代恋愛
佐藤ムニエル
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きっかけは何だったか覚えていない。ただ何の気なしにサイトへ繋ぎ、利用者登録を進めていた。何としてもそうしようという確固たる意思があったわけではない。久しぶりの酒でほろ酔いとなり、〈話の種に〉と軽い気持ちが湧いた程度のことだったと思う。
十三桁の社会保障番号を入れるだけでこちらの名前や住所、職業に年収など、全ての個人情報がサービスの提供者に伝わる。自分の人格が数値化され、電脳空間へ吸い込まれたような気分になる。実際、画面の中に現れたのは俺の分身とも言える存在だった。ネットに漂う俺の個人情報とカメラ越しにスキャンした外見で構成されたアバター。あとはそこに魂が入れば〈俺〉として動き出す、電子の分身だ。
もっとも、そいつを動かすのは俺の魂じゃない。優秀なAIが、俺より遙かに上手く立ち回るはずだった。少なくとも、俺向けに表示された個人広告にはそう書かれていた。
アバターの設定が終わると、質問項目が出てきた。対象とする性は? 価値観は近い方が良いか? 敢えて選ぶなら外見と内面どちらを重視するか? 十に満たない質問に次々と答え、登録ボタンを押す。これで俺のすべきことは全て終わる。後は俺の皮を被ったAIが自動で事を進めてくれる。
俺の代わりに生涯の伴侶を見つけてくれるというわけだ。
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