第79話 後日談
〝友達〟として付き合い出して少し経ち、もうすぐ楽しい夏休み!といった頃、藍田のお母さんが突然上京してきた。
俺は優等生的に節度を守り、藍田のアパートの部屋の前まで送ってきて、少しの間別れを惜しんで帰ろうとした時、突然部屋の扉が開いてお母さんが中から出てきた。
藍田:「お母さん!どうしたの⁉︎来るって言ってたっけ?びっくりしたー!」
母:「びっくりしたのはこっちよ!あれ?この方は?彼氏?」
藍田:「と、友達!彼氏なんているワケないじゃん!」
母:「隠さなくてもいいじゃなーい。そんな否定したら彼氏傷つくよ?」
あれ?お母さん、意外とフランクなんですね。
こんな玄関先じゃなんだからと、近くのファミレスに場所を変えて改めてご挨拶する。
俺:「藍田さんの友人の本宮 大聖です。」
母:「本宮さん?なんか聞いたことある名前…じゃないわよねぇ。」
藍田:「えっと、小中学校の同級生の本宮くん。」
母:「えー!やっぱりそうなんだぁ。へー!すごいね。びっくり。」
俺:「オレのことはご存じなんですか?」
母:「そりゃあ、まあ知波の同級生だからね。何人か知ってる子は覚えてる。
でもなんで?東京で偶然?それとも学校関係?」
藍田は成人式の後の話からお母さんに説明する。
母:「そっかー、そうね、同窓会とかでもさ、その後付き合ったりするパターンよくあるもんね。
良かったね、知波。」
なんか、お母さんには歓迎されてるようですが、いいんでしょうか?
藍田:「そうなんだけど…。」
母:「お父さんのこと?」
藍田:「うん。絶対バレたらまずいよね?」
母:「マズくはないわよ!泣くと思うけど。
ずっと気にはしてるから。
“女子大って言ったって、出会いなんかそこら中にあるしな。いつ彼氏できたって言ってもおかしくないよな”って覚悟はしてるよ、多分。」
藍田:「え?そんな感じ?
絶対ダメだと思ってた!何で?いいの?」
母:「そりゃ、もう20歳過ぎて、恋の一つや二つあってもおかしくないわよ。
ただ、誰でもいいわけじゃないわよ。変な恋をして大学卒業できないっていうんだったら絶対ダメだけど。
お母さん的には知波に彼氏ができてて嬉しいよ。」
藍田:「えーだって、今でも監視してるよね?電話とかGPSとか。」
母:「あー、それはね、普通に“東京で1人”が心配なの。元気でいるか、何か事件に巻き込まれてないかとか。
私は電話では言えなかったけど、“あー、今日も知波1人で家にいるのかぁ。デートする相手もいないのね”って思ってたわよ。
でも心配することなくて良かった。」
藍田:「それならそうと言ってくれればいいのに!」
母:「まあ、できれば卒業したら地元に帰ってきてほしいからね。
無理矢理彼氏作らせて、こっちに帰って来ないってなったら嫌だもん。
自然にね、あるといいなって思ってただけ。」
藍田:「じゃあ、絵夢の卒業パーティーの日は?あれは絶対怪しいと思って様子見に来たよね?」
母:「あー、あれは本当ごめんね。お母さんね、あの日友達と温泉旅行に行ってたの。お父さんさ、寂しかったのよ。
せめて私がいれば大丈夫だったんだろうけど、1人でいろんな想像しちゃったんだろうね。
まさか東京まで1人で来るなんて思ってもなかったけど。」
藍田はなんか、全身の力が抜けた感じだった。
母:「そういえばさ本宮くん、3年生の甲子園の予選、サヨナラ負けで悔しかったね!せっかく一回戦勝ってたのにね。」
俺:「あれ?見に来てたんですか?」
母:「ううん、甲子園大会の予選て、全部ケーブルで放送してるじゃない?一年生の時から出てたでしょ?ずっと見て応援してたのよ。」
俺:「へーそうなんですね!覚えてくれてた上に、応援もしてもらってて嬉しいです。ありがとうございます。
あれは本当に悔しかったですよー!結構な強豪校だったので、あれで勝ってたらって思うと…まあ、もう終わっちゃいましたけど。
甲子園の試合って、全試合見てたんですか?」
母:「知波が見てたのだけ一緒にね。」
知波はシーッと口に人差し指を当ててる。
何だろ?何の“シーッ”か後で聞いてみよ。
お母さんのお許しをもらって(多分)、晴れて俺は“友達”から本当の“彼氏”に昇格しました!
よかった、めでたし!
-おしまい-
******
最後まで読んで頂きありがとうございました⭐︎
心から感謝です!
大学生3人組がキャンプに行ってRPG風オリエンテーリングをする話 ニ光 美徳 @minori_tmaf
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