第1話 まず状況を整理しよう

目を開ける事ができる。

嘘だ。あれだけ朦朧していて、視界が霞んでいたはずなのに、どうしてはっきりと状況が見えるのだろう。

っていうか、どういう状況!?


目の前に見えるのは、やいやいとしている男女。その顔はまさに怒っているような顔だった。


俺がこの人たちに何をしたのだろう。というより、一体ここはどこだ。


街並みの風景は21世紀とは思えないほど、レンガや木造での家が多い。それに目の前にいる人たちの服。

見た事ないぞ。そんな服。全員が全員コスプレイヤーな訳がない。


布地が薄そうだ。と言うより、何故俺は手足が動かない。まずそこがおかしい。


「死刑だ!!死刑!!」


死刑?物騒すぎるだろ。


そう思いながら、この状況を見ていた。だが、やはりおかしい。何故だろう。胸元がおかしい。そう思った時、自分の下を見た。木の板で固定されているみたいだが、髪がやけに長い。そして、この谷間。

おかしい。どうなってるんだ!?


俺に胸などないし、髪など長くない。この髪の長さは、まるで女性みたいじゃないか。いや、ほぼ確信だ。胸がある男性などいないだろう。その為、何故か俺は目を覚ますと、女性となっていた。


「さぁ、首を切り落とせ!!」


だから物騒だってば!!俺が何をしたって言う!!

と言うより、俺も一旦落ち着こう。この状況があまりにもおかしい。ここは夢とかじゃないのか?

て言うか、首を切り落とせって何?昔じゃないんだから。ギロチンなんてあるはず…。


そう思いながら、上を見ると迫力満点な刃がまさに、俺の首の真上に存在していた。


(え、嘘)


絶望する時間もなく、首に冷たい何かが通った。

それはまさに、先程のギロチン。

そして首が吹っ飛んでいる。俺の首が吹っ飛んでいるのを、見た人たちは歓声に溢れかえっていた。


みんな、サイコパスか何か?それで済むのならまだいい。だが、俺は再び命を落とさなければならないのか。と言うより、ここはどこなんだ。痛みが走ったと言うことは、夢とかではないようだ。





ーーーーーーー




意識がなくなったかと思いきや、もう一度開ける事ができる。そんな感覚があった。もうさっきまでの状況と酷似してませんように!なんて祈ったところで馬鹿らしい。


目を開けると、イケメンな人と、美女がいた。何この美男美女は。と、思いつつ女性の方は俺を軽々っと持ち上げた。


おいおい、マジかよ。一応俺は、高校生なんだけど。


と言う悪ふざけはやめよう。実際に俺は、2度も死を経験している。そしてこんな若い二人。まるで俺の両親を思い出す。


「あなたの名前………ノイーズ」

「ノイーズか…。いい名前だな」


ノイーズ?どこかで聞いた事がある。だが、どこで聞いたのかは、もう忘れてしまった。

それよりも、この二人の声は何故か安心できる。何故なのか。自分の両親じゃないはずだ。なのに、どうして心が温まるのか。


「オギャァー!」


え!?

声を出そうと思ったが、声ではなく、呻き声でもなく、それは赤ちゃんが発するような、そんな鳴き声のような声だった。どう言う事だろうか?いつの間にか、幼児退行してた?


いや、違う。じゃあ一体なんなんだ?



ーーーーーーー





そんな日から一週間が経過する。この状況にも段々慣れてきた。俺はどうやら転生というのをしてしまったらしい。しかも、その世界は俺が読んでいた小説の世界。


『月の令嬢』という題名である。次の令嬢というのは、月のように美しい公爵令嬢と、悪魔のような悪役子爵令嬢。その公爵令嬢がヒロインであり、悪役子爵令嬢はヒロインの恋路を邪魔する、敵キャラのような存在。


その小説の世界に転生してしまったらしい。しかも、最悪な事に嫌われ者として有名な、ノイーズ・オーバンに生まれ変わっていた。


彼女は悪行を働きすぎで、最終的には死刑にされた人物。と言うことは、さっきのあの光景はその真っ最中。という訳だった。


(だからってあのタイミング?)


タイミングが最悪すぎて、もう一度死んでしまったが、せっかくノイーズに転生したんだ。そんな未来なんて避ける。そして推しを間近で見られるような、そんな存在になる!


関係ないと思うが、俺の推しは月の令嬢と言われている、セレーネ・ファリノス。

可憐で純粋で、一途なそんな彼女が推しである。


だが、俺はノイーズな為、彼女とは敵対関係となる………のかもしれない。そこら辺に関してよく分からないが。今はとにかく、原作が始まるかどうかの問題だ。


幼少期の部分は書かれてない為、まだ原作は行っていないことが分かる。



それで俺は遊びに遊びまくった。オーバン家は子爵である為、貴族の一員だ。メイドや執事はもちろん。メイドさん達が遊び相手になってくれたりと、毎日が充実している。


「ノイーズお嬢様、あまり暴れてはいけませんわ」


そうメイド長に言われた為、大人しくいうことを聞いた。


「まぁ、偉いですわね。ノイーズお嬢様。しっかり言うことを聞けて偉いですわ」


俺は一応笑っておこうと思い、ニヘラ〜と笑むと、メイド長さんはキュンと来たのか、


「もうダメだわ。私、明日には死んでもいいかも」


と、言っている。赤ちゃんのかわいさは罪だな。


だが、俺は前世の記憶はしっかりとある為、そこら辺は大丈夫だ。





ーーーーーーー




「ノイーズお嬢様、夕食のご飯ですわよ」


時間はもう、夕食の時間となっていた。赤ちゃん用の離乳食と、ミルクを飲み、そのまま寝たり、そのまま漏らしたり、と、赤ちゃんは大変である。しかも、赤ちゃんは泣くのが仕事なため、泣かないとメイドさん達や、両親が慌てふためき、病院に連れて行ったりと、色々と大変である為、時たま泣いたりしている。


はぁ、俺の今後の生活、どうなるんだ?だけど、子爵家らしいから、一応貴族じゃん?なら、お金も名誉も地位も存在する。


だけど、ここはファンタジー小説でもある。魔法などが存在する為、魔法を極めるのもいい。


やりたい事がありすぎて、一日中今後のことを考えていた。

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