judgement night

kazn

序章

とある保育園の朝。出勤してきた前川みどりは、郵便受けに黒いビニール袋に包まれた物が入っている事に気づいた。

(...何?変なものじゃないわよね?)少し不安気に手に取るも、袋には宛名も何もない。その事に更に不安を煽られたみどりは園長に報告しようと足早に事務所に向かった。

「園長先生!」

挨拶もままならず、みどりの大きな声にびっくりして、園長の土田雅美はみどりに顔を向ける。

「おはようございます。どうしました?」

まだ、他の先生は出勤してはおらず、事務所には土田とみどりの2人だけ。みどりの右手に持たれた黒い包みは、土田の目にも入った。

「何ですか?それ?」土田はみどりに聞く。するとみどりは、

「郵便受けに入ってたんです!宛名も何もなくて...」話しつつ土田に駆け寄り、その包みを土田に差し出した。土田は静かに受け取り、袋の周りを注意深く見る。長方形の物である事はわかるが、中までは確認出来ない。ビニール袋の中に更に紙袋で包んである様な感触だ。黒いビニール袋はその固形物に沿って巻かれる様にクルクルと折られ、ガムテープで封をされていた。

「変な物だったらどうしましょう?」みどりはどうしてもネガティブな考えが頭から離れない。

「...」土田は神妙な面持ちで、ガムテープを外す。黒いビニールの中にはさらに茶色の紙袋が入っていた。土田はそれを取り出し、一旦机の上に置く。

「気をつけて下さいね。」みどりは淡々とかつ冷静に事を進める土田に感心して見入っている。紙袋は長方形に折り畳まれており、セロテープで止められている。土田は自分のデスクの1番上の引き出しに閉まってあるカッターを取り出した。セロテープをカッターで慎重に切る。慎重に紙袋の封を開け、中を覗く。

「えっ...」土田は何と言葉を発して良いかわからなかった。思わず口をついて出た言葉がそれだった。中の物をおもむろに掴み机に出す。

「えっ?」みどりもその言葉しか出なかった。恐らくは300万円だろう札束が机の上に置かれた。1束100万円と思われる束が3つ。

「えぇーーっ!?」みどりは純粋にビックリした。土田はそんなみどりを横目に、紙袋の底に入っていた一枚の紙を取り出した。そこには、手書きでこう書かれていた。

【この金はとある政治家の闇献金である。前途ある子供達にこの金を使ってほしい。judgement knight】土田はその手紙をみどりに見せた。

「...こんな事が...」みどりは驚いていた。土田も保育園勤めは長いが、初めての体験であった。

「警察に届けましょう。」みどりはコクコクとうなづいた。

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