいこはまねしないようにね!)


一応、対大型エネミーラージ用の装備として8mサイズの搭乗型のロボットみたいなのもあるそうだけど…見掛けだけで全然戦力になってないらしい…魔導具の武器で数人で戦った方がまだマシらしい…ロボで戦うと被害がでかいだけで牽制くらいにしかならないとか…ナンダカナァ…。


※内蔵武器は収束率が悪いマシンガンの上、マシンガンの弾丸が当たっても大したダメージにならないので注意を惹く…牽制にしかならないという訳


※基本、飛び道具の銃弾タイプは小型エネミースモール中型エネミーミドルまでしか通用しない。街中でミサイルやロケット砲を使うのは許可が出ないと使用不可で質量弾である銃弾も12mmまでの小銃とされている。流石にロボットが小銃を構えて撃つのは手の大きさから現実的ではないので腕に装着された銃身から発射されるという方式を取っている(腕に装着していれば発射方向を調整が容易という視点から。頭部バルカン砲とかだと更に収束が悪くなり、発射方向も然程機敏に動けないロボなので誤射が増えるし…ということから見送られた)


※それでもスモールの掃討戦では役に立つので今でも訓練はしているしスタンピードの予兆がある時は、時々出動が掛かっている(但し、夜間が主なので昼間しか来ない花子は出動した様子を見たことは無い(苦笑))



「…さて。報告書は書けた?」


「えと…まだです」


「…嘘は書かないようにね?」


「えと…はい」


「…じゃ、もう少ししたらまた来るから」


「あ、はい…」


花子はどうしたもんかと考えていた。


(…まさか…アメリカが黒幕ってなぁ…信じて貰えないよなぁ…はぁ)


どーしたもんかと悶々とするが…やがて意を決してガシガシと書き出す花子。そう…


(うだうだ考えててもしょうがねえ!…そのまま書いちまえっ!!)


開き直ったのであった!w



- 凡そ1時間経過… -


「書けたか?」


ダンとカナデが揃って入って来る。花子は丁度書き終えたらしく、ペンをころころと転がした所だ…否、ペン回しして失敗して机の上に転がっただけであるが(苦笑)


「あ、はい…その、初めてこんなの書いたので」


「事実がわかれば問題無い」


「嘘は…書いてないわよね?」


「…はい」


報告書を受け取り、机の向こう側にあるソファに座って読み始めるダン部隊長と…読み終えた報告書を受け取って読み始めるカナデさん。


(…何か仲がいいよなぁ…この2人)


と思ったが立場が違うこの2人が読み、あらゆる観点から報告書の内容を確認する…という意味があるらしい(後で聞いた話)…まぁ、2人だと流石に少ないので更に後から数人で読むらしいけど…


「はぁ…」


「…成程」


ダンさんが読み終わり、カナデさんが読み終わるまで瞑想でもするように目を瞑っていたが。カナデさんが読み終わって溜息を吐いたと同時に頭の中で纏めていたモノが形になったのか、納得の言葉を漏らす。


