欲張り過ぎた男

@shigakiyui

第1話 リーダーシップ

「ゆいさん、それで、どの様にマインドコントロールにハマっていったのか教えて頂けますでしょうか?」


40代男性のカウンセラーの篠田がしっかりとした口調だが、語尾を努めて柔らかく尋ねる。


「あれは2年ほど前の8月ごろでした…」

ゆいが話し始める。

膝の上でハンカチを固く握りしめて緊張している…


「私がいつも行っているボランティア団体がありまして、そこではボランティアに行かない時でもよく拠点に人が集まって、たわいない話をしていました…」


*・゜゚・*:.。..。.:*・':.。. .。.:*・゜゚・*

(回想)


滝崎「今日からこちらのグループ長になりました滝崎と申します。よろしくお願い致します。」


いい人そうな50代男性が挨拶する。

歯切れの悪い話ぶりに気の弱さが滲み出ている。


とあるボランティア団体の貴重な職員として登録者数400名を超えるグループの長を拝命された滝崎。


ゆい「ゆいと申します。よろしくお願い致します」

ぺこりとお辞儀する。


滝崎「何か困った事やご相談事があれば、いつでもご相談ください。何かありますか?」


迫るように聞く滝崎。


ゆい「え!?いや〜」


ゆいは戸惑った。初対面で「相談事何かありますか?」と迫って来る方は初めてだ。

ゆいは必死で相談事を探す…


その時、ひらめいた!

当たり障りない相談事を!


ゆい「お友達がボランティアしたいそうでウチを紹介しようと思いますが…なんだか怪しまれてて…」


滝崎「そうなのですね!それはいい相談ですね!ウチはとても良い組織ですので、ゆいさんがリーダーシップを取ってあげて、絶対にこの日に登録に来てもらう!と決めてお友達に会われるといいですよ!」


ゆい「リーダーシップ?」


滝崎「思いのリーダーシップです!強く強く思ってくださいね。きっと実現しますよ!」


ゆい「分かりました!やってみます!」


そう言いながらホワホワした不思議な感覚に陥るゆい…

(私はどうしてホワホワするのだろう…滝崎さんが癒しオーラ出してるからかな?)


ゆいはホワホワする感覚は嫌いではなかった…この時は…


ゆいは友人と会いボランティア団体の件を話すと今までに無いほどスムーズに登録する事になった。


ゆい「滝崎さん!思いのリーダーシップですね!あれはすごいです!今までにないほどスムーズに登録されました!」


滝崎「良かったです!その調子で頑張りましょう!」


ゆい「はい!ありがとうございます。」


この時から、ゆいは滝崎に対して尊敬する様になっていた…


(回想終わり)

*・゜゚・*:.。..。.:*・'*:.。. .。.:*・゜゚・*


篠田「なるほど。この出来事が始まりですね!ありがとうございます。

それで、この出来事を今のゆいさんが考えてみると、どの様に思いますか?」


篠田の口調は穏やかで落ち着いて居るが、理性的でしっかりしていた。

ゆいも理性的に思い返せた。


ゆい「今、思い返すと、悩みを解決する事で信頼関係を築こうとしている様に思います。

それと…もしかしたら…リーダーシップというのが…」


ゆいが言っていいのか戸惑う…

まだ滝崎に対する尊敬が残っている様だ…


篠田「大丈夫ですよ。ゆいさんが感じた事をおっしゃってください。」


ゆい「はい。ホワホワした感覚は洗脳をかけられていたからかな?と思います。

あと、リーダーシップというのが、洗脳の技術だったのではないかな?と思います。」


ゆいはお世話になった滝崎の事を詐欺師の様に言っていいのか戸惑い

ハンカチをぎゅっと握りしめた。


篠田「そうですか…言いにくい所をありがとうございます。そうかもしれませんし、違うかもしれません。総合的に見て判断したいのでとりあえず、話を先に進めましょうか?」


篠田は努めて優しい笑顔を作りながら

それでいて、キチンとメモをとっていた。


ゆい「それから、私は霊感というか、昔から感が鋭い方なのです…。それで、他の人では分からないであろう悩みが多く、苦しんでいました…」


俯くゆい。


篠田「そこを上手いこと聞き出されたのですね?」


ゆい「そうです…。たまたま2人になった時に…」

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