クズ校生の青春シリーズ〜私のヒーローはヤヴァイ

クマとシオマネキ

エピローグ~私のヒーローは見えない敵と戦っている~

「お前がヒロインで俺はヒーローだ、2人で世界と戦おうぜ!」


 4年前の小学6年の時、引っ越しをした。

小心者の私は自分の意思も無く、言われるがままに、10年過ごした街をお父さんとお母さんといっしょに出る事になった。


 特に中の良い友達がいないのを知っていた母は「中学から友達を沢山作ればいいのよ」なんて軽く言われた事に内心ムカッと来た。

 しかし小心者で地味、知らない人に話すのは極端に苦手な私にとっては、私の事を最初から見えていない同年代と同じ中学に入り、最初からぼっちが確定している生活の方が気楽で良いと思っていた…しかし小物の私がもちろんそんな事は言えるハズもない。


 小学校の卒業式が終わったらそのまま新しい家(といっても隣町だが)に行く事になっていた私は、卒業式の時に唯一私に話してかけてくれる…いや、誰とでも気軽に話す、幼稚園からの知り合いで、ヤンチャバカで有名な彼に、引っ越しの話をした。


「どしたよミケ?シケたツラしてるなぁ、引っ越し?いいじゃん!中学デビューして目立っちゃえよ!お前ならアイドルでもお姫様でも何でもなれるZE!」


「そんな…私じゃ無理だよ、アイドルもヒロインもなれないよ…」


「隣町じゃ、誰もお前の事なんか知らないんだ。つまり何やったっていいんだぜ?俺だったら、全身黒ずくめにしてカッコいいセリフを言いながら上級生をバッタバッタとなぎ倒して、学年テストを1位を取って勇者ハーレム作るね、俺だったらな!」

「お前は女だから赤色がいいな、レッドが良いよ!赤色の極悪令嬢とかハンパないし、全身タイツヒーローだったらレッドは最強だもんな!」


 ちょっと後半、何を言っているか分からないが、お母さんと同じような事を言っているのだろう。それでも彼なりにエールを送ってくれているのは分かった。


「だったら約束しようぜ、お前がヒロインになるなら俺はヒーローになる。どこかで再開したら二人でバディ?つーの?そんなん組んでこの腐った世界と戦うんだよ!どっちかの心が折れたら世界は終わりだ!つーわけで頼んだぞミケ!」


きっと今までの話は昨日やっていたゲームか小説の話なんだろう。


「そんなぁ…えぇ~…(困惑)わかったよ、でも約束だよ?ちゃんとヨー君も守ってね?」

「まかせろガッテンだ!!!…あ!やべぇ、母ちゃんとチコが行っちゃうから俺帰るわ!じゃあな!ミケも元気でな」


 サムズアップして去っていくヨー君、彼は幼馴染の所へ行ったのだろう。

お似合いの2人だ、中学でも仲良しなんだろうな。私なんか、いつか会ったとしても覚えていないんだろうな…でも…それでも何かを感じた私は彼と約束を守る為に頑張る事にした、どんな物語でも良い、ヒロインになると。

そして彼がピンチの時、彼を救えるヒロインになると心に誓った。





そして4年後、私のヒーローは…




 繁華街のど真ん中で、まるでそこに人がいたかのような、何かを抱いているようなあすなろ抱き?ポーズのまま、白目で舌が突き出たアヘ顔?を晒し、下半身は小刻みに痙攣し、目からはスーっと涙が零れていた。


 私のヒーローの前には、誹謗中傷が止まらない彼の中学時代の同級生と思われるゴミども、そして彼の後ろには、私を含め同じ学校の(ヨー君曰く)ソウルメイトの5人がメンチを切っている。


 何が起こっているのか分からない…でも…私は…戦うんだ…彼を…救うんだ…

彼の事を考えると切なくて胸が潰れそう…怒りで血管が悲鳴を上げている…


                  決めた。


中学時代に私が決めたルール。それは、分からないなら、とにかく気に入らない奴をためらいなく硬い何かで全力フルスイングで殴る。決めた。私えらい。


 私は通学用のバックにしまっていた、背中に「NTR」とプリントされたシャカシャカ素材の真っ赤なジャージ上下を制服の上から被り、メガネを外し、三つ編みを解き、前髪だけひろい、頭の上で団子を作る。近くにあった廃棄自転車を引きずりながらゴミどもに全力で圧をかけながら近づく。


 「おおおおおおおおんn?オォマエィラよぉ!?誰に向かってナマこいてんだぁ?ブっ殺してやんよ!なぁ?おいぃ?ドタマミンチにしてやっから並べや!あああァン?」


 私の恋の戦いは始まったばかりなのだ

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