第9話 新生活の始まり
オニキスとの人間1人、馬1頭の新しい生活が始まった。
冷たい水で顔を洗い、寝ぼけた頭を目覚めさせてからオニキスのもとへと向かう。
時刻は日が昇り始めた早朝。
習慣とは恐ろしいもので、遠出から帰ってきた翌日だというのにいつもの時間に目が覚めてしまった。
まあ、前世の記憶からして、怠けだしたら坂を転がるように堕落していきそうだからいいんだけどね。
「おはよう、オニキス」
そう声をかけながらオニキスのいる厩舎へと入る。
かつての屋敷の主が馬を飼っていたのか、この屋敷にも立派な厩舎があったのは助かった。
まあ、その存在を知っていたからこそ馬を手に入れようと考えたわけだけれど。
ゆっくりと近づく私に気づいてオニキスが顔を見せる。
うん、突然の引っ越しになったはずだけど、特に調子を悪くしているようには見えないね。
「ちょっと待っててね、ご飯持ってくるから」
オニキスの身体をひとなでしてから、倉庫へと昨日買ってきた飼い葉を取りに行く。
身体強化をかけて山盛りにした桶を持って戻り、水魔法で水を新しくしてからオニキスがしっかりと食べているのを観察する。
「うんうん、良い食べっぷりだね」
わかったように頷きながら、今後のことを考える。
飼い葉を持ってくるのも水を用意するのも魔法があるのでそこまで苦にはならない。
ただ、これからのことを考えるとオニキスにもっと自由に動いてもらった方が良いのかもしれない。
きちんと考えたつもりだったけれど、実際には必要となるお世話のことなど、色々と知らないことが多い気がする。
頭になかったせいで必要なお世話のことも貸馬屋で聞くことができていない。
一応、お母様からの教育のおかげで簡単なお世話の仕方は知っているけれど、専門にしている人たちとは差がある気がする。
あの教育だって、冒険中に必要になった馬のお世話をするためのものだったので家で馬を飼う場合については考えられていないはずだ。
……いや、基本は同じだろうから大丈夫か?
うん、やっぱり不安だから今度町に行ったときに確認しよう。
とりあえず、それまでは昔教わった方法でお世話するしかない。
たぶん、1週間もかからないうちに屋敷でも何か足りない物とかが新しく見つかるだろうし、さすがにそれくらいの期間なら大丈夫なはずだ。
「じゃあ、私も朝ご飯を食べに戻るね」
オニキスが半分ほど食べ終えたタイミングで、そう声をかけて屋敷へと戻る。
新しい生活はまだ始まったばかりだ。
不安も大きいけれど、これからの生活に対する期待もそれなりにある。
オニキスと2人でのんびりと快適な生活にできるようにしていこう。
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