妹に何もしてやれなかった俺が今度こそ幸せにするまでは死ねない話

妹が欲しい不眠症

第1話 朝、目が覚めると……

 朝、目が覚めると枕元に誰かいるような気がした。

 そんな事気にせず再び夢の世界へ飛び立とうとした時、究極の2択を突きつけられてしまう。

 


「起きるか死ぬか選べ、バカ兄貴。」



 そんなことを言ってきたのは俺の1歳下の妹の赤石茜だ。

 茜はこの世に降り立った天使と錯覚する程可愛い。

 成績はあまり良くないが、身体能力はかなり高くこの前体力テストで新記録を出したそうだ。


 そして今年入学試験が難しいことで有名な俺の通う高校に入学した。

 苦手な勉強を頑張っていたので、兄としては誇らしい限りだ。


 そんな茜が大好きで、茜のすることならなんでも許してしまいがちな俺は世間一般ではシスコンなどと呼ばれるのだろうが悪いのは全て茜である。

 茜のあの反則的なまでの可愛さの前ではこの世の全てが無意味と化すであろう。

 もし上目遣いで「お兄ちゃん」なんて言われた日にはきっと萌え死ぬ。


 だがしかし、現実はそんなに甘くはなかった。

 俺を「ねぇ」や「ちょっと」と呼び、目があっただけで「なにこっち見てんのキモい死ぬ」などと言われる始末だ。

 でもまだマシだ。

 小5になったばかりの頃は話しかけても無視されててたからね。

 俺氏可哀想。

 


「俺の素直だった茜を返せよ‼︎」


「は?何言ってんの、あんたのな訳ないじゃん。」



 えぇっっっっっっ…………俺のじゃねぇ、だと‼︎‼︎

 う、嘘だぁぁぁぁぁぁぁ。

 ゲフンゲフン。

 まあ冗談はさておき元を正せば俺のせいなのだ。

 今話す気はないがいずれまた機会があればな……。

 おいおい、そうがっかりするなよ。

 多分いつかきっと…な。

 そういや俺誰と話してたんだっけ?



「いい加減起きろやこの愚図。」


「そうだ茜だった。いや完全に忘れてたわ。なんかごめん。」


「あ゛、私がわざわざ毎朝起こしに来てやってるのに……はぁ。」


「本当にいつもありがとう茜。心の底から感謝してる。あと言い忘れてたわ。」


「真面目過ぎて怖い。……で、何まだ何か用あんの?」


「おはよう。今日も可愛いよ茜。」



 そう言いつつ微笑む照。



「き、キモい死ね。この体目当てのど変態童貞が。」


「ぐはっ……。」



 傷心中であかねの声が震えてることに気が付かなかった。

 そして何より美少女からの罵倒は……。



「新たな扉を開いてしまうではないか‼︎」


「は?何言ってんのキモっ。」


「マジでやばい奴見る目はやめて。心が抉られるから。」


「…………………。」


「いや冗談だって。美少女からのマジトーンの変態は普通に心にきたから。」


「んっっっっっ………。」


「いやどしたの。顔真っ赤にして。あっ、もしかしておにーちゃんに美少女って言われたの嬉しかったのかなぁ〜茜たん。」


「あ゛、なんか言ったか。」


「いえ滅相もございません茜様。」



 妹が怖すぎる件。

 はぁ……昔は「照兄ぃ照兄ぃ。」ってどこ行くにもついてきて素直で可愛かったのになぁ〜。

 いや、もちろん今も可愛いけどベクトルの違う可愛さなんだよ。

 そういやスタイルの方は……。



「まぁ、その…あれだ……。」


「何か言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ。」


「成長期だもんな。あんまり気にするなよ。」


「貧乳で悪かったわね。」


「返答に困るんだが……。」


「あんたが先に振ってきたんじゃないの。はぁ……男ってどうしてみんな巨乳好きなのかしら。ち、ちなみにだけどあんたはどうなのよ。あ、あれよ…妹として兄の性癖は知っておかないとだし。」



 そんな質問に俺は頬が緩みそうになる。

 危ない危ない。こいつたまにこういうの投下してくるんだよなぁ。

 それはそうと、男に対する偏見に関しては聞き捨てならねぇな。


 だがまぁ多少凹凸の少ない体に対してコンプレックスがありそうなのでお兄ちゃんとして一応フォローしといてやるか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る