第八話 デート?
「ああ、何とか冒険者になることが出来たよ」
「それはよかったね。私は一回不合格にされちゃったからね。まあ、その分頑張って次に来たときは試験官に称賛されるくらいには強くなったのよね」
不合格にされてもめげずに頑張るのは凄いと思った。俺なら場合によってはあきらめてしまうだろう。
「あ、そう言えば今日はなんかギルドでトラブルがあったみたいで受付に並べなかったのよね…だから夕飯を食べ終わったらもう一度行くつもりなんだけどユートも行く?」
トラブルと言うと心当たりしかない。それで困る人が出たのは申し訳ないと思った……
「いや、まあ…俺は依頼完了の報告に行くことは出来たから…」
俺は視線を横にそむけながら答えた。
「そうなんだ…私ももう少し早く行くことが出来れば受付に並ぶことが出来たのかな…まあ、取りあえず何か頼まないの?私のオススメは日替わり定食ね」
ミリが少し暗くなった雰囲気を話題を変えることで消し飛ばした。
「俺もそれを頼もうかな。あ、すいませーん!」
すると、店員が即座に駆け付けた。〈身体強化〉を使った俺よりも速い速度で来た気がするが、気のせいだろうか……。
「日替わり定食を一つください」
「かしこまりました。では少々お待ちください」
そう言うと店員さんは厨房の方へ向かった。
「初めての依頼はどうだった?」
酒を飲み、ほろ酔い状態になっているミリが話しかけてきた。
「レッドゴブリンと
「え?
冒険者は普通Gランクから始まる為、初めての依頼でEランク冒険者以上の依頼を受けるといったことはまず無いのである。
「いや、まあ試験を受けたらEランクにするって言われた」
「あなたはかなり強いのね…私はGランクからEランクになるのには三ヶ月、EランクからDランクになるには半年、DランクからCランクになるには二年かかったのよね…Bランクになるにはあと何年かかることやら…」
ミリは「はぁ」とため息をついた。
「ミリならBランクも直ぐになれると思うよ」
「そう言ってくれると嬉しいわ。まあ、この感じだといずれあなたに抜かされると思うわ」
「そうか?まあ、抜かせるように頑張るか」
と、子供っぽい笑みを浮かべながら言った。
「ふふっ私は先輩だし直ぐに抜かされるなんてこは絶対させないわ」
そんな感じで雑談をしていると、食事が運ばれてきた。
「こちらが日替わり定食になります」
日替わり定食は米、野菜スープ、オークのステーキと店員が説明した。
(この世界にご飯ってあったんだ……)
米と言う主食がこの世界にもあるというのは俺からしたらかなり嬉しい。
俺は早速ご飯をオークのステーキと一緒に食べた。
「あ~やっぱり肉はご飯と一緒に食べるに限るな~」
ご飯の味は前の世界でいつも食べているものと全くと言っていいほど食感も味も同じだった。オークのステーキは豚肉に近い味がした。ただ、豚肉よりも噛み応えがあった。スープは中にいろいろな葉が入っているものだ。葉の種類はもちろん分からない。
ちなみにオークとは何かミリに聞いてみたら、人型の魔物だが、人よりもかなり大きく、豚の顔をしていると言われた。それだけ聞くとあまりおいしそうに見えない。人型と聞くとレッドゴブリンを思い出してしまうからだ。
「あー美味かった…」
俺は十五分ほどで日替わり定食を完食した。
「余程お腹がすいていたのね…凄い食べっぷりだったわ」
ミリはくすりと笑いながら言った。
「今日は色々あったからな…」
多分疲労の七割は冒険者ギルドで絡まれたことだと思う。
「私も初めての冒険者活動の時はは慣れないことばかりでかなり疲れたわ」
俺の言いたいこととは少しずれているが、まあ気にしないでおこう。
「そう言えばミリはもう夕飯食べ終わったのか?」
「ええ、もう食べ終わったわ。今は食後の酒で休憩中なの。あなたも飲む?」
「いや、遠慮しておこう」
この世界って酒の年齢制限はないのだろうか…まあ、なかったとしても俺はあまり酒の匂いが好きではないので大人になっても飲むつもりはない。
「それは残念。まあ、そろそろ私はギルドに行かなくちゃいけないからそろそろ出るわ」
「俺も食べ終わったし出るとしよう」
ちなみに日替わり定食は千セルだ。この値段でこの大きさと量ならお値段以上いてもいいだろう。
俺は千セルを支払うと、ミリとともに店を出た。
「男女二人で食事ってなんだかデートみたいね」
ミリは笑みを浮かべながら少しからかうように言った。
「か、からかうのはやめてくれ…」
俺は少し照れて、顔を横にそむけた。
「ふふっそれじゃあね」
ミリは手を振りながら冒険者ギルドの方へ歩いて行った。
「ふぁ~……眠くなってきた…そろそろ宿に戻ろうか…」
急に眠気が襲ってきた。今日は色々あったし早めに宿で眠るとしよう。
宿に戻った俺は部屋に入ると、着ていたローブと靴を脱ぐと俺はベットの上に寝転がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます