第29話 小学5年生の時の話②
俺は待機命令が出ていたのに、勝手に1人で“カケルくん”を探しに行ったことで、先生にこっぴどく叱られた。
今までテレビとかでよく二次災害や二次遭難という言葉を聞いても、なにぶん小学生なものでピンとこなかったが、こいういことなんだと身を持って理解した。
カケルくんの件で、宿泊学習は中止になるところだったが、カケルくんのご両親の了解を得ることができたので、他の皆は最後まで予定通りできた。
ただ、俺はオリエンテーリングの日の夕方くらいから熱が出てきたので、親に迎えに来てもらって家に帰ることになった。
まだ皆と自然の家にいる間、カケルくんのその後の様子を先生に聞くと、崖から落ちた時に全身を打ったことと、足の捻挫、それから木の枝が足に刺さったみたいで、しばらく入院すると連絡があったとのことだった。
俺は熱が下がったら、カケルくんのところへ謝りに行くつもりだったが、熱が下がらず、3日過ぎたくらいに肺炎となり、俺も入院することになった。
それでも同じ病院なら偶然でも会うこともできたかもしれないが、カケルくんが入院したのは宿泊学習の近くの病院らしく、ちょっと遠いから困ると親に言われ、従った。
俺の親は、宿泊学習から家に帰ったとき俺の話を聞いてすぐにカケルくんのところへ謝罪に行くと言ってくれたが、先生に相談すると、
「友達同士のケンカとかではなく授業の一環で、その間に起こった事故なので、先生方と同じ班だった別の代表者で謝罪とお見舞いに行くので、行かれなくても大丈夫です。
もし大聖くんの病気が良くなったら、一緒にお見舞いに行かれるのは全然構いませんが、そんなに長くは入院されないと思います。」
と言われたので、それを強行突破するのもどうかということで、行かないという判断になった。
俺も肺炎でしんどくて、頭も回らない状態だったから、お互い退院して学校で会ったら謝ろうと思っていた。
5日程入院して、何日か家で療養してから、久しぶりに学校へ行った。
気になっていたカケルくんのことを友達に聞くと、転校したという。
俺はびっくりした!
こんなタイミングで、転校って?
よくよく聞くと、少し前に決まっていたことらしい。
しかも転校というか、お父さんの仕事の都合で海外に行ったのだという。
海外の新学期は9月頃なので、お父さんだけ先に行って、夏休みのタイミングで向こうに行く予定だったのだが、宿泊学習で怪我をして、やっぱり家族は一緒にいた方がいいということになり、予定を早めたそうだ。
カケルくんの怪我は最初に聞いたほど酷くはなく、3日ほどで退院できたそうで、それはホッとした。
そして2日前に学校へ転校の手続きと挨拶に来て、今日あたり海外へ出発するとのことだ。
小学生の俺は当然追いかけたりすることもできず、そのまま顔を合わすこともなくサヨナラとなった。
先生にも「教えてくれたら学校来たのに!」と言ったが、「その日の朝に手続きに来ると連絡があり、バタバタしてて無理だった。」と言われた。
でも、カケルくんは「同じ班の人のことは誰も全然怒ってない。」と笑って言ってたと聞いた。そして「この小学校での生活は楽しかった。」と言ったそうだ。
俺はその言葉を聞いてすごく安心したのだー。
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