第142話 激突!
アリアたちはドラゴンを倒し、先へと進んでいた。
「アリア。あの力は何なんだ? ドラゴンがいきなり消えたんだが」
「あれは
彼女がミカエルの契約を破壊したり、相手の魔術を知ることが出来たのは、魔術の応用によって可能としたものである。
相手を傷つけた際に過去を見ることで、相手の全てを把握し、特定の過去を破壊することで契約などを無力化することが出来る。
「凄い魔術だな。そんな力を秘めてたなんて。あのドラゴンも瞬殺しちまうし」
「ふっふー。私はすっごくレアな
「そりゃ心強いな」
話をしながら進み、彼らは草木の中を抜けた。そこには空中に浮かぶ巨大な湖や城、広大な自然という美しくも不思議な世界だった。
「またずいぶんと凄い光景だな。ミカエルはどこにいるんだ」
「奴はあそこにいるよ」
そう言ってアリアが指さしたのは、巨大な城がある大きな島だった。
「じゃな。あそこから妾の気配を感じる」
「けど、どうやってあんな場所まで。空を飛んでいくのか?」
「惜しいね。正解は」
彼女が何もない所へと飛び出したかと思いきや、透明な足場の上に着地した。
「空を歩いていく、だよ」
カイツは目の前の光景がなぜそうなってるのか分からなかった。考えても理解できないと思った彼は、考えるのをやめた。
「……なるほど。ほんと、凄い世界だな。うっかり落ちないようにしないと」
「大丈夫! 私についていけば、落ちることは絶対にないよ。そこのババアがちゃんとついてくればの話ではあるけど」
「安心せいカイツ。こんな生意気女に頼らずとも、妾がお主をしっかり導いてやる」
またもや2人の間にバチバチと火花が飛び散り、今にも殺し合いが始まりそうな重い圧が周りを包む。
「だから喧嘩するなっての。少しは仲良くしてくれ」
透明な道をアリアの案内の元に進み、一行は巨大な城が浮かぶ島へとたどり着いた。
「あの城に、ミカエルの半身がいるのか」
「うん。とっとと半身取り込んで帰ろう。やることも沢山あるしね」
アリアがいち早く城の中へ進もうとすると、突然立ち止まった。
「どうした。アリア」
「来る」
ミカエルはアリアの言葉の意図を読み取り、カイツを抱えてその場から飛び去り、アリアも離れた。その直後、巨大な何かが入り口から飛び出し、彼女たちの居た場所に飛び降りる。
「!? なんだあれは」
それは岩石で出来た巨大なゴーレムだった。背中には天使のような翼が1対2枚生えている。
「半身の作った護衛じゃな。妾たちをこの先に入れたくないようじゃ」
「護衛ね。ならさっさと狩るだけだよ!」
アリアが攻撃しようとすると、ゴーレムは大きく息を吸い込んだ。
「UOOOOOOOO!」
ゴーレムが地を揺らすほどの咆哮をすると、アリアとカイツは、いきなり体の力が抜けてしまい、その場に倒れ込んだ。
「く!? なにこれ」
「体が……重い」
ゴーレムは近くにいたアリアを無視し、カイツが倒れ込んだ隙を狙って拳を振り下ろしてきた。
「なるほど。狙いはカイツというわけか」
拳が当たる前にミカエルが間に立ち、魔法陣を張って拳を防いだ。
「UOOOO」
「うるさい雑音じゃの。吹き飛べ!」
魔法陣が輝くと、強い衝撃波がゴーレムを大きくふっ飛ばした。
「ごふっ……結構きついのお」
「ミカエル、大丈夫か」
彼女が血を吐いてうずくまってしまい、カイツが駈け寄る。
「カイツ。妾たちの目的は半身を手に入れることじゃ。あやつらの相手は妾がする。あの叫びが効かないのは妾だけじゃし、戦力的にもアリアが行った方が良い」
門からは更に何体もの巨大なゴーレムが現れ、カイツを睨み付けている。
「1人で行けるのか?」
「妾を舐めるな。この程度の奴らは妾1人で十分じゃ。行け!」
