貧乏魔道具店の店主は古龍の宝を探すそうです
こがれ
第1話 開いて三日で経営危機
ソフィア・ルミナリエは魔導師に憧れていた。
ソフィアの母は辺境の街で小さな魔道具店を営んでいた。
毎日のように困り顔の人が母を訪ねて、帰るころには笑顔になっている。
ついたあだ名は『夢を叶える魔導師』。
母は恥ずかしがっていたが、ソフィアは憧れた。
自分も母のような魔導士になりたいと思った。
だから店を建てた。
これで自分も母のような魔導士になれる。そう思っていたのだが。
「どうして、お客さんが来ないんですか!」
客の居ない店に声が響く。
ほんの数日前。開店直後は人が来ていた。
ソフィアは無駄に容姿が良い。
人形のように整った顔立ちと、神秘的な青白い髪が合わさって妖精のようだ。
だから美少女が初めた魔道具店と言うことで、最初は客が入っていた。
しかし二日、三日とたつにつれて客足は減っていき。
今日はお昼を回っても誰一人来ていない。
「うぅ、お店を建てるのと材料の仕入れで、お金もほとんど残ってないですよ」
本気でまずい。
このままでは開業して一か月で廃業する。
……廃業タイムアタックかな?
「お嬢様、この事態なら予測していた」
店の奥から出てきたのはメイド姿の少女。
緑の髪に
「ほのか? どういうことですか?」
「はっきり言って、お嬢様の商才がゴミなことは分かり切っていた」
「ゴミってなんですか!」
ゴミは無いだろう。
メイド少女。ほのかは店の商品棚に近づくと、商品の一つを指さす。
円盤のような形をした魔道具だ
「お嬢様、これは?」
「それは自動掃除機です。勝手に動いて掃除してくれるうえに、障害物に当たっても方向転換するので部屋の隅々まで掃除してくれますよ。まぁ、方向転換機能を付けて小型化をした結果、吸い口が詰まりやすくなったので、掃除させる前に掃除をしなければいけませんけど」
掃除をする前に掃除が必要な掃除機。
哲学かな?
「……こっちは?」
次に指さしたのは巨大な杖。
「それは冒険者向けの杖ですね。10種類以上の様々な現象を引き起こし、組み合わせしだいでは100を超える魔法を扱えます。……お客さんには重すぎて持てないって怒られましたけど」
ソフィアだって作っているときに『あれ、これ重いかな?』とは思った。
だがこれ以上は性能を削りたくなかったのだ。
だって大きくて強い武器ってロマンにあふれてるから。
ほのかはぐるりと店を見渡す。
どれも革新的だが一癖も二癖もある魔道具ばかり。
はっきり言えば、がらくた。
「ゴミじゃん」
ゴミだった。
「お嬢様は使う人の事を考えずに、自分が面白いかどうかで物を作る。だから売れないゴミばっかり量産する」
「そんな! つまらない魔道具には意味がありません!」
「道具は使うためにある。使えない魔道具を作るお嬢様にまともな経営は無理」
「うぐぅ」
ド正論をぶつけられて肩を落とすソフィア。
『面白い方が良いじゃないですか』といじける。
そこに、ほのかは一枚の紙を差し出した。
「ただ、お嬢様の腕は確か。世界一と言っても過言ではないと思う。だから、これを配ってきた」
その紙にはこう書かれていた。
オーダーメイドやってます
魔道具、竜について困っている方はご相談ください
今なら開店祝いで無料相談受付中!
「お嬢様は対面でお客さんの注文を聞けば良い物が作れる。だからオーダーメイドが良い。そして少しでも評判を良くするために、しばらくは無料相談を受け付けて仕事をとろう」
「オーダーメイド、相談……あまり人と話すのは好きじゃないですけど。やってみます」
その時、カランと音を立てて店の扉が開いた。
「仕事をお願いしたいのだが」
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