第54話 ミニキャンプファイヤー

 ご飯を食べ終えて、片付けをする。

 アユタには全部作ってもらったので、アユタ以外の4人で片付ける。


 片付けが終わったら、また近くの温泉に入りに行き、さっぱりとしてキャンプ場に戻る。


 今は21時を過ぎた頃。

 寝るには早いし、今日はなんとなくゲームをする気分でもない。


 俺はさっきは言えなかったが、満を辞してカバンから持ってきたアイテムを取出す。


 卓上用の小さなキャンプファイヤーもどきだ。


 アユタ:「へー、こんな小さいのあるんだ。」


 優媛:「すごい!小さいけど、キャンプファイヤーの形してる。」


 俺:「良かった。一生懸命考えたけど、全然思いつかなくて。

 たまたまアウトドアの店で見つけたんだ。」


 佑:「神様は?」


 カケル:「神様?」


 俺:「神様なんているの?」


 アユタ:「小学校のキャンプファイヤーの時、教頭先生やってたぜ。最初に火を付ける神様の役。」


 カケル:「オレ、宿泊学習早退だから、経験してない。」

 俺:「オレも熱で早退したから、分からない。」


 アユタ:「じゃあ、言い出しっぺの佑の役な。」


 佑は“言うんじゃなかった”という顔をして渋々準備する。


 その間に、コンロで牛乳を沸かしてココアをいれる。


 準備が出来たところで、キャンプファイヤーに合う音楽を携帯で流す。


 テントの中からタオルケットを身体に巻いて、チャッカマンに火を付けて松明たいまつの代用として手に持ち、うやうやしく佑が登場する。


 渋々だった割にノリノリだ。


 俺達は大笑いしながら、火を付けてくれるのを待つ。


 ショボいかな?と思いながら持ってきたミニキャンプファイヤーは、皆のおかげで楽しいイベントになった。


 火が付いたら、ちょうどいい温度になったホットミルクココアを飲む。


 夜になって、涼しい風がそよそよと吹いていて、昼間の暑さがウソのようだ。


 優媛:「皆、本当に今日はありがとう。お陰様ですっごく元気になりました。

 アユタ、心配かけて本当にごめんね。」


 アユタ:「元気になってくれて良かった。

 カケルくん、大聖、佑、本当にありがとう。オレ、いい友達を持って幸せだ。」


 カケル:「オレも、皆の仲間に入れてくれてありがとう。優媛さんのためにって言ったけど、キャンプに一緒に来てくれて、すごく感謝してる。」


 佑:「オレ達さ、まだ学生だから、一回関わっちゃったらもう友達だよ。カケルくん、いいよね?」


 カケル:「もちろん!嬉しい!」


 俺:「カケルくんも一緒の大学だったらよかったのにね。」


 カケル:「ホント、本宮くん達の大学に転学しようかな。」


 佑:「それ、本気でいいかも!」


 カケル:「ところでさ、単刀直入に聞くけど、あんな快活な優媛さんが、なんでこんな状態になったの?」


 カケルくんの一言で、和やかな雰囲気がピリッとした。


 俺も佑も下を向いて固まってしまった。


 優媛:「うん、私も皆にちゃんと話したいと思ってた。聞いてくれる?」


 優媛さんは、この話題に触れて欲しくないのかと思っていたけど逆だった。


 言い出した時は、カケルくんて空気読めない無神経な人なのか?と一瞬思ったけど、違う。カケルくんの方が優媛さんの気持ちが分かるんだな、と感心した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る