第4話レベルアップ

【レベルアップ】

 さあ15階層、2人でゆっくりと進んでいくと、ハイウルフが4頭、唸りながら近づいてくる。

 上級のダンジョンで出くわすウルフはハイウルフ。

 階層によって、頭数が違ったり、体格が違ったり角の本数が違ったり(強さが違う)。

 ここは4頭、ハイウルフだ。

 10階層で、ハイウルフと思って戦ってみたけど、実際に戦ってみると滅茶苦茶強かった。

 ここら辺の階層で出現するハイウルフは、上階層あたりのハイウルフとは格が違う、なんで名前が同じなんだって戦う度に思っている。

『ゆう、俺が2頭やるから、残り2頭頼む』

『OK』 

 その瞬間、俺は自分の足にバフ(俊足バフ)を掛け、真直ぐハイウルフに向かって走る。

 急加速して近づいてくる俺を見て、ハイウルフは最初ビクっとするが、すぐに4頭とも俺にとびかかれるような体制をとる。

 ぎりぎりまで走って、とびかかろうとする直前に相手にデバフをかけ、斜め45度に跳躍すると4頭ともそれを目で追うように首が斜め45度を見上げるが、デバフをかけたので動きが遅くなる、ハイウルフが見上げた瞬間、右端の1頭にゆうが火炎魔法をぶちかます。

 あっという間に炎に包まれ 俺は、もがき苦しむのを見ながら残りハイウルフの後ろに回り込みまず1頭の後ろから首筋にナイフを突き刺し、そのまま今度は鉈でもう1頭の頭をかち割る。

 気づいたら最後の1頭も黒焦げに

 これで完了。

 ゆうの火炎魔法はハイウルフだとコア以外全部灰になってしまうので、稼ぎは少ないけど、確実に倒せるのでほんと頼もしい。

 とりあえずコアを4つ、まだ灰になっていない灰ウルフ2頭の牙を抜いて、マジックバッグに、毛皮をはぐ時間がもったいないので、そのままにしようとしたら、ゆうが

『もったいないから、毛皮は僕が持って行くよ』そう言って灰になっていないハイウルフの毛皮をさっさと剥ぎ取り ゆうのマジックバックに入れた

 ゆうのマジックバックは俺のよりもはるかに容量が大きく、信じられないくらいなんでも入る。

 モンスターは倒すとすぐに黒い霧のようなものを発して灰になる場合としばらく倒れたままで、数時間後に灰になる場合がある、その規則性はない(わからない)。

 すぐに灰になるときは、コア(魔石)やドロップ品しか残らず、時間がたって灰になる場合も、毛皮や牙などの素材がドロップせずに灰になる場合があるので、そういう場合、灰になる前に自分で牙や毛皮などの素材を狩り取る必要がある。

 どうでも良い話だが、このゲームではコアと魔石は同じ意味で、定義では、モンスターの中にあるとき、倒して灰の中に紛れてる時点ではコア、売ったり買ったり、道具として使う時は魔石と呼んでいるが、ゲームの最初の説明にそう書かれているだけなので、厳密に区別しているわけではなく人によってはなんでもかんでも魔石と言っている人いるし、逆にコアと言っている人もいる。

『いつも悪いね』

『ううん、大丈夫、それよりかっくんはレベル上げ優先なんだよね』

『うん』

『じゃあ、このまま突っ走ってボス部屋に行っちゃう?』

『いいの?』

『うん、どうせなら、かっくんのレベルを上げて、2人で一緒に深層攻略したいし』

『そう言ってくれて、うれしいよ、じゃあ お言葉に甘えて』

 というや否や

 ゆうが自分の脚にエンチャントを掛け走り出すとあっというまに小さくなって、あわてて俺もバフをかけ ゆうを追いかける

『お―い、俺を置いて行くなよー』

『悪い悪い、そういう事ならさっさとボスをやっつけちゃえって思ってね、かっくんならすぐに追いつくだろうし 』

 そんな会話をしているともうボス部屋の前、俺はここまでたどり着いた事はなかったけど、ゆうの後をついて行ったら他のモンスターに出喰わす事なくあっさりとボス部屋の前に

『すごいな、モンスターに出くわさなかったよ』

 この階層は、ゆうは攻略済だから安全最短ルートを知っているのもあるけれど、ゆうはこういうことに長けている、感知系スキルもないのに、すごい。

『まあね、じゃあ行きますか』

『おい、準備は?』

『そうそう、ここのボスはミノザウロスって言ってね、魔法系はあまり効かなくて、攻撃は物理系中心だからね』

『わかった、じゃあいつもパターンだけど、ゆうは?』

『うん、弓と土魔法による物理攻撃かな』

『了解』

 そう言って、いわゆるボス部屋と呼ばれる奥まったスペースに行くと、そこは、小さな闘技場のような造り、その奥の方にいた。

 リザードマン?いや違う、体つきがミノタウロスで頭がリザード……いやドラゴン? ひょっとして炎でも噴くのか?

