可愛くて腕力の強い角の生えた女の子の住む異世界に行きます
@umibe
第1話腕力の強い女の子
学校が終わって家に帰ると、僕はいつものように自分の部屋へ向かった。ドアノブを回して扉を開けると変わり映えのしない、いつもの僕の部屋がそこにあった。僕は鞄を床に放り投げて、ベッドへ横になった。暫くスマートフォンを弄った僕は、大の字になって天井を見つめた。
「暇だなぁ・・・。可愛い女の子とお喋りしたいぞ」と僕は独り言を言う。何か、面白いことないかなぁ。
「可愛い女の子とお喋りしたいの?」と可愛いらしい女の子の声が聞こえた。
「そりゃあしたいよ、僕だって男だもの」と僕は当然のように返答したが、すぐにこの会話が変であることに気づいた。今この家に居るのは僕だけのはずだ。僕には妹がいるが、妹はまだ家には帰ってきていないし、そもそも僕の部屋にやっては来ない。最近は嫌われているからな。それに妹には失礼だがこんなに可愛らしい声ではない。母親だってそうだ。
僕はびっくりしてベッドから起き上がった。部屋を見回すと、僕が床に放り投げた鞄を踏んづけて一人の女の子が立っていた。その子は着物姿で、何故か頭に桃色の角を付けていた。
「君、どこから来たの?」と僕は心底からその子に訊いた。
「隣の世界」と彼女は隣の家ぐらいの軽い感じで言った。
「君、今、隣の世界って言ったの? 隣の家とか、隣の街じゃなくて」
「ええ、そうよ。私は隣の世界って言ったの」
頭がおかしいのではないか、この子は。隣の世界って、パラレルワールドとか、異世界ってことだよな。
「どうして君はここにやって来たの?」と僕は言った。
「あなたにお願いがあって来たの」と女の子は言う。
「お願いって、草むしりとか、庭掃除とかだと嬉しいんだけど。僕にできるのはそれぐらいだからさ」
「そんなお願いだったらわざわざこの世界にやって来ないわよ。さあ、行くわよ」と言って彼女は僕の手を取って引っ張った。
「痛い痛い! 分かった行くから引っ張らないで」と僕は彼女の力にびっくりして言った。彼女は見た目よりずっと力が強い。
「素直ね。聞き分けが良くて助かるわ。あなたには私の世界を救ってもらうんだから」と彼女は言った。
「無理だよそんなの。僕は世界を救ったことはあるけど、それはゲームの世界なんだ」
それにこの子凄く可愛いけど、言っていることがおかしい。何とか理由を付けて、帰ってもらおう。
「あなたやっぱり行かないって言いそうな顔してるから、きちんと説明するわ」
「それを最初にしてくださいよ。腕を引っ張る前にさ」
「遠い昔に、あなたのご先祖様が私たちの世界を救ってくれたの」
「遠い昔って、どれくらい昔なの?」
「さあ、そんなの分からないわよ。とにかく遠い昔なのよ」
適当すぎるだろ。
「どうしてそんな遠い昔の英雄の子孫が、僕だってわかるのさ」と僕は胡散臭いものを見る目で女の子に言った。
「あぁもう、じれったいわね」と言って女の子は着物の懐に手を入れて水晶玉を取り出した。
水晶玉の中には一本の矢印が入っていて、その矢印は真っすぐに僕を指していた。
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