第5話再会―境遇

【再会―境遇】

 久しぶりで、初めての階層、おまけに2階層突破で、レベルも上がった。

 約1年ぶり、それも2階層クリア、結構疲れていたのかログアウトするのを忘れそのまま寝落ちしてしまった。


 ふと気が付くと、VRヘッドギヤをつけたまま寝てしまっていたようで、もう夜中の2時を過ぎていた。


 ゆっくりVRヘッドギヤをはずして、ベッドで寝ようとしたら、机の脇におにぎりとペットボトルがおいてあった、母さん?父さん? ありがとう

 明日もゆうとダンジョン。 


 そのおにぎりを食べて、さっさと寝よう。 

 レベルが1つ上がって順調、すっきり気分ですぐに眠りについた。


 朝、スマホから目覚まし音楽がなり、ぐっすり眠れて気分は良好

 1階リビングに行くと、父さんと母さんはもう仕事で出かけていて、妹がゆっくり朝食を食べていた。

「兄さんおはよう」

「おはよう」

「昨日はずーっとダンジョンでも調べてたの?」

「うん、ああ、ん?」

 ひょっとして、あのおにぎりは陽?

「ねえ今度私も連れて行って?」

「えっ?」

「えっ、って、いや?」

「いや、そうじゃないけど、陽がダンジョン?」

「そうだよ、兄さんは春から探求高校の1年生でしょ 冒険者登録するんでしょ、だったら私も同伴でなら初級ダンジョンに入れるんだよね」

「えっ? 何それ」

「何って・・・兄さん、どうしたの?」

「ダンジョンって、陽はゲームばっかりしないで、って言ってたろ」

「何言ってるの?ゲーム?」

「いや、ちょっとまって、わかった、ちょっと用事があるから出かける準備するわ」

「うん」

 何がなんだかわからない

 妹がダンジョンに行きたいって、どうなってるんだ?

 こんな事相談できるのは・・・・・・『ゆう』しかいない、

 急いで自分の部屋に戻って、VRヘッドギアを付けゲームにダイブ・・・・・・できない

 何がどうなった?

 パソコンを立ち上げネット検索すると・・・・・信じられない事にダンジョンがこの世界に存在していた。


 それも俺達がやっているVRゲームとほとんど同じように、今現在日本にはダンジョンの数が10近く認識されているらしく、数年単位で新しいダンジョンが発生しているようで、それぞれ初級、中級、上級を国あるいは地方自治体が判定しそれを公表すると共に管理をしてる。


 ・・・まずい・・・俺、現状に全然ついて行けてない。

 なんとかしてゆうと連絡をつけたい。

 ダメもとで もう1度VRヘッドギアを付け、スイッチオン、電源は入ったけど やっぱりゲームには入れない。


 画面の右下にギアのマークがあるのでそこをタップしてみると、

“フレンドマークの登録、設定、変更、その他” あった。

 フレンド連絡、これをタップ、たのむ!


『かっくん?』

『ゆう?』

『よかった、つながった』

『ああ、なあ何がおきたんだ?』

『うん、僕にもわからないけど、なんかこのゲームの世界と現実が融合したみたい』

『やっぱりそうか、今朝妹から一緒にダンジョンにはいってほしいって言われた、それに俺の通う予定の高校名が違っていたんだ』

『そうなんだ』

『ああ』

『やっぱり、現実世界と融合したみたいだね』

『なあ、ゆうってどこに住んでるんだ?』

『どうしたの?』

『俺と同じ境遇の人間って俺が知ってるのはゆうだけなんだ、だから、できれば、会って話がしたいんだ』

『うん、わかった今から出られる?』

『ああ、でも、ゆうはどこに住んでるんだ?』

『うん、まあ会えばわかるよ、じゃあ今から30分後に西大泉駅南口で』

『西大泉って、ゆうの家って俺んちの近所?』

『うん、会えばわかるから』

『・・・うん、わかった』

 それから急いで支度をして、妹に出掛けてくると言って西大泉駅に着いて、誰がくるかわからないけど、ぼーと立っていると、向こうから懐かしい少女が手を振ってくる。

 祐子?

