絵を描け
「皆さん、疲れはとれましたか?それでは、これから第三ゲーム絵を描け、を始めます。ルールは簡単です。これから皆さんには、六つの色を作って、絵を描いてもらいます。そして、作れなかった色の数だけ脱落してもらいます。詳しいルールは、移動してから説明します」
放送が切れ、目の前が真っ暗になった。
しばらくして、目が覚めると目の前には、大きなキャンパスと窓が、理科室のような場所にあった。
「先程も言いましたが、詳しいルールは黒板に貼ってある封筒に入っています。それでは第三ゲーム、絵を描け、スタートです」
第二ゲームと同じ音のサイレンが鳴り、放送が切れた。
辺りを見渡すと、起きているのは俺と涼祐だけだった。
「竜さん、先にルールを確認しましょう」
涼祐がそう言うと、
「うん。そうだね」
と言い、黒板へ向かった。
黒板から封筒を取り、中から五枚の紙を取りだした。一枚目にはルールが、残りはすべて白紙だった。
「じゃあ俺がルールを読むね」
「お願いします」
そう言い、ルールを読み始めた。
「ルールその一
部屋の中にあるものはすべて使って良い
ルールその二
部屋から足が出なければ外に出ても良い
ルールその三
このゲームに参加出来るのは、今起きている人だけ
ルールその四
制限時間は一時間三十分
ルールその五
作る色は、赤・青・緑・黄・白・黒の六種類で、部屋にあるのをそのまま使っても、その色を作った事になる
最後に、時計は一周で一時間三十分だから気をつけて」
ルールを読み終えると、キャンパスへと向かった。キャンパスに着くと、隅々まで確認を始めた。
「竜くん、この青い紙変じゃないですか?」
キャンパスの裏側を見ていた涼祐に声をかけられ、急いで涼祐の元へと向かった。
「どうしたの、涼祐」
「ここ、見てください。一カ所だけ赤くなっています」
と、キャンパスの裏側に張られていた青い紙を、指で指しながら話し始めた。
「あー。ちょっと待って」
俺は涼祐にそう言い、蛇口で手を洗い、手が濡れたままで戻ってきた。
「竜くん。何をするの?」
涼祐に聞かれると、濡れた手を青い紙にくっつけた。
「これは塩化コバルト紙って言って、水を付けると青色から赤色になる紙なんだ」
と言い、紙にくっつけた手を離すと、手の形をした赤いマークが出来た。
「竜くん。これって、赤と青が作れたって事だよね?」
興奮したのか、いつもより元気に質問してきた。
「そう・・だね。早く切り取って、キャンパスに貼っちゃおう」
「うん」
そうして、俺は赤い紙を、涼祐は青い紙を切り取り貼る作業へと移った。
「「出来た」」
キャンパスの指定された場所に俺と涼祐で紙を貼り、二色を完成させる事が出来た。
「竜くん、次は何をしますか?」
「じゃあ次は・・・緑にしよう」
休む暇も無く、三色目の制作に取りかかった。
緑色になりそうなものを探しながら、理科室を歩いていると、涼祐が
「竜くん、これ緑じゃない?」
と液体の入った瓶を指差した。
「この液体は・・・BTB溶液か。よく見つけたな、涼祐」
「びーてぃーびー溶液?よく分からないけど、これで緑が作れるんだよね」
初めて聞いた単語に戸惑いながらも目的は忘れていなかった。
「BTB溶液はもともと緑色の溶液だから、これを何かにしみこませれば、緑色が出来るんだけど・・・」
どのように緑色を作るかを考えていると、放送が流れた。
「残り十分。残り十分です。では、引き続き頑張ってください」
全く時計を見ていなかった俺たちは、急いで色を付けられるものを探し始めた。
「涼祐、BTB溶液持ってきて」
「分かった」
何も見つからないまま、一か八かキャンパスに直接BTB溶液をかけようとしたとき、
「あっ」
声が聞こえ振り返ると、涼祐がBTB溶液をばらまいて、転んでいた。
「大丈夫?」
と涼祐に手を伸ばそうとした瞬間、目の前に緑色の紙が降ってきた。
「涼祐、ありがとう」
涼祐は状況がよく分かっていないようだったため、一人で紙をキャンパスに貼ろうとした瞬間に不気味なサイレンが鳴り響き、眠っていた四人が起き、放送が流れた。
「第三ゲーム、絵を描け、の結果は、六色中二色作ることが出来無かったため、二人が脱落します」
(俺たちが作ったのは赤と青そして緑の三色だけだったのに・・・あっ、そうか。だから四色なのか)
