第14話探求高校の日常

【探求高校の日常】

 次の日の放課後、闘技場で

「動く的に当てるのは最初のうちは難しいから、まずは、自分が走ったり、寝転んだりしながら弓を射る練習、と素早い連射かな」

「楠さんは、ナイフと体術を使っての防御の練習、それと練習中に大谷さんと伊達君が疲れてきたところで回復をかける事、当然自分にも」

「伊達君は、大きな盾を自在に扱える練習と大剣も同じく素早く自在に振り回す練習」

「「うん」」「ああ」

「高谷君は?」

「うん、走り回りながら的にナイフを当てる練習、それと、今日その経験者の人に会う約束があるから、ちょっと早めに帰らせてもらうね」 

「うん、ねえ今度その経験者の人に会わせてもらえないかな」

「ああ、いいよ」

 さゆりさんでもゆうでもどっちでもいいよな、そう思いながら、ちょっと練習に付き合ってから先に帰る。

「じゃあ、また明日」

「うん、今度紹介してね」

「ああ」

 それから次の週の実習まで毎日のように闘技場で練習が続いた。

 ここ最近は、さゆりさんは毎週俺の実習に隠蔽で付き合ってくれるだけじゃなく、西大泉の駅まで来てくれて3人で会う事が多くなった。

 俺は毎日の学校での出来事を報告すると、

「そうだな、会って直接話を聞いてあげても良いかな」

「ありがとうございます」

「あの、私の処もいいですか」

「ああ」

「そんなに俺達に付き合ってもらって大丈夫ですか?」

「ああ、前の世界では、大学と剣道とゲームとバイト生活だったから、ゲームの時間がまるまる余ってるんだよ、それに、この世界ではダンジョンの魔石や素材がそのまま現金になるから、これからはバイトもいらなくなるだろうし」

「そうか、そうですね、素材を買い取ってもらったらそのままお金になるんですね」

 うんうんと皆が頷く

「彼がレベル30になったから、再受験して探求大学を受けるらしくて、それで探求大学に通っている友達がいるから、彼とその友達の話を聞きに行ったんだ、それでいろいろなことがわかったんだ」

「上級ダンジョンは1年前くらいに発生したらしい、それまでは中級と初級しかなくて、上級、中級、初級という区分はその時にできたらしいんだ」

「そうなんですか、だからトップで70前後なんですね」

「ああ、そのころはレベルが60を超えたら十分トップクラスで、中級だとどんなに頑張っても70は行かないだろ、それ以上は必要ないからな。

 ゲームでは最高100までの設定だが、この世界では最高レベルがどれくらいなのか、誰もわからないんだよ」

「だから、これからさらにその上のダンジョンが発現するかもしれないし、100以上のレベルもあるかも知れないんだ」

「そうですね、ゲームじゃないから上限の設定なんて誰もわからないですよね」

「ああ、それと、これが今回の一番の情報なのかもしれないが、この世界ではレベルはなかなか上がらない、上げるのはかなり大変なようなんだ」

 さゆりさんの彼?の友達(探求大学の学生)の話だと、レベル30はかなり優秀で、俺の通っている探求高校でも3年生で30になる人間は1/3以下、他の生徒は30になるまでダンジョンに入ってレベルを上げてから探求大学を受験する生徒が多数いるらしく、その友達も2年かかって探求大学に入学したそうだ。

 それ以外だとさゆりさんの彼?のように、普通の大学に通っていてレベル30になったら再受験して探求大学に行こうとしたりするくらい。

 確かに、ゲームと違って情報がないから手探りだったのだろうし、そもそも最近まで中級ダンジョンしか存在しなかったのだから。

「これから俺達どうしましょう」

「そうだな、ダンジョンには入りたいが、今までのくせでダンジョンに入るとどうしてもレベルを上げることを意識してしまうけど、売っている装備品は、中級ダンジョン向けがほとんどで、それ以上の装備は売っていない。

 中級ダンジョン向けの装備もおそらく深層向けだとやたら高額で、こずかいやバイト代では買えない金額。

 トッププレイヤーの装備品はおそらく特注だろうし、国防軍や警察が所有している装備はおそらくかなりの物で、国レベルの機密品かもしれない、そう考えると、それ相応の物がない、まったく手に入らない。

 そんな状況でレベル上げをするのはあまりにも危険だからな」

「そうですよね、今まで貯めてたビットも消えちゃったし」

「じゃあ、しばらくは入っても上級の上層までにして素材集めですか」

「上級は難しいかもしれないな、なるべく他の階層で素材を売ったり、集めながら少しづつ装備を揃えていくか」

「じゃあ中級で狩りまくりますか」

「そうだな」

「装備を買うお金がなくてどうしようかと思っていたんで俺達も助かります」

 結局土曜のダンジョンは来週に延期になった。

 日曜日、3人で新宿に、前の世界では大型家電量販店だったのが、大型魔石家庭用品店にそしてそのすぐそばにあったカメラ館がダンジョン館というのに変わっていて、中級ダンジョンの中層までだったらここで装備が一式揃う。

 それ以上の階層の場合、やはり本当の専門店に行く必要があるが、とりあえず、ここでどんな装備がどれくらいの値段で売っているかを調べてみることに、それと専門店情報(クチコミ)を得るために。

