第59話 ダレスVSモルぺウス 決着
モルぺウスは手を交差させ、闇を消した。
「おや。この暗闇を消して良かったのかい? せっかく有利なフィールドを作ってたのに」
「今からやることはとっても大変なことだから、幻覚を出したままでは使えないのだ」
彼女は自身の前に本物の鏡を出現させた。
「幻覚というのは脳を惑わす力なのだ。それは相手だけではなく、自分も同様。我は魔物。その爪は鋼鉄をも引き裂き、鋭き牙は肉を貫く。我は魔物。人肉を喰らいし魔物なり!」
そう言うと、彼女の肉が生き物のように蠢き、その姿を変えていく。体から黒い毛が生え、獣のような鋭い爪が生えていく。口には白く鋭い牙が生え、その姿は獣人のようだった。
「なるほど。自分に幻覚をかけて、その姿を変えたのか。面白いことをするね」
「さあ。これで終わらせてやるのだ!」
彼女は地面を蹴り、一気にダレスの懐に近寄った。そのまま爪で切り裂こうとするも、ダレスはその攻撃を受け止めた。だが。
「ぐっ!? このパワーは」
さっきとは比べ物にならないほどのパワーであり、ダレスの腕がしびれてしまった。その隙を逃すまいとモルペウスが蹴りを入れる。それはダレスの腹に直撃し、大きくふっ飛ばされてしまった。何度も地面をバウンドし、ゴロゴロと転がっていく。
「さっきとは次元が違う。これが奴の本気というわけか」
「その通り。これでお前は終わりなのだ!」
モルぺウスは再び蹴りを入れようとするが、ダレスはそれを受け止めた。
「なに!?」
「パワーは凄いけど、来ると分かってれば問題ない!」
そのまま足を掴み、モルぺウスを力の限り投げ飛ばした。
「ちい! なんて野郎なのだ」
彼女は即座に体勢を立て直し、一気に接近して爪で切り裂こうとするが、ダレスはそれを躱して殴りかかる。彼女はその攻撃をはじき、蹴りを入れようとするも、ダレスはその攻撃を足で防ぎ、一旦距離を離した。
「逃さないのだ!」
彼女は追撃するように追いかけ、顔めがけて蹴りを入れようとする。ダレスはそれをしゃがんで躱し、腹に蹴りを入れる。
「ぐっ!?」
「そらいくよ!」
彼女はその勢いのまま殴りかかり、モルペウスはその攻撃を弾いて、攻撃を繰り出していく。爪で切り裂こうとする攻撃を彼女は避けたり受け流したりして躱していく。互いに相手の攻撃は届かせないようにさばいていき、自身の攻撃をどう届かせるかを考えながら攻撃を仕掛けていた。
「ほんと、ここまで肉弾戦ができるとは思わなかったのだ。獣になってる私についてくるとは」
「獣になってる君は凄いね。身体能力がかなり上がっている。ここまで強くなってるとは思わなかった」
「それはどうも。褒めてくれたお礼に、面白いものを見せてやるのだ」
彼女は距離を離して足に力を入れ、地面を蹴った。そのスピードは先程よりも遥かに速く、一気に後ろを取ってきた。ダレスはその攻撃を受け止め、カウンター気味に顔に一撃入れようとするが、それはあと少しの所で躱された。
「たく。ほんとにめんどくさいのだ。なら、もっと速くなるとするのだ」
その言葉通り、彼女はさらに速度を上げてあちこちを飛び回っていく。
「なら、私も速くなるとしよう」
彼女は再び両足の膝横から1本ずつ腕を生やし、大地を強く蹴った。そのスピードはモルペウスと同等の速度であり、彼女たちは互いにあちこちを飛び回りながら拳をぶつけたり、蹴りをぶつけたりしていく。激しい戦闘の最中、ダレスはモルペウスの後ろを取った。
「ここだ!」
彼女が手刀で攻撃しようとすると、モルぺウスはそれよりも速く彼女に飛びかかり、肩の肉を一部喰いちぎった。
「ぐ!?」
彼女は即座に距離を取り、食われた部分を抑える。
「参ったね。肉を喰われるのは初めての経験だよ」
「今の僕は人を喰らう魔物。肉を喰いちぎるくらい簡単なのだ」
「良いねえ。思った以上に楽しめる。君はカイツの次に素晴らしい人間だよ!」
彼女はさらに速度を上げ、モルぺウスに襲い掛かる。モルぺウスも負けじとスピードを上げ、互いにぶつかり合いながら速度を速めて行く。八の字を描くように動き回り、両者はすれ違い様を狙って攻撃するも、それは躱されてしまい、ダメージを与えることは出来なかった。
「くそ! お前は何なのだ! このスピードにもついてくるなんて!」
「私のスピードについてこれる君の方が驚きだけどね。一体どういう体をしてるのやら!」
ダレスはモルぺウスの蹴りをガードし、そのまま掴んで投げ飛ばそうとする。
