3-5 高速レベル上げ

 検証の結果として、経験値は等倍で、パーティメンバーの討伐も討伐方法としてカウントされるということになった。


 カイトの【攻撃魔法士】によるアロー系5属性、【ものまね:パワーアタック】、剣・斧・槍・短剣での通常攻撃。そしてフェリアの【精霊弾】の11種類のループでも問題なく双子のレベルは上がるのだった。

 カイトの万能性が光っている。

 これで全てこなせば完全なパワーレベリングである。


 ただしカイトはまだレベル5で最大魔力量も多くない。そのため【ものまね:パワーアタック】は【ものまね:マジックボール】に変更し、アロー系ではなくボール系を使用することである程度の節約をしつつ、双子には魔法銃と弓による攻撃を任せたりした。


 そのおかげで安定して狩ることが出来た。一周20分。リスポーンタイムとほぼ同等でスライムダンジョン9階層の最高効率だ。そうして休憩を挟みつつ、12周。二人のレベルが13になった所でその日の狩りを終えた。


ー▼ー▼ー▼ー


 「カイトは異常。」

 「フェリアも異常。」


 「失礼な。」


 ルナとレナは疲労困憊だった。


 「確かにカイトの戦い方は、聞いていた一般的な攻略者の方法と随分違うし、休憩は適度に取るとは言え、数が普通じゃないわよね。」


 フェリアの言う通りである。

 いくらベビースライムとは言え、一日に狩る数としては異常だ。

 そしてそれに平気でついていけるフェリアもまた異常と言われても仕方なかった。

 特に双子は1次職のレベル上げを経験しているので、その違いははっきりと分かる。


 「鬼畜。」

 「変態。」


 双子は絶好調である。


 「これがカイトの言ってた調子に乗ってからかうってやつなのね。」


 「そうそう。何となく嬉しそうだろ?」


 双子は実は喜んでいた。

 レベルが上がったこともそうだが、カイトとフェリアが親身になって手伝ってくれていることが特に嬉しかったのだ。


 「確かに分からなくもないわね。機嫌が良さそう。」


 「まぁレベルもしっかり上がったしな。フェリアより短い期間で3次職になるんじゃないか?」


 「効率がいいのは確かね。明日からはボスも周回?」


 「それなら俺たちもおいしいしな。それで・・・ルナとレナはどこまでやりたいんだ?」


 「ん?」

 「どこって?」


 「目標だよ目標。俺たちの目標は話しただろ?」


 「ん。」

 「ランク5ダンジョン。」


 「そうだ。それで二人はレベルが上がることが分かって何か思いついたかなと。」


 「うーん。」

 「うーん。」


 「カイト、レベルが上がったとは言えスキルが増えたとかじゃないんだからまだ分からないわよ。」


 「それもそうか。急かして悪かったな。」


 「ん、いい。」

 「ん、大丈夫。」


 「それにしても本当に息ぴったりね。入れ替わりに気付かれなかったのも分かるわ。」


 「二人揃って【雑用士】なのは驚きだけどな。まぁ条件見たら当然だけど。」


 「希少職って言っても、条件を満たしにくいだけであって、なれないわけじゃないものね。」


 「表示では『特殊』だからな。」


 「あれ?そう言えばカイトの【遊び人】の条件ってなんだったの?」


 「あー・・・。」


 【遊び人】の転職条件は『転職を50回する』である。

 聞かれると非常に困る。


 カイトの【ジョブホッパー】のレベル1スキルである【職業一覧】は過去に【職業情報】の対象にしたジョブ情報を再度確認できるスキルである。忘れたと言うのも通用しない。


 「それは今は内緒にさせてくれ。そのうち話す。」


 カイトは保留にした。

 そもそもなんで自分が【遊び人】になったのか定かではないのだ。

 予想としては前世のゲームでジョブチェンジや転職を繰り返したからだとは思うが・・・。


 「ふーん、ま、いいけどね。私は転職方法が分かったとしても精霊たちが怒るから出来ないし。」


 納得してはなさそうだが、追求はやめるようだ。


 「あ、そうだ。ルナとレナ。フリードさんにお礼言っておけよ?」


 【軽戦士】の職員、フリードは今回双子の装備を揃えるのに手を貸してくれた。

 確かに二人が自分で細かい要求を伝えて多数の買い物をするのは無理がある。

 これはカイトの失態であった。


 今回揃えた武器はほとんど鉄素材を用いたもので、ガルドの弟子の作品だ。お試し価格で揃えてくれた。

 鞭だけは鉄では作れないため、それなりに安いイノシシ型モンスターのドロップであるイノシシの皮で作られたものだ。


 「ん。」

 「分かった。」

 

