第37話 気ままな生活を目指して
魔法の訓練を開始してしばらく経った。
幸いなことに、新たな問題が発生することもなく順調に訓練できていると思う。
ちなみに、同じように研究し始めた空間魔法については、何の成果も出ていない。
前世の知識があれば余裕だろうと楽観的に考えていたのだけれど、そう簡単な話ではなかったみたいだ。
少なくとも今の私がイメージする空間魔法では、魔力不足になってしまって魔法を発動させることすらできていない。
何気に魔法を不発させるのが初めてだったので、何も起きずに魔力だけが霧散していくというのは地味にショックだった。
まあ、訓練のときに不発時の現象を体験できたこと自体は良かったのかもしれないけれど。
こちらの研究に関しては、一度に練り上げる魔力量を増やすことでどうにかできないかと考えている。
もちろん、屋敷の研究資料を読み込んで空間魔法に関する知識を増やすことも並行してやっていくつもりではあるけれど。
魔法以外の生活についても、比較的順調だと思う。
不安があるとすれば、新しく育て始めた薬草がちゃんと育ってくれるかどうかだろうか?
異常成長していた薬草の在庫が切れそうなので新しく育て始めたのだけれど、一から育てるのは初めてなので少し不安ではある。
まあ、野菜畑の方で野菜が順調に収穫できていることを考えれば、問題ない気はするけれど。
これに関しては、どちらかというと薬草の買い取り価格が下がるであろうことの方が問題かもしれない。
おそらく今の割増の価格が通常の価格に戻ってしまうだろうから。
後は、箱罠を使った狩りについても順調だ。
罠の数を増やして屋敷の左右の森を順に使うようにしたり、罠の位置を変えたりすることで、今のところ空振りに終わることなく狩りができている。
今まで狩りをする人がいなかったからこそのボーナスタイムのようなものだとは思うけれど、森の広さや狩りの頻度から考えて、私1人であればお肉の心配をする必要がないのではないだろうか。
次に町に行ったときには、小麦についても育てられるように手配するつもりだし、それが成功すれば食に関する心配は大きく減るはずだ。
まあ、塩などの調味料なんかは町に買いに行くしかないけれど、それでも調味料だけであれば町に買い出しに行く頻度は一気に落ちると思う。
着るものに関しても、季節ごとに買いだしに出かければ大丈夫だろうし。
屋敷の前住人が女の人だったら、屋敷に残っていたものでどうにかするというのも可能だったかもしれないけれどね。
まあ、さすがに男性物の服でどうにかしようとまでは思わない。
侯爵家だけあって、残されていた衣類は質の良いものが多かったのだけれど。
「こう考えると、屋敷にひきこもってひっそりと気ままに生活する未来がようやく現実的になってきたのかな?」
食に関しては目途が立ったし、生活に必要そうなものは一通りそろえたと思う。
金策に関しても、薬草畑の魔道具が壊れない限りは問題なさそうだし、そもそも異常成長した薬草のおかげで、既にある程度の蓄えはできている。
将来のことを考えると、お金はあればあるだけ安心できるけれど、そこまで切羽詰まった状況でもないので気長に増やしていけばいいと思う。
まあ、このまま行くとその将来が引きこもりか冒険者の2択になりそうなのがアレだけれど。
「これで、魔の森の異変が問題なく収まってくれれば一番いいんだけどね」
遠い将来のことから思考を切り替えて、近い将来のことについて考える。
魔の森の異変については、前回の買い出しのときには特に情報が入っていなかった。
ただ、ギルドのティナさんの反応を見る限り、あまり良い状況ではなさそうだったのが心配だ。
「まあ、心配したところで私にできることはないんだけどね」
そう口に出してみるものの、一度生まれた不安感を完全に無視することは難しい。
本当に何事もなく異変が収まってくれると良いのだけれど。
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