「何度もやられないのだ!」
彼女は手の爪を矢のように発射した。ダレスは足を離して距離を取り、その攻撃を躱す。
「いつまでもお前に構ってられないのだ。さっさと死ぬのだ!」
発射された爪の再生は一瞬で終わり、彼女は強く地面を蹴った。そのまま懐に入り、ダレスを爪で切り裂こうとするが、それは腕で弾かれる。そのままダレスが攻撃しようと拳を振るい、それが当たろうとした寸前、モルぺウスは口から鋭い牙を発射した。
「なに!?」
自身の攻撃が当たる寸前であり、ダレスはそれを避けることが出来なかった。体に2本の牙が突き刺さり、怯んでしまった。
「そーら!」
モルぺウスはその隙を逃さず、ダレスを爪で深く切り裂いた。
「ぐ……参ったね。こんな隠し玉があるとは」
「終わりなのだ!」
モルぺウスは彼女を蹴り飛ばし、遠くの方へふっ飛ばした。
「たく。ようやく終わったのだ。急いでカイツを追いかけないと」
彼女が4階へ行こうとすると。
「待ちなよ。私はまだ倒れてないよ」
ダレスはまだ立ち上がり、彼女の前に立ちはだかる。
「チッ。本当にしつこいのだ。お前は一体何なのだ」
「バトルが大好きな普通の人間さ。君との戦いはとっても楽しいからね。こんなところで終わらせたくないんだよ」
「あっそ。けど僕は、これ以上君と遊んでられないのだ!」
彼女は一気にダレスの後ろを取り、爪で切り裂こうとする。ダレスはそれに反応するが、さっきよりは明らかに反応が遅く、肩を切り裂かれてしまった。
「があ!?」
「動きが遅いのだ。その程度で僕には勝てないのだ!」
彼女はそのままダレスを蹴り飛ばし、大きくふっとばす。追撃するように距離を詰め、その爪で貫こうとしたが、ダレスはその攻撃を受け止め、彼女の腕を掴んだ。
「まだ……まだだよ。こんなんで終わらせられない!」
「チッ。鬱陶しい。お前なんかに用は無いのだ!」
モルペウスがもう片方の爪でもう一度貫こうとすると、ダレスはその爪めがけて全力で殴り、その爪を破壊した。
「なっ!? この爪を」
「フフ。ようやく鬱陶しい爪を破壊できた」
装着していたガントレットは爪のせいで破壊されたが、ダレスは気にすることなく顔をぶん殴った。
「ぐっ!? このおお!」
彼女が掴まれた腕を離そうとするも、その前に腹を蹴り飛ばされた。
「あが!?」
「そらもう一発!」
ダレスはもう一度彼女を蹴り飛ばし、遠くへふっ飛ばした。
「この……クソッタレが!」
彼女は破壊された爪を生やし、地を這うような体勢になる。さらに、爪はさらに大きくなり、体中に生えた黒い毛が逆だっている。
「ふふ。その攻撃に全てを賭けるといったところか。良いねえ。私好みの展開だ!」
ダレスは両足の膝横に生えていた腕を消し、右腕から2本の腕を生やした。
(右腕に力を込めてる。カウンターで迎え撃つ作戦。やってみるといいのだ)
モルペウスが全力でダレスとの距離を詰め、彼女がカウンターするように右腕で殴ろうとしたが。
「!?」
モルペウスは攻撃する直前で一歩後ろに下がり、攻撃を躱した。
(そんな見え見えの攻撃にやられるわけがないのだ。これで終わりなのだ!)
再び距離を詰め、爪で引き裂こうとした瞬間、ダレスは右腕に生えてた腕を消し、左腕の手のひらから腕を生やし、さらにその腕の手のひらからもう1本の腕を生やして鞭のような形にした。
「そらああああ!」
左腕を鞭のように振るう。モルペウスはそれを避けるどころか防御することもできず、まともに攻撃を受けて叩き飛ばされた。しかし、それでも即座に体勢を立て直し、
「まだなのだ! 僕はー!?」
ダレスに攻撃しようとしたが、それよりも速くに彼女は距離を詰めた。彼女は左腕に生えてた腕を消し、右腕から2本の腕を生やしていた。
「これで終わりだ!」
彼女は全力でモルペウスの顔を殴り、地面に叩き潰した。モルペウスの顔には拳の跡が深く入っており、牙や鼻が拳で潰されていた。そこから更にもう一撃加え、モルペウスの顔を完全に潰し、ミンチのようなものに変えた。
「ようやく終わったか。たく。ウォーミングアップに……ずいぶん時間がかかって……しまったよ」
ダメージのせいか、ダレスはまともに立つことも出来ず、その場に倒れてしまった。
「はぁはぁ……くそ。ここまでか。後は……頼んだよ。カイツ」
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