 とりあえず、バフを2重かけして俊足で近づく

 やはり、思いっきり右手で斧を振り回し俺を狙ってくる。いつものように相手にデバフをかけ、斧をかわすように斜め45度にジャンプすると、今度は顔をこちらに向け口をおおきく開けた、口から何かが出る。

 避けるようにミノの肩を蹴ってそのままさらに上に向かってジャンプすると、ゆうが弓を。ミノの目に刺さる。

 ミノが呻きながら矢を抜こうとしている間に首筋に刀を刺そうしたが、硬すぎてはじかれた。

 首まである鱗があまりにも硬く、普通のミノタウロスのようにはいかないので、そのまま下に潜り込んで足の腱を切り裂く、致命傷にはならなかったけれど、それなりに効いたようで、膝をついた。

 それを見逃さないのがゆう、こんどはもう片方の目を弓矢が、それとほぼ同時に土の壁がミノの3方向を挟むように

 ミノは後ろにも横にも行けず、真直ぐに突進するしかない。

 頭は鱗で非常に硬いけれど体は普通のミノだから、俺は鉈を取り出し、思いっきり腕を切り落とす、普通、鉈ではハイウルフの頭をかち割る程度だけれど、ミノはそうはいかない、でもこの鉈にはゆうのエンチャントがかかっているので、強化バフを掛け思いっきり切りつけると、アサシンの俺でもしっかり腕を切り落とせた。

 ミノザウスルスは両目と片腕そして足の痛みでもがいている、このクラスは自己修復する可能性があるけど、今のところ自己修復が始まっていない、間に合う。

 次の攻撃! と思っていると、

 ゆうが今度は思いっきり大きな立方体の岩を先ほど作った3方の壁にすっぽり収まるように上から落とすと、ミノが中にいるのに そのまま綺麗に収まった。

 ????

『ゆう、ミノは?』

『うん、重力魔法を何重にも掛けて重くしたからそのままペシャンコ』

『そ、そ、そっか』

『どうしたの?』

『いや、ゆうってそんな魔法使えたっけ?』

『うん、これって魔石も割れちゃうし素材も全部ペシャンコになっちゃってね、だからあまり使いたくないんだよ』

『そっか・・・そうだよね、素材ね、うん素材だよね』

『うん』

 ゆうは実は滅茶苦茶すごい奴なんじゃないかって、でもまだレベル90にいってないんだよな~ほんとか?

 なんて思っているとボス部屋の奥の壁に扉のように開かれた空間がありその先に階段が見えた。

『じゃあ16階層に行こうか』

『うん』

 階段を下りながらステータスを見たけど、

 レベルは84のまま

『ゆう、85に上がるには何をすればいいんだ?』

『うん、僕の時は16階層でハイウルフとハイオーガを倒した時に85に上がったよ』

『そっか』

『15階層のボスを倒してもあがらないでしょ』

『そうなんだ』

『一緒だ、じゃあハイウルフとハイオーガを倒そうね』

『うん、なあ、ハイオーガって?』

『うん、中級のハイオーガよりかなり頭が良いんだ、僕の時は3頭が連携プレイを取ってくるんだ、タンクとアタッカーとランサーみたいな役割だった。でも魔法は使っていなかったけど、連携がすごいよ、確か“オーガ3鬼衆”って言われてる』

『じゃあ、俺が隙を狙ってランサーあたりを先やっつければいいのか?』

『うん、連携体制に入る前の一瞬を狙って、懐に入ればランサーは倒せるから、それで数を減らせば行けるかな』

『わかった』

『ハイウルフは?』

『うん、僕の時は4頭に1頭ボスみたなのが増えただけ、僕が2頭見るよ』

『ありがと』

『どういたしまして』

 ついに16階層、ゆうがいるから15階層を簡単に突破できたけど、さすがに16階層初めてだし・・・緊張する

『かっくん、大丈夫?』

『うん、ちょっと緊張してる』

『大丈夫だよ、僕が付いているからね』

『ありがと』

 16階層に降りるとさっそくハイウルフ4頭が一回り大きなハイウルフを中心に陣形を取って構えている

 ゆうの言う通り

『ゆう、行く』

『うん』

 さっきとおんなじ、俺が2頭を倒している間に あっというまに2頭が炎に、残りはこのボス1頭

 さすがに迫力がある。

 後ろからゆうが「行け~」って、おい、そんなに簡単に・・・先ほど倒したハイウルフより強いのは間違いないだろう

 同じように、ぎりぎりまで走っていき、デバフをかけようとしたところ、交わされた。

 こいつ動いも速いけれど頭もいいんだ

 俺はあわてて、ハイウルフのいない方向に飛び跳ね、ハイウルフの方に向き直り、今度はハイウルフの横に向かって走り出す。

 ハイウルフは俺を追うように顔を向けた瞬間にゆうの氷の矢がハイウルフの目に、ハイウルフがグーっと沈んだ瞬間、向きを変え反対側に回って投擲用ナイフもう一方の目を、そのまま背中に回って首に特注の刀を突き刺す。

 ちょっと浅かったが、間髪入れず電撃、しびれたのがわかる。

 そのまま倒れたところに近寄り、鉈を首めがけ思いっきり振り下ろすと、今までのハイウルフのように切り落とすことはできなかったけれど半分までめり込んだので、首がぶら下がった状態に、ゆっくり崩れ落ちるようにしてうずくまった、やッと決着。

 ゆうなら簡単に倒せるだろうが、俺のレベル上げを考えて見守って、適宜フォローしてくれる

 これがなかったら倒せなかっただろう。

 それからも、迷いモンスターがいてもゆうが氷矢、炎矢、爆炎でとどめを刺してくれ、ついにボス部屋。

 2人でゆっくり歩いて中に入ると ハイオーガが3頭、オーガというより・・・本当に鬼?

