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階段は深く、そしてとても長かった。
真っ暗な明かりのない階段を一段ずつゆっくりと下りていく長閑はその階段の途中で、『こんなに階段が地下深くにまで続いているのは絶対におかしい』、と思った。
いくらなんでも深すぎる。
地下二階や地下三階くらいの深さではない。
もっと、もっと深い。
(まるで永遠に階段が続いているようにすら、長閑には思えた)
絶対にもう、地下五階分くらいの長さは下りている。
それなのに階段が終わる気配は今のところどこにもない。階段の途中には下り曲がっている箇所が定期的に(同じくらいの深さのところに)あって、そこからまた階段を下っていくと、階段は今度は先ほどとは反対の方向に折れ曲がる、といった構造になっていて、穴は小さな家の真下にまっすぐに伸びているようだった。そのまっすぐの深い穴の中に作られている階段は、ただ真っ直ぐな下方向に向かって、地下に地下に続いている。(階段の曲がり角を長閑はもう五回も通過していた)
……変。絶対に変だよ、この階段。
こんなに深い地下室を個人が、……ううん、もっと大きな組織だったとしても、簡単に、誰にも知られずに、こんな住宅街の中にある一軒の普通の家の地下に作れるはずがないよ。
やっぱり、ここはすごく変で、すごく怖い場所だよ、素直くん。
そんなことを長閑は思った。
こんなに深い穴をあの『奇妙な教団の人たち』はいったいいつの間に(みんなに気づかれずに)掘ったのだろう? と、そんなことを長閑は思った。
夜な夜なみんなが寝静まったあとに、みんなに気づかれないように、音を立てずに、そっと、慎重に、いろんな道具や知識、それからたくさんの人の手を使って、この穴を掘ったのだろうか? そしてそこにこの長い地下の階段を建設して、その先に地下室を作ったのだろうか?
それはいったいなんのために?
世界が滅亡する日がきたときに教団のみんなをこの場所に非難させるためだろうか? ……あるいはそうなのかもしれない。
もしかしたらほかになにか理由があるのかもしれないけれど、今のところ長閑にはそれくらいの理由しか思いつかなかった。
あとは、……そうだな。
素直くんのように、『どこからか誘拐してきた子供たちをこの地下室に監禁している』のかもしれない。
誘拐してきた子供たちを監禁するために、この深い穴をほり、秘密の地下室を教団の本部の地下に作ったのかもしれない。
それは、そんなことを考えたあとでなんだかとてもあり得そうな話だと長閑は思って怖くなった。(変なことを考えなければよかったと思ったあとで、長閑は、ぎゅっとお守りである翼のある猫のアクセサリーを握りしめた)
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