 やはり俺達が以前に使っていたような装備は専門店に行ってみないとわからないらしく、おそらく細かい要望を入れると全て特注品になるようだ。

 とりあえず中級に入ってお金を稼いでからにしようという事だったので、

 ビックダンジョン館とヨドバシダンジョン館を廻って、装備品を見る(来週はヤマダダンジョン館にも行ってみよう)。

 俺は今まで貯めていたお年玉全部を使って、装備品を揃えることにした。

 雰囲気は以前の装備に比べると素材も違うし機能はやっぱり・・・・・・不安、早くお金をかせいで、専門店で装備を整えたい

 ――2回目の実習の前日

 格闘場で――

「皆、調子はどう?」

「うん、この前よりも動けると思う」

「それじゃあ、明日もがんばろう!」

「おお!」

 俺はこの前買った装備品を試したくて 今回のダンジョンで使う事に

「あれ? 高谷君のその装備って管理室の物じゃないよね」

「うん、今まで貯めていたお年玉を使って買っちゃたんだよ」

「そっか、いいな~」

「そのうちダンジョンの魔石や素材が売れるようになったら自分で買えるじゃない」

「そうよね」

「うん、俺なんかはアサシン以外他のジョブの適正がないから、先行投資のつもりで買っちゃったんだ」

「そっか、じゃあ、がんばって強くならいとね」

「そうだね」

「どうしょうかな、私も買っちゃおうかな~」

「そうだよね、先行投資だよね」

「うん」

「ねえ、高谷君、今度一緒に行ってくれないかな?」

「いいけど、買っちゃっても良いの?」

「うん」

「そうか、わかった」

「ねえ、今度の土曜学校が終わってから、皆で行くのは?」

「ちょっと待ってね」

 俺はこの事をさゆりさんとゆうにレインで報告し、土曜は、大谷さん達と一緒にビックダンジョンに行くことになった。

 ――実習日当日

 今日は2回目という事と、1週間訓練したこともあって、この前よりスムーズにモンスターを倒す事ができた

「先週よりスムーズに倒せるようになったね」

「うん、でも、もう少し命中率を上げたいし、連射ももっとスムーズできるようになりたいな」

「僕も、一発で2匹以上のゴブリンを倒せるようになりたい」

「私も」

「そうだね、でもここまでできるようになったら2階層に行っても大丈夫だと思うんだ、だから今度、ボアを倒したら2階層に行くことも考えてみないか?」

「「うん」」「ああ」

 今回もボアには遭遇しなかったが、ゴブリンは10匹、ラビットも15匹倒せた。

 俺の提案に後ろで見守ってるさゆりさんも頷いてくれた。

「練習すればするほど上達するから、来週も闘技場で訓練して、2階層めざそうよ」

「「うん」」「ああ」

 今日も先週と同じく、学校に戻って、成果品と実習報告書を提出すると、なんと先週提出した素材が戻ってきた。

 実習報告書の真偽を確かめるための提出という事、学校の実習とは言え一応は探求者という事らしく、ゴブリンとラビットじゃあそれほどお金にはならないけど、素材が戻ってくるのはモチベーションが大幅にアップする。

 皆で均等に分けたいけど、割り切れない分は、女子2人にあげる事にした

「えーっ、いいよ、だって 高谷君のおかげなんだから高谷君がもらいなよ」

「いや、いいよ、とりあえずお年玉で装備を揃えたから、これからもたくさん素材を狩り取っていくんだし、初回記念という事で、2人で持って帰りなよ」

「そう?じゃあありがとう」

 俺は次の日曜、3人で中級ダンジョンに入って素材を狩りまくるから、どおってことない。

 今回は学校で解散し、いつものように俺とさゆりさんは2人でゆうを待つ。

 ゆうが 

「月曜日、いよいよダンジョンデビューでーす」

「あのときの2人?」

「うん、それともう1人で4人パーティー」

「俺、ついて行こうか?」

「えーっ、いいよ、学校でしょ」

「だから、それくらい平気だって」

「でも~」

「大丈夫だ、私がついて行くよ」

「いいんですか?」

「2日連続ですよ」

「ああ、暇だし、ゆうの友達も見てみたいしな」

「すみません」

「ありがとうございます」

「そういえば、ゆうは、俺ほどランク落とさなくてもいいんじゃないか?」

「そっかな~」

「だって、俺Dクラスでレベル3だから、そこまで落とさなきゃいけないだろ」

「そっかー、そうだね」

 3人で 近くの公園で、ゆうのデバクの練習

 デバフを4回ほどかけた時

「どう?」

「レベル15か、いいんじゃないか」

「うん、俺みたいにDクラスじゃないんだし、1年Aクラスの最高で16って言ってたからいいんじゃない?それに、パーティーの皆に見せないんだったらね」

「じゃあ、これで入れるね」

 明日、ダンジョンの前でさゆりさんと待ち合わせる約束をして公園でバイバイして、俺は家に帰った。

 リビングで陽が 、

「兄さん、今日のダンジョンは?」

 今日の成果を教えて、返ってきた素材を全部陽にあげると陽は滅茶苦茶喜んで

「先週もらった毛皮を、学校に行って皆に見せたら、皆がすごいって言って大変だったの」

「そんな物学校に持って行って大丈夫なのか?」

「ほんとうはダメなんだけど」

「そうか、ほどほどにするんだぞ」

「うん」

 それから、毎週実習で4人でダンジョンに入る、レベルアップは順調。

 Dクラスでは平均的かもしれないけど、確実に安定してモンスターを倒せるようなスキルアップだから、平均でも焦る必要はない。

 A,B、Cクラスの様子がどうなっているのか、聞いてみたいので、3人にその話をすると、それとなく調べてみると言ってくれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る