男なはずなのに、悪役令嬢に転生しました〜死にたくないので、最初からリスタートします。それと、逆ハーは勘弁してください〜

猫屋敷

プロローグ

俺の名前は鉈橋詔ナタハシミコト。鉈橋家の長男だ。俺には一つ年上の姉がいる。名前は秀歌シュウカ

一応美人の類に入る。だが、家ではぐうたらだ。

だが、そんな姉でも最近は、恋愛小説というのにハマってるらしい。

なんでも、悪役令嬢が主人公であり、ヒロインを虐め、そして最終的に婚約者に捨てられ、最後には死刑になると言われている。いわゆるざまぁ類だ。


だが、毎日のように読んでいる姉の姿を見て、案外面白いのか?と、思うようになった。

俺の姉は三日坊主であるため、文章を読むのが苦手な姉が、一週間読み続けているというのは、まさに奇跡に近い。


今までの姉と比べてみよう。


『あれ、姉貴。この間おすすめしてた本は?』

『なんかもういいかなぁって』

『あ、そう』


のはずが、


『姉貴、悪役令嬢ものの小説読み続けている?』

『ばっちしよ!』


本当か?と思いつつ、そんな転機が訪れるのかぁと思いながら、俺は姉に言った。その本貸して。と。


そしたら、容易く渡してくれたため、自室にて読んでみた。

そんな日から一週間が経った時。俺は徐々に沼にハマりかけそうになった。恋愛小説とかあまり見たことなかった俺が、初めてちゃんと読んでいるという事に、まず驚きを隠せない。


確かに、姉がこんなに読み続けているのは確かに納得がいく。


そしていつからか、姉と語り合うようになった。



ーーーーーーー


学校から帰り、帰宅して早々小説の続きが見たくなった俺は、急いで一階にある本棚の方に向かった。

今俺の学校では読書期間中だが、間違いなく級友に馬鹿にされるだろう。

俺の通っている都内の高校は、男子率が高い。その為、女子の割合が低く、女子の隣の席、もしくは女子と友達になれたやつは、勇者と呼ばれていた。


話が逸れたが、本棚から例の本を持っていき、自室へ向かうための階段を登っていると、


ツルッ!


と、足を滑らしてしまった。徐々に上の段数が離れていき、下に落ちていく感覚が半端なかった。

180度回転し、俺はそのまま階段から落ちてしまった。そして、頭が強い衝撃が来る。


天井が上になり、間違いなくやばい事に気づく。

頭が痛い。頭には激痛が走っており、早く救急車を呼ばないとまずいと思った。今俺の家の中には、俺以外いない。父さんは会社の社長な為、夕方には帰ってこない。

母さんも仕事で介護をしている為、あと二時間もすれば帰ってくるだろう。

姉は高3で、受験を控えている為、今日は友人と図書館に行ってから帰ると、今朝言っていた。つまりは、母さんが帰ってくるあと二時間待たなければならない。だが、そんな余裕もなくなってきている。


俺は階段のすぐ近くにある、携帯電話を取ろうと腕を伸ばす。が、絶妙な位置にあり、なかなか手に取ることができない。


そしていよいよ、意識が朦朧と始める。だが、俺は諦めず必死に腕を伸ばし、やっとの思いで携帯電話を取った。

そして、いち早く119を押し、


ピロピロピロ


と、コールが鳴り始める。電話の向こうからは女性の声が聞こえた。必死に今の状況を伝えようにも、声を出すことができなかった。


「もしもし、火災ですか?救急ですか?」

「きゅ……、救急……。はや…く………来て………ください………」


自分では大声で言っているはずが、声がかなり小さく、途切れ途切れとなっていた。


「救急ですね!?住所を教えてください!どんな容態ですか!?」


聞こえたのか、女性はそう聞いてくる。だが、その前に力尽きてしまい、持っていた携帯の手が弱くなり、携帯が地面に落ちる。


その間にもわずかに聞こえる、女性の声が聞こえたが、なんて言っている、さっぱり分からない。


「なんで………こんな………」


意識が朦朧する。手足が動かなくなったみたいだ。


頼む…。誰が、助けてくれ……。


「そうだ………。俺は、まだ………死んじゃいけない…」


俺には、好きな人がいる。その子と遊ぶ約束だってしている。同じ学校で、同じ委員会で。

可愛くて、クールながらも、女の子らしい一面を見せる。そんな子と、


「遊ぶ………約束が………」


そして等々、俺は本当に死んでしまった。もう、何も聞こえない。何も見えない。

感覚すら感じない。こうなってしまえば、不思議と“死”という概念がない。


さよなら、父さん、母さん、姉ちゃん。


ハハッ、久しぶりに姉貴のこと、姉ちゃんって言ったな。


「———!」


なんだ、この声?音?

何かが耳に入る。あれ、俺は死んでいるはずじゃないのか?


まぁ、いいや。今度は来世に期待しよう。本当に来世というものがあるのならば。

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