守り抜きたい、おっとり幼馴染退魔巫女が自分の身体に高飛車バニーガール妖魔を封印してしまった。封印が解けるとキスして再封印しなければならないが妖魔が誘惑してくる……メッチャ手を出したい
郷間神社の見習い巫女と見習い禰宜 妖魔退治へ向かう
守り抜きたい、おっとり幼馴染退魔巫女が自分の身体に高飛車バニーガール妖魔を封印してしまった。封印が解けるとキスして再封印しなければならないが妖魔が誘惑してくる……メッチャ手を出したい
葉山 宗次郎
第一話 剣司と舞 妖魔兎姫と遭遇する
郷間神社の見習い巫女と見習い禰宜 妖魔退治へ向かう
関東地方某所の山深い場所。
新緑が美しく、晴れ渡っているが、何処かどんよりとした雰囲気が流れる不気味な所に十代後半の少年と少女が歩いて行く。
少年は黒男の短髪で背が高く、少し険があるが整った顔をしている。
少女は顔は端正だが垂れ目で、おっとりしているように見えるが、艶やかな長い黒髪をポニーテールで纏め、少しでも凜々しくしようとしていた。
「あっ」
少女が躓いたが、すぐに少年が手を差し伸べ、支える。
顔を上げて少女は少年に感謝するが、すぐに手が触れている事に気がつき、顔を真っ赤にしてすぐに手を放した。
少年も不味いと思ってすぐに手を放す。
「大丈夫?」
顔を背けながら恥ずかしそうに少年は尋ねる。
「うん、お役目を果たさないと」
少年の声に恥ずかしがっていた少女が頷く。
普通なら仲の良いカップルに見えるが、二人とも純白の小袖を纏い、それぞれ朝葱色と緋色の袴、神社の巫女と禰宜の服装を着ており、普通ではなかった。
しかも巫女の少女は鈴の付いた榊を持っていたが、少年は腰に刀を下げている。
何より二人の間には独特な緊張感が漂っていた。
「悪い妖魔なのだから早く退治しないと」
「そうだね」
少女の言葉に少年は同意した
二人の名前は新田剣司と郷間舞。
郷間神社の見習い禰宜と見習い巫女である。
表向き郷間神社は普通の神社だが、裏では人知れず妖魔を退治するお役目を担っている。
「今回の妖怪は特に危険な妖魔みたいだし早く退治しないと」
巫女の少女、舞は大きな瞳を輝かせ意気込んだ。
この世には妖怪という通常の生物とは違う存在がいる。
妖怪は科学では解明されていない存在で、生き物が纏う精気を吸って生きている。
普通は生物や人間から少しずつ精気を貰っている。
だが、中には人間が失神あるいは死をもたらすほどの精気を吸い込んだり、あるいは人間に危害を加える存在がいる。
それらを妖魔あるいは魔物と呼び、人々に昔から恐れられていた。
「今回は特に危険だけど大丈夫?」
剣司は舞に尋ねた。
人間に害を及ぼす妖魔を密かに退治するのが千年以上続く郷間神社の役目であり裏の顔であった。
その最前線で戦っているのが剣司と舞の二人だった。
だが、剣司は舞の身を案じて尋ねた。
「大丈夫」
剣司の言葉に舞は明るい声で答えた。
「剣司がいるから」
純真な舞の言葉に剣司は照れて顔を紅くすると視線を逸らし俯き答えた。
幼い頃両親を亡くし、郷間神社に引き取られた剣司を献身的に世話してくれたのは舞だった。
舞のおかげで辛い修行も乗り越え、剣司はいつしか郷間神社でも有数の実力者となれた。
その実力が認められ許嫁となったが、剣司にとっては許嫁、幼馴染以上に大切な存在であった。
「妖魔は強いそうだけど、必ず守るよ」
剣司は舞に強く言った。
今回の妖魔は登山客を何人も失神させた上、既に討伐に向かった郷間神社の手練れ二組を撃退した凶悪な妖魔だった。
剣司と舞の二人は十代後半と若いが既に多くの妖魔を討伐した実績と実力を持っているが、油断は出来なかった。
「うん、よろしくね剣司」
だが舞は剣司の言葉を疑いなく信じ、喜び頷く。
そして二人は山の奥へ向かっていった。
「あそこよ」
暫くして舞が妖魔の居場所を探知した。
舞の指さす方向へ向かうと洞穴の中から、闇より濃い、黒い霧が溢れていた。
「あれが妖魔?」
「うん」
剣司の問いかけに舞は神妙な面持ちで答える。
いつもおっとりしている舞が真剣に言うなど滅多にない。
よほど強い妖魔のようだ。
「破魔の祝詞をあげるから、守って」
「分かっている」
精気の量が多く制御が得意な舞が妖魔を滅する術式を唱えている間、剣司は得意な刀で妖魔の攻撃から舞を守るのが役目だ。
舞は手にした鈴の付いた榊を振り、祝詞を唱え始める。