ルールを思い返していると、再び放送が流れた。
「今回脱落するのは・・・闇島竜成くんと対馬紅さんです」
放送が切れてすぐに床が無くなり、底へと落ちていった。
「紅、いる?」
「竜、無事?」
「うん。それよりもここは・・・」
落ちた先で、今の状況を確認しようとすると、後ろから足音が聞こえてきた。
「二人とも無事で良かった」
「では、これから第四ゲーム、私は誰、を行います。ルールは簡単。代表者一名が私の正体を当てられたら、ここでゲーム終了となり、皆さんの願いを叶えます。ちなみに、このゲームでは失敗しても、脱落者は出ません。では代表の人、私の正体は誰でしょう」
誰も答えようとしない中、零がホワイトボードにペンを走らせた。
[相馬蒼くん]
と書き、ホワイトボードを上に上げると
「残念でした。惜しいですが違います。それでは第五ゲームは明後日行うので、休憩してください」
放送が切れ、強い揺れが起こった。
揺れが収まり目を開くと、昨日まで六人でいたフロアに戻っていた。
[今日はもう遅いから、それぞれ部屋に戻って、明日話をしよう]
零がホワイトボードに書き三人に見せた。
「そうだね。今日はいろいろな事があったから、一人になって考えたいし」
涼祐が、零の意見に賛成すると
「涼が良いなら僕も賛成」
斗貴も零の意見に賛成し、二人は部屋へ戻っていった。
[麗も早く部屋に戻ってね]
ホワイトボードに書き、麗に見せると
「うん。また明日、お兄ちゃん」
そう言い、麗は部屋へ戻った。
(さて、僕も部屋に戻ろうか)
麗の後に続くように、部屋へ戻った。
翌日、食堂に零が向かうとすると
「零くん、どこに行くの?」
後ろから元気な声が響いてきた。
[食堂。一緒に行く?]
素早くペンを走らせ、斗貴に見せると
「うん」
と、二人で食堂へ向かった。
食堂には、すでに涼祐と麗がカレーを食べて待っていた。
「涼、お待たせ」
「遅いよ、とっきー」
「お兄ちゃん、遅いよ」
[ごめんね、麗]
半日ほど一人でいたせいなのか、会話が昨日よりも弾んでいた。
しばらくして会話が落ち着くと、
「ねぇねえ涼、第三ゲームどうだった?」
斗貴が涼祐に聞くと、
「それ私も知りたい」
と麗も話題に乗り、二人で涼の方を向いた。涼祐はしばらく黙ってから、口を開いた。
「目を開けたら、理科室のような場所にいた。そして、教室の真ん中に大きなキャンパスがあったんだ。その後は・・・あれ?思い出せない。みんなごめん」
思い出そうとしても、思い出すことが出来ずに、涼祐は下を向いてしまった。
「確かに思い出せないかも。僕も、第二ゲームのことを思い出そうとしたけど、全く思い出せ無かったよ」
「とっきー」
斗貴が、涼祐が思い出せないことをフォローするように言うと
「私も、第二ゲームのことを全く覚えてないかも・・」
麗も同じように、思い出せないと言った。
「お兄ちゃんは、第二ゲームのこと覚えてる?」
麗が、いつもとは真逆のトーンで聞いてきた。
[僕も覚えてないよ]
零がホワイトボードに書いた文字は、だんだんと薄くなっていた。
「みんな、今日はもう解散しよう」
麗が少し声のトーンを下げながら言った。
「そうだね。何か思い出したら、ここに来てね」
と涼祐が言うと、斗貴は図書館へ、涼祐は自室へ、麗と零は食堂に残った。
(この前、零くんに教えてもらった本面白かったから、他におすすめの本がないか聞いてみよう)
図書館で本を四冊手に取り、食堂へ向かった。
「お兄ちゃん、どうしてみんなに嘘をついたの?」
怒った声で、零に聞くと
(嘘はつきたくなかった。それでも、嘘をつかなきゃいけなかったんだ)
声には出していないものの、麗には伝わっているだろう。麗は涙をこぼし、再び聞いてきた。
「第二ゲームのこと、覚えてるの?」
今度は、怒りに悲しみが混ざったような声だった。
(それはー)
質問に答えようとしたとき、
「零くん。この中でおすすめの本はどれ?」
斗貴が零に声をかけ、零の返答を遮った。
「お兄ちゃん、行ってきて良いよ」
さっきとは対照的に、笑顔で言ってきた。
(ごめん。麗)
そう言い、斗貴と一緒に図書館へ向かった。
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