神様の部屋は四角い形をしていてその床を除いた全面が『深い緑色』で綺麗に塗られていた。(床だけは真っ白な色をしていた)

 その緑色の壁には、たくさんの不思議な魚たちの絵が所狭しと描かれていた。(それはまるで、高名な芸術家の人の部屋のようだった。……まあ、実際にひよこは高名な芸術家の人の部屋を見たことはないので、あくまでそういうものだというひよこの勝手な想像に過ぎない妄想なのだけど……)

 不思議な形をした、いろんなカラフルな色をした、実際にはいるようにも見えるけど、たぶん、世界中のどんな海を探してもいないだろうと思われる、空想の魚たちの絵が描かれていた。(そこは、まさに空想の魚たちが楽しそうに泳いでいる、空想の、あるいは妄想の海のようだった)

 その不思議な魚たちの絵を描いたのは、この部屋の主人である(あるいはひよこの主人でもある)神様だった。起きている時間、神様はそのほとんどの時間をこんな風にして、不思議なたくさんの(すごく魅力的な)絵を描くことに費やしていた。

 ひよこの主人にして、またひよこの所属しているある秘密の教団の神様でもある、この小さな女の子の名前を『吉田仄』と言った。

 仄はこのひよこの所属している、信じている、秘密の教団、『まどろみの家』の神様であり、この教団の教祖である吉田夫婦の実の一人娘でもあった。吉田夫妻は自分たちの娘が神様の子であると知って、この教団、まどろみの家をその信仰心に支えられるようにして、一代で組織して、作り上げたのだった。(まどろみの家はきちんと国にも認められている正式な宗教団体だった)

「……ひよこ。ミルクコーヒーが飲みたい」と白いベットの上で上半身だけを起こした仄はまだ眠たい目をこすりながらひよこを見て、(やっぱり単調な機械音声のような声で)そう言った。

「かしこまりました。神様」にっこりと笑って、ひよこはすぐに仄専用の高級なコーヒー豆と新鮮なミルクを使ったミルクコーヒーの用意をした。(ミルクコーヒーは部屋の外にある廊下に、銀色のカートに乗せて、すでに用意してあった)

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