すると、黒い霧の妖魔の周囲に術式が現れ、封印し消滅させようとする。
「……何やつじゃ」
封印しようとする舞に気が付いた妖魔は、くぐもった声で二人に問いかけた。
だが術式の意味に気が付いた妖魔は、怒りを露わにする。
「妾を封じようとは……身の程知らずめ……後悔させてくれようぞ」
妖魔は黒い霧を槍のように伸ばして舞を攻撃しようとする。
「させないっ!」
だが剣司は愛刀である薄碧を鞘から抜いて伸びてきた妖魔の霧を切り払う。
「魔斬精閃!」
精気を練り上げ刀に送り込み、妖魔の邪気、邪な精気を断ち切る郷間神社に伝わるワザ。
剣司は鍛錬で会得したワザを、愛刀に自分の精気を送り込み鋭い刃にすると霧に叩き付け切り裂いた。
「こしゃくな」
斬り払われた黒い霧は何本もの霧を伸ばしてくる。
だが、剣司は刀を一度鞘に収め叫んだ。
「円軌連斬」
鞘から刀を抜き払い、精気を込め円を描くように振る。刀に込められた精気は刀身から放たれ、向かってきた妖魔の霧数本をまとめて切り払った。
「ほほう、少しはやるようじゃのう」
妖魔は呻くと、伸ばした霧を引っ込める。
抵抗をやめたか、と剣司は思ったが違った。
「ならば、これはどうじゃ」
突如、霧の中心から白い光線を放ってきた。
「うおっ」
剣司は慌てて刀を構え伸びてきた光線を切り払った。
養父である浄明の稽古がなければ、対応できなかった。
「ほほう、やるのう。ではこれはどうじゃ」
妖魔は更に多くの光線を放ってくる。
「ぐおおおっっ! はっ!」
向かってくる光線を全て剣司は切り払い退けた。
「凄いのう」
妖魔は剣司が自分の攻撃を防ぐ様を見て驚いた。
「人間でここまで出来る者は、そうそうおらぬぞ」
自分の光線を防ぐ事は勿論、的確に刀身を当ててくることに黒い妖魔は驚いていた。
「普段の鍛錬の成果だ」
日々、養父、舞の実父から剣の稽古を受けている。
剣の修行は厳しく、めきめきと剣司は腕を上げた。
特に舞と不用意に接触した後の修行は厳しく鬼神のごとき殺意が込められた太刀筋が容赦なく浴びせられ、剣司は幾度も死線を彷徨った。
そのため剣司は向けられてくる害意を的確に読み取り、そこへ刀身を向けて光線を防いでいたのだ。
「では、これはどうじゃ」
霧の中に大きな光球が現れた。
邪気、妖魔が生み出す邪な精気。
その邪な精気を周囲に雷を放つ程、高密度にした塊で作られた球だった。
「げっ」
あまりに強い力を持つ光球に剣司も驚愕する。
人をまるごと包み込みそうな程大きくした光球を妖魔は剣司に向かって放った。
「ぐっ」
剣司は舞を守るため前に出て光球を刀で止めた。
切り払おうとしたが、光球の圧力の前に押し止めるだけで精一杯だった。
必死に押しとどめようとするが、突如光球が爆発した。
「うわああっっ」
爆発を避けきれず剣司は吹き飛ばされた。
「剣司!」
地面に倒れ込む剣司を見て舞は悲鳴を上げる。
「ほほほっ、小童の身でありながらここまで戦うとはあっぱれな奴よ。ひとおもいに殺してやろう」
黒い霧の妖魔は新たな光球を生み出し、剣司に向かって放とうとした。
「させない!」
舞が叫ぶと、身体から光が溢れた。
それまで着ていた巫女服は光の粒となり、新たな形となって集まってく。
銀縁の白いメッシュで作られた千早の下に見えるのは胸の谷間が大きく見えるほど開いた緋色のインナーに胸より上の無い小袖。
白いニーソと紅いブーツに包まれる脚が伸びる緋色の袴は非常に短く、揺れてインナーのクロッチが見え隠れする。
郷間神社に仕える退魔巫女の装束。
特に舞は郷間神社の歴史の中でも百年に一人の逸材とされ、簡単に変身できる。
「剣司から離れなさい」
可憐な姿になった舞は厳しい口調で言い放つと、白いグローブに包まれた両手に精気を集め物質化していく。
左手の光は弓となり、右手の光は矢となって物質化すると舞はそれを番えて妖魔に向かって放った。
野は高速で飛び妖魔に突き刺さった。。
「ぐおおおっ」
矢は妖魔の中に深々と入り込むと、爆ぜて妖魔を吹き飛ばした。
「すごい」
地面に倒れていた剣司は舞が変身したとき放った治癒の術式で回復し、起き上がり妖魔の方を向いていた。
舞の矢の威力は激しく土煙が上がり妖魔の姿が見えない。
「やったか」
剣司が呟くと、土煙から妖魔の黒い霧が伸びてきて舞を捕らえた。
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