 「それじゃそろそろ解散して明日に備えようか。」


 「そうね。それじゃまた明日。おやすみなさい。」


 「おやすみ。」

 「おやすみ。」


ー▼ー▼ー▼ー


 そして次の日のこと。

 前日はカイトはサポートだけの予定だったので【ものまね:アイテムボックス】で全ての装備を収納し、【職業体験:探索者】にして1時間経過してからスライムダンジョンに移動、そこで【職業体験:冒険者】に切り替えてダンジョン最奥まで移動したが、今回はルーティンを守るためにその手は使えない。

 【ものまね】と【職業体験】を出発1時間前に使用して【ダンジョンワープ】と【ダンジョンウォーク】を使用できるようにして、到着後すぐに戦闘用に切り替えられるようにしていたのだ。

 そのため、それなりに多数の武器を持ってノースアクアリムダンジョンまで移動する必要があった。


 カイトは背中に斧を担ぎ腰には短剣、左手には盾。

 フェリアは自分の杖と腰に鞭。

 ルナが背中に槍を担ぎ腰に剣を。

 レナは背中に弓を持ち、腰に銃を持って歩く。

 一応不自然にならないように振り分けた。それでも多いが。

 さすがにハンマーまでは持てなかったので今回はおいてきた。


 鞭も置いて行っても良かったのだが、リルムが杖を気に入ったように、フェリムが鞭を、アルムが銃を気に入った。

 精霊の考えはよく分からないが、気に入った武器であれば【精霊撃】が放てるようで、精霊が拗ねそうだというのとは別に、フェリアの練習希望が出たのだ。

 鞭の【精霊撃】は多少の誘導とダメージ増加、衝撃波による範囲増大効果が見られた。

 銃の【精霊撃】は単純な威力増加と、発射後に分散するショットガンのような効果を出せるようだ。


 フェリアの万能化が進む。


 そんなこんなで、武器の持ち運びに苦労しながらもスライムダンジョンに辿り着いた。

 それなりにレベルの上がった双子であれば、もう少し役割を持たせられるだろうと言うことで、カイトが斧と剣と短剣を、フェリアが杖と鞭を、ルナとレナが弓と槍を交互に使うことに決めた。足りない3種類はフェリアの【精霊弾】と、双子の銃による属性弾で対応する。

 【精霊撃】は武器種が変わっても【精霊弾】と同様の攻撃と判定されるようで、【精霊弾】を使用したあとの【精霊撃】ではどの武器種でもレベルが上がることはなかった。


 そして4人はボスのいる10階層へと向かう。

 ゴールドスライムとシルバースライムの【マジックバースト】で即死することさえなければ、安全に戦えるはずだ。


 結局マジックスライムはいつも通り、カイトのタンク役と残り3人の遠距離攻撃の前に沈んだ。

 その後の9階層周回も無事15分で終え、スライムダンジョン最速周回をこなすことが出来るのだった。


 そして運良く出現したシルバースライム2匹。

 1匹目でカイトとフェリアはレベル10から12に上昇。そしてルナとレナは一気に27まで跳ね上がった。

 経験値増加効果とはかくもとんでもないものなのかと言葉を失ったほどだ。

 双子の二人はレベル20を超え、【アイテムボックス】を習得した。【アイテムボックス】は100種類のアイテムを、重量に関係なく、同じ名前のアイテムであれば個数も関係なく収納できるスキルで、具現化したドロップも収納できるため重宝されている。

 まぁドロップアイテムは具現化しなければいいので必須でもないが、カイトたちほど武器を用意してる場合にはありがたい。


 そして2匹目のシルバースライムでカイトとフェリアはレベル13に、双子は【雑用士】をマスターし転職準備状態になった。

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