『ゆう』

『行ける?』

『うん』

『かっくんが2頭ね』

『おお』そっかレベル上げには2頭なんだ……やるしかない。

 俺は頷いて、バフの3重掛け、相手はハイオーガ

 動きがかなり早いだろうから、ハイオーガの槍が届く直前、かがみながら懐に入り込んでデバフを掛けながら、横に擦りぬけ、ジャンプして背中に廻り、特注の胡蝶双刀で首の根本に突き刺す。

 俺の胡蝶双刀はオーダー物で普通の胡蝶双刀より細く長くして少し肉厚にしてあるので、刺しやすく、防御にも使え、扱いやすい、そして長い分、深く刺さるので電撃を流した時の効果が大きい。

 やっぱりオーガは動きが素早く力も強い、でも首に決まった!あれ?効いてない?

 一瞬戸惑ってしまい電撃を流す隙を与えてくれない。

 あわてて電撃を流さずそのまま下に潜り込んで足の腱を削り取る。

 ちょっとやばかった、人間と同じよう動きをする、いや、それ以上に素早くて力強いから、首が決まった!と思ったのに、電撃を流せなかった。

 戸惑ったその一瞬をついてきて、とっさに下に潜り込まなかったら俺がやられていただろう。

 それでも首と足の腱と切ったことはそれなりに効いたようで、膝をついたので、さっき刺した首に向かって鉈を思いっきり振りぬこうとしたが槍の柄でかわされてしまった。

 でもさっきの首の根本を刺したのがやはり致命傷になったらしく、そのまま崩れるように倒れた。これで1頭、ふ~っ。

 その間に、もう1頭をゆうが爆炎魔法で、下半身が黒焦げ、倒れ込んだところにその上から土魔法で大きな岩、上半身が・・・ぺちゃんこ、あ~コアが・・・・・・、

 残りはあと1頭

 こいつは他の2頭がやられたのを見てるから、警戒しているので奇襲は効かない。

 正攻法で、俺はひたすらハイオーガの攻撃をかわしながら、すこしずつ傷つけ弱らせていく、だんだん傷が深くなって膝をついた時 うしろに回って首に思いっきり鉈を振るが、すんでの所で交わされたが、なんとか肩にざっくり鉈がめり込だ、しかし筋肉?しめつけられて抜けない、硬い。

 今の俺のレベルではバフ3重掛けが限度、俊敏・俊足に3重掛けしているので、強化バフを掛けるには1つバフを外さなければならず、それではオーガに捕まってしまう。

 やはり鉈ではなくナイフを刺してそこに電撃を流し込めばよかったかな、と思いながらすぐに鉈を手放して、距離をとり、また同じように胡蝶双刀で傷つける。

 肩には深く食い込んだ鉈から、どくどく血が流れているから致命傷だと思うけど、やはりすぐには倒れないで両手で剣を振り回している。

 上級16階層のモンスターだけあって普通のハイオーガとは違う。

 徐々に弱っているのがわかるけど、なにがあるかわからないからできれば一気に片を付けたい、そう思っていると、さすがゆう、火炎魔法がハイオーガの脚を包む、膝をつき動きが徐々にゆっくりになって、ドッサリ倒れこんでとうとう動かなくなった。

 そのままうつ伏せに倒れ、炎も消えクスクス残り火のような音を立て両足が黒焦げのハイオーガ、

『やっぱり最後はゆうだな』

『いや、かっくんが肩に鉈を切り込んだおかげだよ』

『いや、あれ首を狙ったんだけど躱わされたんだ、最後のとどめはゆうだよ』

『ん~、私がやったのは足だけ、そこは連携プレイだよ』

『そっか、そう言ってくれるとありがたいよ』

 そう言ってるところでステータスを見ると、レベルが85に上がっていた

『ゆう、やったぞ、レベルが85になった』

『そっか、おめでとう』

『ありがとう』

『今日1日で2階層突破だね』

『うん』

『どうする?』

『うん、さすがに2階層は疲れたかな』

『そうだね、続きは明日にしようか』

『いい?』

『うん、いいよ』

『ありがと』こいつ、ほんとにいい奴だよね

 そのまま16階層の帰還移転用魔方陣に手を触れダンジョンの入り口にある移転部屋に戻る

『じゃ明日』

『あした』

 そう言って、ダンジョン入口で別れ、俺は一息ついた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る