第30話 ファイナルステージの続き

 ファイナルステージ、3ターン目だ。

 俺のHPはセミファイナルが終わった時点から全く変わっていない。


『プレイヤーの攻撃』


「カケルくん!ここにいるなら直接会って話しようよ!

 俺、あのオリエンテーリングの後からずっと、ちゃんと顔を見て謝りたいと思ってたんだ!

 こんなゲームじゃなくてさ。

 俺、どうしたらいい?」


『ラストクエスト』


『プレイヤーの攻撃

問題:小学生5年生の時、大聖とカケルが交わした約束は何?』


『制限時間は、このゲームの残り時間内。』


 …?

 俺、カケルくんと何か約束してたっけ?

 正直、小学生の記憶なんてほとんどない。まして誰かと話した内容とか、約束なんて、よっぽどじゃないと覚えてない…。


 カケルくんはよく1人で本を読んでたような?いや、何か描いてたっけ?

 外で遊んでた記憶はないなぁ。

 授業か課外活動?


 やっぱり本のことか?テレビ?漫画?どれも違う気がする…。


 カケルくんは5年生で初めて一緒のクラスになって、6月終わりの宿泊学習までだからたったの2ヶ月。

 あ!宿泊学習で何か約束?

 いや、同じ班だったけど、そんな約束なんてしてたかなぁ?


 俺は一生懸命考える。

 タイムアップまであと3分。


 どれだけ頭を絞っても、全然出てこない。


…3…2…1…


ビッビッビー!


 タイムアウトの合図だ。


『GAME OVER』

と横のスクリーンに出て、“カケル/イツキ”の姿が消える。


 俺の端末に

『すべてのプレイヤーがGAME OVERとなりましたので、この建物の鍵がすべてオープンになります。

 この建物から外へ出て、一旦受付までお戻りください。

 このまま直接オリエンテーリング中級の続きはできません。』

と表示が出る。


 俺は一つ前の部屋へ戻ったが、アユタも佑もいない。

 どこか他の部屋にいるのかと思って探すけど、どこにもいない。


 俺は自分の携帯で電話をかけようとしたが、圏外になっている。

 ゲームで借りている端末を見るとこっちは電波が届いている。


 おかしいな?もしかして建物の中だからか?と思い外に出る。


 端末からピピッとお知らせ音が鳴り『他のプレイヤーはすでに受付管理棟の建物にてお待ちです。』

 と表示が出た途端、急速に充電が減って画面が消えてしまった。


 俺はすごく焦った。

 2人と連絡が取れない。


 地図とコンパスならあるが…。


 小学5年生のオリエンテーリングを思い出した直後の、山の中に1人というのはなかなかこたえる。


 俺自身もカケルくんを探して山の中で迷った時の恐怖がフラッシュバックするし、カケルくんもすごく怖かっただろうと改めて思った。


 俺は、いろんな想いと怖さと入り混じって、こらえきれない涙があふれた。

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