第三話 無双して強くなる俺

「今度は……そっちか」


 俺は声のする方向へ走っていた。こっちの方からグルルルルという声がしたのだ。間違いなこの声はやつ森狼のものだろう。

 そのまま三百メートルほど走ったところで五頭の森狼と遭遇した。


「よし、さっさと森狼フォレストウルフを倒して食事にするか」


 俺は〈身体強化〉を使った状態で素早く近づくと〈風刀エアカッター〉×五を撃った。


「グルゥ!?」


 森狼フォレストウルフは近づいてきた俺に気づいたが、行動に移す前に〈風刀エアカッター〉が命中し、首を落とされてしまった。前に戦った時よりもスムーズに倒すことが出来た。


「よし、食事にしよう」


 解体の仕方をバンさんに教えてもらったこともあり、前よりもうまく解体することが出来た。

 後は前のように火を起こして焼いた。


「あ~美味いんだけどずっと同じ肉だもんで流石に飽きるな…」


 今朝食べた森狼フォレストウルフの方がおいしかったので余計にそう思ってしまう。あと、肉ばかり食べているので食事バランスが偏っている。


「食べられる植物とかってあるのかな?」


 と、思ったが、俺は食べることのできる植物を俺は知らない。


「まあ、飲食店で食べればいいか」


 というかよく考えてみればもし食べることの出来る植物を手に入れても調理方法を知らないので生で食べる羽目になる。


「料理はまともにやったことがないからな~」


 前の世界での料理というとカップ麺が俺の作ったことのある料理の中で最高難易度にして最低難易度だ。学校の家庭科の授業の調理実習では失敗に失敗を重ねて結局やったのは皿洗いと片付けだけとなっていた。


「毎日外食をするためにも金は稼がないとな……」


 昨日売った素材の売却額的にこの世界で稼いでいくことは難しくなさそうだ。それに、ほかの人なら気にする老後の生活費も俺なら老いることがないので心配する必要はない。百年でも二百年でも働き続けることが出来る。

 そんな社畜みたいなことを考えながら作業していた為、


「あ、討伐証明部位をとるの忘れてた」


 危うく内臓と一緒に土に埋めるところだった。もしそんなことしたら手に入れられるはずだったお金が手に入らなくなる。そんなことを俺がしたら後で思い出した時にめちゃくちゃ後悔するはずだ。


「え~と……犬歯二本だったかな?」


 よく見ると森狼フォレストウルフの犬歯二本は他の歯と比べてニ倍くらいの長さがある。確かにこれなら証明になる。


(そういえば前に倒した森狼フォレストウルフってカウントしていいのかな?)


 〈アイテムボックス〉の中には森狼フォレストウルフの頭が六個ある。ここにある犬歯を出せば一万二千セルの儲けとなる。ただ、それをするのはちょっと気が引けた。


 俺は残った肉と四頭の死骸を〈アイテムボックス〉に入れておいた。


「なんだかんだ言ってこの調子なら生活に困るどころか金の使いどころが無くて困るくらいだな」


 俺は少しニヤニヤしてしまったが、直ぐに顔を元に戻して魔物を探し始めた。

 この時ニヤニヤしてしまったことにより今埋めた森狼フォレストウルフの体から魔石を取り忘れていたことを俺は知る由もなかった。





「〈火球ファイアボール〉、〈風刀エアカッター〉、〈風刀エアカッター〉、〈土弾ロックバレット〉!!」


 俺は〈身体強化〉を使って走り回りながら魔物のいる方向へ行き、見つけたら即座に魔法を撃って倒し、死骸は素早く〈アイテムボックス〉にしまうという動作を繰り返した。

 出てくる魔物はノーマルスライム、森狼フォレストウルフ、レッドゴブリンの三種類しか出てこない。どうやらこの世界に来て最初に出会ったキングスライムは結構珍しかったのだろう。ちなみにノーマルスライムというのは水色で直径五十センチメートルくらいの半透明の生き物だ。〈鑑定〉をしてみると、

 ー--------------

 名前 ノーマルスライム LV.2

 体力20/20

 魔力0

 攻撃10

 防護50

 俊敏性100

 弱点

 ・火属性

 世界で最も数の多い魔物。

 多くの魔物の餌として世界を支えている。

 ー--------------

 と出てきた。

 ステータスがかなり低く、恐らく木の棒で強めに刺したら死んでしまうくらいのステータスだ。ただ、俺が気になったのは、


「この説明ってノーマルスライムを無理やりフォローしているような感じがするんだよなあ」


 ただ、全然フォローできてないような気がする。もし俺がこんな分析されたらたとえ事実だったとしても凄い複雑な気分になる。

 ちなみにこいつは〈水球ウォーターボール〉以外の魔法で攻撃すれば一撃で倒せる。ただ、跡形も残らなかった。魔石がないように見える。と言うよりは、ノーマルスライムの体そのものが魔石のような感じがする。


「そう言えば結構魔物を倒したけどステータスってどうなったのかな?」


 俺はステータスを見た。

 ー--------------

 名前 ユート・アラキ 不老人族 LV21

 体力 3000/3000

 魔力 2400/6500

 攻撃 2800

 防護 2700

 俊敏性 3500

 スキル

 ・鑑定LV.MAX

 ・言語翻訳LV.MAX

 ・身体強化LV.7

 ・剣術LV.5

 ・アイテムボックスLV.MAX

 魔法

 ・火属性

 ・水属性

 ・風属性

 ・土属性

 ・光属性

 ー--------------


「かなり強くなったな」


 身体強化のLVが7になっていた。ただ、剣術のLVは5のままだったので、恐らくだがスキルのLVは使わないと上がらない。もしくは上がりにくいといったところだろう。

 ただ、俺としてはこの世界の平均を取りあえず知りたい。神様のおかげで世界最高クラスになっている為、俺が普通に出来ると思ったことが実は普通じゃなくて問題になりましたとかだとシャレにならない。

 今のところ分かっているのは一人が持つ魔法の属性はゼロ個から三個ということだけだ。


「適当な冒険者を〈鑑定〉してみればいいのかな?」


 ただ、ステータスと言うのは言わばこの世界で言うところの個人情報のようなものだろう。それを本人の許可なしに見るのはどうなのかと思った。


「まあ、悪用は絶対にしないし、少し覗くくらいならいいよね」


 うん。大丈夫だろう。と自分に言い聞かせた後、空を見上げてみた。

 日は多少傾いていた。傾き加減的に今は二時から三時の間くらいだろう。


「そろそろ帰りたいけど……」


 俺はやり忘れたことがある。

 俺は倒した魔物を片っ端から〈アイテムボックス〉に入れていたので討伐証明部位をとってあるのが最初の魔物しかいない。素材は多すぎるので素材解体所に出すのは気が引けるので、それなりの値で売れる魔石を売るつもりだが、この量の魔物から魔石をとるのは正直言ってかなりめんどくさい。ただ、今後の生活のためにはやらないといけない。


「あと一仕事頑張るか~」


 俺は気合を入れて、魔物の体から魔石を取り出す作業を始めた。魔物を〈風刀エアカッター〉で切り裂き、内臓を〈水球ウォーターボール〉で洗い流して魔石を取るという作業だ。俺はこれを一時間弱やり続けた。

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