誰ヵ江之手紙
あの日の君へ
もうあの日から随分と時が経った。過ぎ行く時間は早いのに、過去には追い付けない。あの日に別れてから、未来に行くのはだいぶ早かった。
けど、あんな手紙を寄越すなんてズルいよ。渡された時は驚いたし、読んだときは涙の大洪水だったんだから。……君の手紙に書いてあることが本当なら俺は嬉しいよ。
もし許してくれるならば、未来の君を守らせてほしい。俺が君に降りかかる凶を払う。君が幸せになるように導く。だから、どうか影から守らせてくれないだろうか。
未来の君を俺が好きになるかどうかはわからない。
未来の君が俺を好きになるかどうかはわからない。
ああ……でも、君が君の思うまま幸せになってくれるなら……あのときの花火のような笑顔を浮かべてくれるなら、俺は大丈夫。それが、俺じゃない誰かに向けられても平気だ。
君が幸せに生きている。それだけで俺は日陰者であっても生きていける。あの花火のような眩しい笑顔を浮かべていてほしい。
……こうは書いたものの、あの人が余計なことをしたから俺が君の隣にいる選択肢も生まれてしまった。俺にとっては複雑だけど……今の君は許してくれるかな。俺は今の君を好きになっても、君と幸せになっても君は許してくれるかい?
──この手紙はあの君に届かない。
ならば、俺は今の君が幸せになるまで守り続ける誓いとして、この手紙を取っておこう。俺から見て幸せになれたと思えたら、この手紙を処分しよう。隣にいるのが俺でなくても、俺であっても……君が幸せであるなら──
あの日の君へ。今の君へ。どうか、その時が幸せでありますように。
俺も
久田直文より
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