「これ…本当のことですかね?」


「…突拍子もないが…事実なんだろうな」


カナデの問いにダンが事実と判断する。


「だとしたら…国際問題なんですけど…」


「だなぁ…」


果てしなく面倒臭いと顔を顰めるカナデに肯定するダン。


「取り敢えず…山田は休め」


「そうね…あんなものに乗って来たのはびっくりしたけど…ゆっくり休めてるとは思えないし。花子ちゃん、仮眠室を使っていいから」


休めといわれても、家に帰って…と思ってたら仮眠室を使えときた。


「えと…帰宅は…?」


「うーん…山田の報告が事実ならな…家はヤバイんじゃないか?」


「ヤバイって…え?」


「今、お前の家に連絡取ってるから。お母さんが居たよな?」


「ええ…」


「隊員を寄越して保護して貰うから…」


マジか?…そう思っていると、何やら外から足音が…どうやら派遣した隊員たちが戻って来たようだ。


「部隊長!」


「おう、早いな。山田の母親は確保できたか?」


確保って…犯人じゃないんだから…


「いえ、それが…」


俄かに表情を険しくするダンさん。


「居なかったのか?」


「はい…」


「中の様子は探ってみたか?」


「いや…エネミーが出た訳じゃないんですし…強制侵入なんてできませんて」


「いや、そりゃそうか…」


「電話を掛けてみたんですが…誰も出ませんでした」


「え?」


今日は何処にも出かけるなんて聞いてなかったし、買い物に出かけても以前の老婆の頃と違って若返ってる訳だし…1時間もしないで帰宅する筈だ。


「ちょっと電話借りてもいいですか?」


「あぁ…」


部屋に備え付けられている外部にも通話可能な電話を借りて発信する。


「…」


呼び出し音が鳴るので電話は生きているとわかる…だが、幾ら電話しても相手が出ない。一度切り、渡しておいた携帯電話の番号に掛けると…


『ハイ?』


(…誰だ?)


聞いたことのない男の声・・・が返ってきた。


無言でダンさんに受話器を渡して頷く。


「俺だ」


『オレオレ詐欺?』


「いや、お前こそ誰だ?…この電話の持ち主は女性の筈だが…」


『…シット!』


ぶづっ…


と通話が切れる。


「…どうやら手遅れだったようだな…あちらさん、お前にご執心のようだぞ?」


(いや誘拐犯にそんな対応したら切るだろ!)


…と思いつつ、最悪でも殺される心配は無い。取り敢えず身柄はこの世から消えてなければどうとでもなる。


「はぁ…ストーカーですか。人気者は辛いですね…」


この場に居た全員が、


(((ストーカーなんてもんじゃないだろ!)))


と総突っ込みしていたw


「取り敢えず…」


携帯電話を起点に探ってみる。すると…


「居ました」


「何が?」


「何って…うちの母ですが?」


「は?」


「取り敢えず…今、移動中みたいですね…あ、今高速に乗ったみたいです。ここは…新宿か?…ってことは…」


「西新宿ジャンクションか!」


いきなり叫ぶ部隊長に顰める花子。


「急げ!検問とか悠長にやってる暇は無い!!」


「花子ちゃん!…お母さんに渡した携帯電話の機種とか番号はわかる?」


「えぇ、まぁ…でも追いかけるのは無理かと…もう電源切られてますし」


一斉に振り返るダンとカナデだが、


「まぁ…俺には追いかけられますよ。マーカー付けてますから」


「「マーカー?」」


「その手の魔法って知ってます?」


「聞いたことがあるだけだが…」


「…本当に追いかけられるの?」


「はい」


種を明かせば…花子の魔力を携帯電話に擦り付けてマーカーとしただけだ。もしもの時に、追跡できるように…尚、その魔力の痕跡は触れた者…電話を掛けた者にも浸透する。携帯電話を盗まれた時とか、今回のように攫われた時に…と、用意周到な花子ではあったが、まさか現実に役に立つ時が来るとは流石に思ってはなかったようだ…



- 花子、追跡犬デビューする!w -


「…で、本当にそれ・・で追跡するのか?」


「えぇ、まぁ…」


ダン部隊長に問われ、曖昧に肯定する花子。


「本当に大丈夫なの?…見られたら大騒ぎになると思うけど…」


「あ~…一応隠蔽措置できるんで…」


カナデにも心配される。確かに都心のど真ん中で空飛ぶ10mの大型ロボが現れたらシティパニックになるだろう。今んとこ、飛行可能な2足歩行のロボットは開発中だが成功した試しはない。せいぜい、滑空するか跳躍する程度で…着地には全て失敗しているのだ(苦笑)


「まぁ…物理法則で飛翔してないので音も出ませんし。ローターも回してないので音でバレる心配も無いので」


ひとつ溜息を零すが、意を決してダンが激励をする。


「わかった…気を付けてな?」


「…はい」


「危ないと思ったら退くのもまた勇気よ?」


カナデもそういうと、頷き…花子も頷く。そして…演習場に移動して力ある言葉を紡ぐ。


「カムヒア…ブラック!!」


某ダイ●ーン3の呼び掛けと同じであるw(言葉だけでペンダントを掲げたりはしないが)


