【2段階 - 7,8】密室におじさんと2人きり。何も起きないはずがなく……(ある意味特別教習?)

 この日は2時限連続のセット教習と呼ばれるヤツだった。片方は唯一の学科だが、やるのはシミュレーターである。


 危険予測ディスカッションということで、公道で走る時の危険な点を教習生同士で話し合いながら理解を深める……らしい。当方、陰キャなコミュ障だが、指定されたお題があれば話せるコミュ障なので、入れ墨だらけのヤンキーじゃなければ問題は無い。陰キャなら聞くだけで頭が痛くなるワード「はい2人組作ってね〜」と言われる訳でも無いし。


 シミュレーター教習は予約が取りづらく、平日の朝一番しか空いてなかった。当日、重たいまぶたを擦りながらロビーで待機する。

 そして、担当の教官に呼ばれて教習原簿を渡すと早速――


「よし、じゃあ移動しようか」


 あれ、他の教習生はいないの……?

 …………いないらしい。


 えぇ〜今日は教習当日ですけども、参加者(他の教習生)は〜誰一人来ませんでしたぁ〜。※懐かしのネタです



 教室に向かう道中「今日はみっちりマンツーマンでいくよ」と笑いながら教官に言われたので苦笑いで返した。クソぼっち陰キャオタクの名に相応しい、1人教習の始まりである。



 ◆



「運転で心配な所ある?」

「うーん……。前ブレーキを強く握り過ぎるとかですかねぇ」

「オッケー。じゃあ機械これ使って見てみようか」


 私だけなので時間が余るからなのか、細かな運転のコツをシミュレーターを使いながら教えてもらったりした。今までの教習では課題に取り組むだけで精一杯だったので、こうして不安な所をカバーできるのは非常にありがたい。中々に贅沢な時間だったと思う。


 本題の危険予測では昼間と夜の運転を行った後、走ったリプレイを観ながら注意すべきポイントを振り返った。

 本来ならここで教習生同士でディスカッションするはずだが、今の私は「ペアいない人は先生と組みましょうね〜」の状態なので、教官と話し合う……というより私が一方的に意見を出し続けるコミュ障陰キャには地獄にも思える展開となった。


 とはいえ、陽気な教官だったので気は楽だったし、他の教習生が居たら私の恥ずかしい走行シーンを公開処刑のように晒される事態になったので、ぼっちで正解だったのだろう。



 まるで私を殺しにかかるかのように事故を誘発してくるシミュレーション世界の街は、某人気ゲームのなんとかセフトオートよりも過酷かもしれない。もちろん現実はそこまで殺伐としてないが、元ネタは現実である事を忘れずに公道を走りたいと思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る