10 ep 平成 穏健派の失敗作
薄暗い白い雲が
雨が降りだしそうだが、雨雲ではない。奈央がいなくなって三日目。流石の奈央の両親も昨日に捜索願いを出していた。依乃も放課後は必死で
放課後、
「まず、田中奈央ちゃんは時駆け狐に拐われたとみていい。そして、仮面の男に関しては興味深い情報が手に入ったよ。仮面の男は陰陽師の
依乃はきょとんとして、直文は
「人の胎児か……」
「上手いとこついてきたけど惜しいよねって思う」
茂吉は同意するが、依乃は話がついていけない。
「あの、ついていけません。どう言うことですか?」
二人に思わず聞いた。混乱している少女は『
他者の器に魂を入れる術。魂は生者死者の関係ない。何もない器に、魂を入れて生き物と生かすといっていい。見方によれば、死者の蘇生。体の乗っ取り。地獄にいる者の魂すらも
「依乃。通りゃんせの歌詞は覚えているかい?」
「あっ、はい!」
通りゃんせ。
【通りゃんせ 通りゃんせ
ここはどこの
天神さまの
ちっと通して 下しゃんせ
御用のないもの 通しゃせぬ
この子の七つの お祝いに
お札を納めに まいります
行きはよいよい 帰りはこわい
こわいながらも
通りゃんせ 通りゃんせ】
独特ながらも耳と体に馴染む。茂吉と直文は拍手をする。彼女は気付いて、顔を赤くした。直文は依乃を誉める。
「上手だね。心地よい
くさいセリフに、依乃は目を丸くして顔を赤くした。直文の
「これ以上は話が進まなくなるから、俺に進行させて」
モゴモゴと直文は
「ええっと、では、何で通りゃんせを?」
「七つのお祝いにって言う部分に注目。はなびちゃん。七つまでは神の子って聞いたことあるでしょう?」
少女が頷く。
昔は子供は七つまで生きられなかったとことが多い。また神が七つまで人を生きられるように守る。七歳以降は安定するため人に返すと言う。また七は
茂吉は説明を続ける。
「七つまでは天の気。陽という人の持つ明るい力が強く出るから神様は好むのさ。それが、胎児となるともっと強くなる。生命の
でも、
だから、
茂吉の言った意味を理解した。
「……はずだったんだけど、イレギュラーが起きたんだ」
「……イレギュラー?」
茂吉は彼女に頷き、面倒さそうに天を仰ぐ。
「地獄でも前例はあるだ。強い力の妖怪が人に転生する際、何かの拍子に前世を思い出す事が。その場合、人より陰の気が強く前世を思い出し易く、妖怪にも戻れる。それが、陰陽師側で起きた。最初は成功かと思ったら
直文は駄菓子を食べ終えて、駄菓子のパッケージの袋をくしゃっとつかむ。
「なるほど、妖怪の前世返り。相手は狐の妖怪か」
相方の指摘に茂吉は「ビンゴ」と笑った。
🦊 🦊 🦊
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