「カイツ。行くよ!」
アリアはカイツを抱え、ゴーレムの頭上を飛んで超えて行った。
「ミカエル、間違っても死ぬんじゃねえぞ! 絶対にこっちに来い!」
「ああ。分かっておる」
アリアたちが城の中に入っていき、ゴーレムたちがそれを追おうとすると。
「どこを見ておる。おぬしらの相手は妾じゃぞ!」
ミカエルが指を鳴らすと、ゴーレムたちの前に巨大な壁が現れ、城への入り口を阻む。彼女は力を無理に使用したことで血を吐いており、目からも血が流れていた。
「カイツの邪魔はさせん。おぬしらみたいな玩具は、ここで食い止める」
アリアとカイツは城の中を歩いていた。カイツは1人で歩けるほどに回復できておらず、アリアの肩を借りている。廊下は煌びやかに彩られており、明らかに人の手が加えられた痕跡がある。綺麗な絵画も何十と飾られていた。
「……カイツ」
「ああ。俺でも分かるくらいにでかいな」
城の奥へ進むたび、2人は巨大な気配に近付いてることが理解できた。
「今にも押しつぶされそうだ……これがミカエルの半身」
「ここまで大きな気配は初めてだよ。流石は四大天使ってところか」
巨大な門を開けると、そこは玉座のある巨大な広間だった。そこには1人の女性が座っていた。巫女のような服装、豊満な胸にスレンダーな体型の綺麗な姿、頭から生えてる狐のような耳、真っ赤な瞳に大人っぽくも、少女の面影を感じる美しい顔立ちをしていた。その鋭い目はカイツ達を睨み付けている。
「来たか。半身を犠牲にしたとはいえ、ここまで来れるとは思わんかったよ」
「あんたがミカエルの半身か」
「左様。妾は四大天使最強の存在、ミカエルの半身。妾のことは、アナザー・ミカエルとでも呼ぶが良い」
「おいアナザー。カイツの元に来てくれると助かるんだけど。今は一刻も早くあんたの力が欲しいんだよ」
「……ずいぶんと無礼な獣じゃの。それと、妾はそこの器に力を貸す気はないぞ」
「なんでだ……もしかして、アリアが無礼なこと言ったから」
「それは関係ない。お前が器ということが気に入らないからじゃよ」
「俺が……気に入らない?」
「肉体強度、身体能力は塵芥。己の魔力も碌に使いこなせないようなカス。その程度の雑魚をどう好きになれというんじゃ」
アナザー・ミカエルは冷たく、嫌な物を見るような目でそう言い放った。
「半身には失望したわ。なぜこんな塵芥を器にしたのか理解不能じゃ。隣にいる神獣を器にした方がまだマシじゃったろうに」
カイツは彼女の言葉を黙って聞き入れていた。彼女の言葉に怒り狂っているのは彼ではなく。
「ずいぶん好き勝手言ってくれるじゃん。カイツのことを何も知らないゴミババアがさ」
アリアだった。四肢は白い毛がびっしりと生えており、鋭い爪も生やしている。左目には青い炎が宿っていた。
「アリア」
「カイツは手を出さないでよ。このババアは私がぶっ殺す」
「殺すな。せめて気絶させる程度にとどめてくれ」
「それは無理かなあ!」
アリアは一瞬でミカエルとの距離を詰め、顔を蹴り飛ばした。ミカエルは何の抵抗もなくふっ飛ばされてしまい、壁に激突して煙が舞う。
「ちょ……やりすぎだろ」
「四大天使がこの程度で死ぬわけないでしょ。さっさと出てきなよ」
煙の中から現れたミカエルは首が横に曲がっていたが、表情は全く変わっておらず、焦りも無かった。
「えぐいことするのお。妾でなければ死んでたぞ」
彼女は首を掴み、ゴキッと音を鳴らして元の位置に戻した。
「良いじゃろう。1分だけ遊んでやる。さっさとかかってこい。犬っころ」
「偉そうに見下してんじゃないよ。老害が!」
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