👍ex そして、彼らは取り逃がし「あのクソ上司」と怒り叫ぶ
ある日の休日の昼。直文と依乃、八一と奈央はあるチェーン店のカフェで勉強をしている。休んでいた奈央の復習も兼ねており、依乃は予習をしている。
直文と八一は勉強を教えていた。イケメン美男性がいるとやはり目立つ。目線の集中砲火に二人の少女は巻き込まれて緊張する。
ご飯と飲み物が運ばれてくると、区切りをつけて休憩。二人は運ばれてくるご飯を食べていくが、依乃は友人の首にかかっているものを見た。同じ勾玉のネックレス。奈央から外す方法を尋ねられた機会もあるが、彼女自身も知らない。
一息ついている今なら聞けると依乃は直文を呼ぶ。
「……直文さん」
「どうしたんだい。依乃」
優しく聞いてくる直文だが、これが地獄の始まりだとは知らない。
「この勾玉を外す条件とはなんですか?」
この質問に、
ちなみに本命童貞とは。本気で好きな本命の相手に対し、どう振舞っていいかわからなくなる。態度や対応がまるで童貞のようにぎこちなくなってしまうこと。
彼らは性経験は豊富ではあるが、本命にはどう対応すればいいのか手探り中。
直文は依乃の接し方に対し、先輩や同僚などに相談をよくしている(相談して返ってくる答はだいたい『そのままの君でいて』)。
八一はいじめたり甘やかしていたりして、手慣れているように見えて実は必死である(奈央のチョロさ故に、目移りされるのが嫌だからからかっている。外堀も埋めている。実は必死である)。
後々、該当する野郎共が現れるがそれは追々。友人の質問に奈央も声を上げる。
「あっ、それ、私も気になる! 八一さんったら聞いても教えてくれないんだもん!」
「あははっ、だから、なおじょーさんが成人したら教えてやるって言ってるだろー?」
八一はにこやかに笑うが、内心は滅茶苦茶動揺していた。直文も表情が出ずに無表情。しかし、
あのクソ上司と怒りつつも、二人はこの場をどうかわそうか考えている。
勾玉のネックレス。魂からリンクして力を与えたり、分け与えたりとかなり便利。しかし、デメリットは条件を満たさないと一生外れない。外れないというが、相性が悪いとネックレスは普通のネックレス、良ければ外れなくなる。つまり、相性が良ければ外れないのだ。なんだこれ。
狐は
【……やっぱり、あのクソ上司……粒子分解するまで殺ればよかったか……!?】
【落ち着け。八一。やったことあるが、あの人。そこまでしても死ななかったぞ】
【あるのかよ。直文。けど、そこまでして死なないって……】
【あの人の役職上、簡単に殺すことはできないからな……】
普通の人にはわからぬ方法で直文と八一は話す。話は物騒だが、上司に関して苦労している。いい上司ではあるがクソ上司である。直文はコーヒーを一口のみ、八一に話す。
【どうする、八一。流石に外す方法について話すのがまだ早い】
【外す方法があまりにもあれすぎるから、今は別の話題で誤魔化そうか】
意見は一致した。話題をそらそうと、八一は話しかける。
「そういえば、奈央。夏祭りの踊りは参加するのか? 前みたいに踊るんだったら、私も付き合うけど」
「陸上部の大会と練習があるから無理なんだ。あっ、でも、お祭りには行くよ!」
高校入学後、部活の練習が多くある。また多くの勉強をしなくて追いつかない学校である。部活の疲れもあり、奈央は悲鳴を上げながら勉強をしている。
八一はそうかと微笑むが、依乃が困ったように二人に声をかける。
「あの、明らかに話題を話題をそらさないでください。これを外す方法……教えていただけると本当に嬉しいです。慣れればいいんですけど、着替えるときとか人の目に付きやすいというか……」
確かに勾玉のアクセサリーをするのは目立つ。明らかな話題逸らしは効かないらしく、直文は
「日常生活に支障をきたしてないなら、大丈夫だけど……外す条件は追々わかるっていうか……。君達はつけていたほうがいいのは本当」
目を泳がせて真っ赤な顔で困る彼に、依乃はじっと見つめる。彼が言えないほどのものなのか。依乃が考えているうちに、ある可能性に行き着き
「もしかして……キス……をしないと外れない……とか……?」
花火の少女が純でよかったが、直文は照れだす。
「えっ、ええっと……まあ……その……ね」
困る彼を見て、八一は助け船を出す。
「──実はこれ。真実の愛を証明しないと外れないんだ」
表面は
直文は八一の助け舟に驚き、普通の人にはわからぬように話す。
【八一。お前それ………】
【嘘でもないし真実でもない。この場違いな場所で本当の条件を言ったらとんでもないし。その条件すらもとんでもないだろ!】
間違いない正論に直文は複雑そうな顔をする。八一は厄介そうに頭をかき、ネックレスを見た。
「要は、強制相思相愛装置のようなものだ。私も直文も外すように頼んだけど、制作したあの人すらも外れない不良品だよ」
「……八一さん。何度も話を聞いても、二人の上司がとんでもない人だっていうのがわかるよ」
奈央に依乃は何度も頷く。
半妖の彼らには外そうとすると、バラエティのように電流が流れる仕様。愉快に聞こえて、ドチャクソとんでもない代物である。依乃はネックレスを見て、恥ずかしそうに肩をすくめる。
「けど、真実の愛の証明って……聞くと照れますね……」
照れた依乃の言葉を聞いて、直文も口を押さえる。照れた彼女から聞く言葉の衝撃が大きかったらしい。
告白、お付き合い、デート。プロポーズ、結婚。ハネムーン。etc.etc.
「おや、なおくん。何を想像したのかなぁ?」
「……聞くなよ」
照れている直文とニマニマしている八一の後ろを通る男性がいた。帽子とサングラスをしており、イケオジがするような紳士な姿をしている。また、手にはテイクアウトの飲み物。もりもりと多くのカスタムしたものをストローで吸う。
その相手は足を止めて、八一と直文に声をかけた。
「真実の愛の証明、待ってるぞ。その時は必ず式場に呼んでくれ☆ 直文、八一♪」
サムズアップされ、ヘリウムの軽さで言われる。だが、直文と八一にとっては
男性は何事もなかったかのように、ダッシュして店を出る。流れるように、二人は席を離れて男性の後を追った。外からは「この、クソ上司ぃぃぃぃ!」と重なるように二人の怒り声が響いて聞こえ、上司に対する
まさかの組織の上司さんの登場に、残った少女達はしばらく呆然としていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます