夢があっても恋はしたい~天才小説家までの道筋~

おくら

第1話 夢

「瞬ー起きなさーい!」


「うん、わかってるよ・・・」


ってもうこんな時間!?

初日から遅刻は・・・マズイ!


「何でもっと早く起こしてくれないの!」


「何度も起こしてるわよ」


焦りながらも着々と用意を済ませる。


「朝ごはんは食べないの?」


「うん、食べてる暇なんてない」


「せめてパン食べながら行きなさい」


「ありがとう」


「今日は入学式なんだから」


「そうだね」


「じゃあ、行ってきます」


「いってらっしゃい」


高校生・・・

それは誰もが理想的な高校生活を送りたいと願うことだろう。


だが、人生はジャネーの法則という法則により、年が経つにつれて1年の体感時間がちがうそうだ。

例えば、3歳から記憶が始まっている人は折り返し地点が16歳ということらしい・・・つまり、もう半分が終わったというわけだ・・・


俺は、この高校に入る前にもう、俺の人生の半分が終わっていたんだ!

なーんて思っている高校生は、俺か、ただの心理学好きか、興味が湧いて調べた奴くらいだろう。

なぜだ?!

人生の半分が高校の入学式で終わるなんておか

しいだろ!


子どものころは、毎日学校に行き、生きているだけで新しい発見や学びがあるが、大人になると新しい経験をする機会が減る。

同じことを繰り返す生活に脳が慣れると、特に新しいことがない1日だったとして記憶にも残らず、あっという間に時が過ぎたという感覚になるから年が経つにつれて、1年の体感時間が減るというのが原因らしい。


「校長先生のお話です」

よくわからんがあのヤニカス見たいのが教頭らしい・・・


「皆さん、ご入学おめでとうございます。皆さんは高校生になりました。高校生になるにあたって自分の人生について考えたと思います」


はい、ここに考えてない人がいまーす。


「あなたたちの人生はもう半分終わっています」


は!?

あの校長エスパーかなんかか?

俺が考えていたことがわかったのか!?

まあまあ、落ち着け、よく校長が話しそうなことじゃないか。


そんなことを考えていたらあっという間に入学式が終わった。

これもジャネーの法則なのだろうか・・・

「まあ、なんだかんだで入学式も3回目だしなー」

何かを紛らわすように呟いた。


「これにて、卒業式を終わります。新入生はクラスを発表するのでこのまま待機していてください」

自分のクラスに移動するのかー


えーっと・・・3組でもない・・・あった!

俺は5組か。


階段大変だなー


1ー5っと

黒板に書いてある座席表に座ればいいのかな・・・


俺の席はここか。


「あっ、今日から隣よろしくね!わたしの名前は安土みゆ。」


「あっ、うん・・・よろしく・・・安土さん」


「高校も校長の話って長いんだね」


「そ、そうだね」


「そうだ、君の名前は?」


「俺の名前は寺谷瞬、瞬って呼んでくれ」


「わかった瞬君、改めてよろしくね」


「よろしく」


「あのさーさっき校長が人生の半分終わってるって言ってたじゃん」


「うん」


「それってさ、つまり・・・将来をもう一度考えてみろってことなんじゃないかな?」


「え、どうして?」


「だって校長さ、わざわざ高校に入る前に将来を考えましたよね?って聞いてきたじゃん」


「あーたしかに、言われてみればそうかも」


「で、私が何を言いたいかって言うと」


な、なんだ!?

すげー重たい雰囲気なんだけど・・・


「自分の将来の夢は決まってるか?っていうのを暗示してるんじゃないかと思うんだけどどう?」


「まあ、安土さんの言ってることは矛盾してないしなー」


「でしょでしょ!」


あっ先生が来た


「ホームルーム始めるぞー席につけー」


「はーい」

教室の4割くらいのやつらが言う。


「じゃあ、まずは先生の自己紹介から。1ー5の担任の小原 智治(おばら ともはる)です」


おばら先生かー怖そうな先生だなー。


「ちなみにお前らの数学の担当だから」


「うえええええー--いいいい!」

クラスの陽キャが大声で歓声を出す。

そして、静まり返る。


「じゃあ、次はそこの君で」


「え?」

当てられた。思わず声が出てしまった。


「寺島 瞬です。一年間よろしくお願いします」


「うえええええー--いい!」

それに続くようにまた一人が

「うえええええー--いい!」

と、声を出す。

最後にみんなで

「うえええええー--いい!」

と、歓声を浴びた。


ここから、俺の青春ドキドキスクールライフが始まると実感した。

そう、なんたって、俺は!高校生だから!



そのあと、みんなの自己紹介が終わり、帰りのホームルームが終わる。



「また明日ね、瞬君」


「うん、バイバイ安土さん」


「ただいまー」

あれ?誰もいないのか。

母さんは仕事か?

家に帰って、制服を脱ぐ。

そして、自分の部屋で中2で買った命よりも大事なパソコンを開くのが日課だ。


「はぁ」と、ため息を吐く。

「疲れたー」

半日も学校に行ってないのに疲れた。

声が少し枯れた気がする。


「ん?なんだこれ?」


20XX年度小説大賞!?

賞金50万円!!


えーっとなになに・・・

小説を書いて送るだけでいいのか。

でも、俺に小説なんて書けるかなー

小説なんて書いたことないし。


疲れたし、少し寝るか。


そう、少しだけだ。

少しだけなら問題はない。

そう、少しだけならば

大丈夫だ。

昨日もちゃんと起きたじゃないか

今は帰ってきて17時・・・

よし、18時に起きよう、うん、そうしよう。

1時間だけ。そう、1時間だけ。大丈夫、起きれる、俺は起きれる。

じゃ、おやすみ。


あ、目覚ましが鳴ってる。

起きなきゃ・・・

ん?

目覚ましが鳴ってる・・・

俺、目覚ましなんか掛けてないぞ。

目覚ましが鳴るのは朝だから・・・


俺はとっさに目覚まし時計を見た。

案の定、朝の7時だ。


「腹減った」


まあ、夜ごはん食べてないからな。


やべーめっちゃ寝たのにまだ眠い・・・


ん?


速報です。

天田竜二さんの小説、THE clock〜その時計みたいな恋をしたい〜が、喜多川賞の春の部にて入賞しました。


あっ、昨日見てたやつとはちがう賞のやつだ。

へー小説っていろんな賞があるんだ。

よし、決めたよ。安土さん。

俺、小説家になる。

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