 でもあいつは小学校までは一緒だったけど、中学受験でなんかすごい有名な中学に行ってそれ以来ほとんど会っていない。


 一緒に遊んだりしたのは小学校3-4年くらいまでで、その頃から高嶺の花の片鱗があって、6年生の頃になるとクラスも違うし、完全に高嶺の花の存在になっていたから俺なんか声をかける機会もなく、家の近所で偶然会った時も、見るたびに綺麗になって、緊張しまくった俺は挨拶するくらいでほとんど口も利かなくなっていたな~。


 そんな事を考えていたら

「かっくーん」

「えっ?」

「うん」

「ゆう?」

「そうだよ」

「え~っ、ゆうって祐子なの?」

「うん」

「なんで?」

「えっ? どうして?」

「いや、だって、祐子はそのゲームなんて・・・・・・」

「やるよ、かっくんより強いし」

「そうだけど……」確かに。

「まあ、ここじゃなんだから、ほらあそこのファミレス行くよ」

「ああ」

 言われるまま祐子の後ろをついてファミレスに

 席に座って、ドリンクバーとポテトを頼んで2人ドリンクバーで、コーラ、オレンジジュース

 席に戻り「祐子ってゆうなのかー」

「そう、驚いた?」

「ああ、驚いたよ、でもなんで?」

「いまでも陽ちゃんとは時々会ったりしてるんだよ、だからかっくんがVRゲームやってるって聞いて、私もやってみようかなって始めたの」

「そうなんだ、びっくりしたよ」

「へへへ、今まで全然気が付かなかったんだね」

「ああ」

「そっか、フフフ、やったね」

「うん、ていうか、ゆうも俺と同じ?」

「うん、私も朝起きてびっくり」

「そうなんだ、でもゆうって一人っ子だよな」

「うん、そう、朝ゲームに入ろうと思って、でも入れなくって、だから運営会社になにかあったのか調べてたらね、現実にダンジョンがあってびっくりしたの」

「そうだよな」

「うん、それでかっくんと連絡をとりたくて、もし無理ならかっくんの家に行こうかなって思っていたら連絡がついたから、すぐに会わなきゃって」

「そっか」

「うん」

「そうだよな」

「うん」

「でも、今ちょうど春休みだからよかったね」

「ああ」

「かっくん、さっきから、ああ、ばっかり」

「ああ、…じゃなくてうん、俺も驚いてどうして良いかわからないんだよ」

「この事知ってるの私たちだけかな~」

「ああ」

「また、ああ」

「ごめん」

「フフフ、こうやってお話するのって小学校以来だね」

「ああ」

「また、ああ」

「あっ、ごめん」

「まあしょうがないか」

「この世界って、ダンジョン以外は同じかな」

「うん、お母さんはいつもどおりだった」

「俺んちは2人とも仕事で出かけた後だったけど、妹に会って話したら妹は普通に俺に接してきた、けど妹の口からダンジョンって、あっ、それと俺が通う予定の高校の名前が違っていた」

「さっき言ってたね、どんな風に?」

「国立探求高等学校西大泉校、って名前」

「それって、いかにもダンジョン関係の学校みたいね」

「そうなんだよ」

「やっぱり、これが現実かも」

「うん、あのさ、やっぱりレベルとかあるのかな」

「ステータス見てみた?」

「そういえば、忘れてた」

「見てみる?」

「ああ」

 そう言って2人黙ってステータス、と頭の中で唱えると……見えた。

 でもなんでゆうはステータス隠す?恥ずかしいの?

 まあいっか、俺のステータス、昨日のゲームの中と同じだ

「ゆう」

「なに?」

「このレベルって、この世界のダンジョンだとどれくらいなんだろう」

「うん、どれくらいなのかな~」

「ゲームの時と同じだったら結構いけそうな気がする」

「そうだよね」

「調べてみるか」

「うん」

「ねえ、今日、これからどうする?」

「どうしようもないよね、とりあえずこの世界のダンジョンと、俺達のレベルがこの世界のどの程度なのかとか色々調べてからだよな」

「そうだよね、ねえこれからかっくんのおうちに行ってもよい?」

「ああ、そうだな その方が色々相談できるし」

「うん、じゃあ、いこっか」

「ああ」

 2人でファミレスから家に向かって歩きながら

「ねえ、ゲーム内のビットって使えるのかな~」

「ああ、さっきのファミレスにはなかったよな」

「うん」

「ゆうってどれくらいビット持ってたんだ?」

「うん、5000万くらい」

「えっ、そんなに?」

「うん、でもまだまだ足りないの、アークウィザード用の最上級のオリハルコンロッドが欲しくって貯めてたの」

「そうなんだ」

「うん、あのね、ステータス画面には映ってなかったの、なくなっちゃったらどうやって手に入れるか考えなきゃいけないな~」

 ゆうから聞いた話だと、オリハルコンロッドはその名の通りオリハルコン製で魔法適正が半端なくって、さらに武器としても使えるアークウィザードにとって購入できる魔法の杖の最上級モデルだ。