〈マスター、私は此処に…〉


すぅ…っと音も無く現れてしゃがみ込むブラック黒壱号


「おおう!」


「本当に現れた…」


「これが召喚術!?」


…と、外野(高円寺支部の暇人たち)がザワつくが、無視スルーして差し出された手の平に乗る花子。


「…いいたいことは色々あるが、後でそいつについても訊くからな?」


「…怪我しないように。ちゃんとお母さんと一緒に戻るのよ?」


ダンとカナデに見送られ、花子は


「はい!…必ず!!」


と返事をしてブラックの方を向くと腕を静かに動かして…胸の前辺りで停止する。そこにはコクピットへと続く開口部があり、中へ滑り込むと上がっていた装甲版が降り、コクピットの座席に苦労して体を固定する間に各種計器に灯がともり…スクリーンが外部を映す。


「はぁ…疲れた。結局休めてないしなぁ…」


と零していると、


〈マスター、2時間ぶりです。取り敢えず闇の靄ダークマターを吸収しながら飛びましょうか?〉


ブラックからそう提案があり、


「任せる。この件が終わってからも頼むことになりそうだから…やり過ぎないように調整しながら頼む」


〈了解しました…〉


そんなやり取りがあった後、ダークマターを吸収しながらゆっくりと浮遊し…移動方向を固定してからその姿を消すブラック。


「おお!消えた!!」


「闇の靄の反応…急速に薄れつつあります!」


「風が…もう行った…のかっ!?」


「闇の靄…反応消失。いえ、また増えつつありますが…」


もし、陽の光がある中で上空から観察していたらこう見えただろう…闇の靄…ダークマターが一定範囲で消えつつ新宿方面へと伸びていく様を…


※ダークマターは陽の光の中では薄れているのでそうは見えないが。見えていたと仮定した場合の話



「さて…母さんの携帯電話の反応はっと…一応、本人と携帯電話は同じ場所にあるようだな」


移動速度からすれば、自動車に乗せられてると思われる。ブラックの移動速度は自動車どころかジェット戦闘機よりも速い。尤も、こんな都心で超音速で飛べば被害甚大となる訳で…ドローンより速い速度で無音飛行をしているという訳だ。


※時速100km/h程度。道路を無視して飛んでるので自動車よりは速い



「ん~…あれか」


現在、皇居付近を飛行中のブラック。姿を見えなくする隠蔽の他…気配遮断の効果も併用しているので全くといっていい程周囲から気付かれてはいない。そして時間も夕刻から夜間へと移り変わっている為…漆黒の姿であるブラックにとって、隠蔽せずとも高度を保っていれば天然の迷彩色となっている(尤も、光源が多い都市では無理があるかもだが…)


「高速道路を降りるのか…何処へ?」


皇居付近で高速を降りて東方向へと走る自動車。ちなみに黒いバンで荷物も人も多く積められる。速度はそれ程でないかも知れないが、人を誘拐して運ぶにはベストではないだろうがベターなチョイスだろう。


「流石に此処で無理やり停めて…は無理だな。騒ぎが起こるし…第一安全に奪還できるかどうか不安があるし…」


バンは山手線の線路を超え…隅田川のある勝鬨橋かちどきはし方面と移動する。このまま真っ直ぐ進めば…


「東京湾…まさか」


〈南北アメリカ連邦国家所属の貨物船が「鉄鋼ふ頭」と呼ばれている場所に停泊しているようです〉


「え…」


〈積荷を降ろし終わり、上からの命令で出航を見合わせている…とのことです〉


「マジかぁ~…」


つまり、こういうことだ…。花子の母親を誘拐して船に乗せて出航し…人質として有効活用すると…


「人を基地毎殺そうとしておいて、今更何を…」


〈殺し損ねたから…そんな危険人物を人質を用いて捕らえ、強力な人間兵器として有効利用しようとしているのでは?…〉


いやあんた…何でそんな物騒なことをポンポンと…って


「そういや巨大ロボだもんね。兵器?ならそんな思考もアリか…」


自分で質問しようとして納得の理由にorzする花子であった…いや、狭いコクピットだからorzはできないけれども!


━━━━━━━━━━━━━━━

その3で終わるかと思ったらまさかの世界大戦勃発!?(せんてw)…に、その4とかその5もありそうだな…と匂わせておいてその4で終わるかもだけどネタが出ないで2週間後にお披露目という展開もあるかも!?…ってことで、モヤるけれど次話に引き継ぐのだった!(なげーよ!)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る