永痴魔先生の小説講座
永嶋良一
1.小説講座が始まった
司会の姉ちゃんが頭から抜けるような声を出した。まだ若い。入社したてのアナウンサーに違いない。
「は~い。皆さん、お元気~。皆様のラジオ放送局『ラジオやりっぱなし』で、今日から始まりました『
登場っていっても、ここはラジオのスタジオだ。私は既に姉ちゃんの前に座っている。しかし、このラジオ番組では、私が舞台の袖から現れてゆっくりと演壇に向かうといった場面を演出したいようだ。
私は、頭の中で舞台の袖から演壇まで歩く時間を数えてから、厳粛な声を出した。
「はい。私が永痴魔です」
姉ちゃんの甲高い声が続く。姉ちゃんが眼の前の台本を読んでいるのだ。
「永痴魔先生は皆さんよくご存じの有名な小説家です。先生の書かれた、現代日本文学を代表する格調高い文学作品は海外でも高く評価されています。それでは、先生の代表作をいくつか皆さんにご紹介しましょう。永痴魔先生の代表作には・・
『オレは隣の姉ちゃんとやりまくった スッポン、スッポン、スッポンポン、もひとつオマケや、スッポンポン』、
『女子大生と変態おやじのエッチな甘い夜 ヘンターイ、止まれ』、
『五月のかほり 奥さん、あんたの匂い立つパンティー頂戴な』、
『姉ちゃん、ええ
『その美しい女性は、スッポンポンになって屁をこいた』、
『女子大生明日香の濡れたあそこに俺は熱いものをぶちこんだ。明日香は「ああ~ん、もっと大きいのを入れて」と言った。』
などがあり・・・はは・・・ははは。何、これ? いったい、どこが格調高いのよ? エロ小説じゃん。ははは」
姉ちゃんは腹を抱えて笑っている。私は「えへん」と一つ咳ばらいをした。姉ちゃんがあわてて話し出した。
「し、失礼しました・・などがあります。この番組は、そんな永痴魔先生を講師にお迎えし、永痴魔先生の書かれた素晴らしい小説を・・ぷっ、素晴らしいだって、ははは・・・題材にして・・ははは・・・皆さんに小説の書き方をお伝えするものです」
そこで、私はまた咳払いをする。姉ちゃんは一旦言葉を切って、息を整えた。
「し、失礼しました・・今日は第一回目の講座で、小説を創作するうえで非常に重要なオノマトペの使い方を永痴魔先生に説明していただきます。題材には、先生の代表作の一つで、先ほどご紹介しました『その美しい女性は、スッポンポンになって屁をこいた』を使用します。皆さんよくご存じのように、日本の小説界では『寝起き賞』と『ああ~食ったがな賞』が有名ですが、この作品は昨年の『寝起き賞』を受賞した名作ですね。では、永痴魔先生、まず、オノマトペというのは何でしょうか?」
私はゆっくりとマイクに向かって言った。
「オノマトペというのは、何かの状態や動きといったことを言語で表現したものですね。たとえば、風が『そよそよ』と吹くとか、デートの日は朝から『ワクワク』するといった言葉のことです。日本語というのは、非常にオノマトペが多い言語といわれていますので、小説を書く際にはオノマトペを上手に使うことが大変重要になるのです」
「なるほど・・・では、お手本として、先生の『その美しい女性は、スッポンポンになって屁をこいた』から、実際のオノマトペの使い方を見ていきましょう。まず最初に、この『その美しい女性は、スッポンポンになって屁をこいた』という作品には実に素敵な、格調高い、文学的なタイトルが付いていますが・・先生、この作品はどのようなお話なんでしょうか?」
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