 ダンジョン内のドロップ品や宝箱からでてくるアーティファクト級(宝具)に比べると性能は落ちるけれど、そんな物は滅多に出ないから、ウィザードにとってはこれを持つ事が夢なんだそうだ。

 そんな話をしながら俺の家に、

「ただいま~」

「おじゃましまーす」

 妹が出てきて

「あっ、祐子さんこんにちは」

「陽ちゃんこんにちは」

「今日は?」

「うん、かっくんとね」

「えっ?」

「ほらダンジョンについて打ち合わせ」

「祐子さん、兄さんと一緒にダンジョンに入るの?」

「うん、そのつもり」

「ねえ、だったら私も」

「そうね、私たちが高校生になって、冒険者登録して、ダンジョンに何回か入ってからね」

「うん」

 祐子が普通に陽と話しているのを見て、その適用力に驚きながらも、俺の部屋に

「ゆう、すごい適用力」

「うん、陽ちゃんとは時々会ったりしていたしね」

「そうなのか?」

「うん、それよりこの世界について」

「そうだった」

 色々調べてみて、

「なあ、世界が融合したんじゃなくて、俺達だけがこっちの世界に融合したってことなんだな」

「うん」

 それから2人でパソコンの前でダンジョンについて調べ始めた。

「ダンジョンって高校に入って冒険者登録してからじゃないと入れないんだな」

「うん、そうみたいね」

「それじゃあ、俺達ってこの世界ではダンジョン未経験者=初心者レベルなんだよな、ひょっとしてまずいのか?」

「そうかも、ねえ、レベルについても調べようよ」

「ああ」

 ダンジョン関係のニュースや、探求者?冒険者?パーティー、クラン・・・思いつく言葉で検索すると、だんだんわかってきた。


 ダンジョンが発生したのは約10年前の事で、ダンジョンから出てくるコア=魔石、モンスターの素材、ドロップ品なんかは、当時の科学では解明できない特殊な力があって、それが経済社会に大変革をおこし、巨大産業になっている。

 ダンジョンはレベルが全てで学歴は関係なく、ただ危険なので16歳または高校生になって初めて冒険者登録ができ、初級ダンジョンから入れるらしい。


 一般人はたいていレベルは1、

 中には10くらいの人もいるらしいけど、そういう人は迷わず冒険者を目指す。

 基本的にダンジョンでモンスターを倒したりする事でレベルが上がっていくところはゲームと一緒。


 レベルはゲームと同じで、フレンド、パーティー、クランのメンバー以外の他人には見る事はできないが、1つ違うのは各ダンジョンの入り口に監視員がいて、専用の機械装置を使ってレベル判定をして入場者のチェックをしている事、つまり初級レべルの人間は安全を考慮して中級、上級ダンジョンには入ることができないようになっている。


 つまり行政側だけは皆のレベルがわかるのだ。


 世界で初めてダンジョンが出現した頃、かる~いチャラオやイケイケ?連中が実力も考えずにダンジョンに入って、そのまま帰ってこない、初級者パーティーが中級ダンジョンに入って全滅した、という事件が多発するようになり、それが他の国でも同様なことが起こり、それに伴い国際的な機構が発足し、各国もそれに対応し、日本では、探冒省ダンジョン管理局というのができ今の制度になったらしい。


 ただし、今朝、陽が言っていたように、同伴者がいれば、その同伴者のレベルで判定されるダンジョンに入る事ができる。


 また中学生以上であれば16歳未満でも、探求者登録または、冒険者登録した者が同伴すれば入れる、という事もわかった。

 陽はこの事を言っていたんだ。


 冒険者、探求者の違いは協会が2つあって、登録する協会の違いで、細かくは違うみたいだけど、今の俺達にとって、どちらでも同じような物だけど、お役所側の都合があるらしい。


 もちろん両方に登録することもできるが、管轄が違ってもどちらかの登録証があればどこのダンジョンでも入れるから、違いがわかってからでもいい事なので、高校が始まって説明を聞いてからの話という事になった。

「という事は俺達は本来レベルが1か2程度ってことだよな」

「うん」


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