ヒメコイ。

第1話・醜い

 元々、目が悪くて不愛想に見えて、見た目は控え目に言ってぽっちゃり。顔はどこにでもいるような顔立ち。ぽっちゃりのおかげで顔のパーツはお肉に埋もれてます。今日もよく埋もれてます。ほっといてください。これも個性です。

「うわっ…」

「何…?」

 目が合う度、何でお前いるんだよって顔されます。慣れました。過敏に反応し過ぎだと思います。こんな体型の方、たくさんいますし。むしろ中途半端感が満載な体だと思うんです。

「気持ちワル…」

「見るなよ…」

 でも、流石に毎回毎回そんな対応されるとこちらも復讐の言葉が頭を過ぎります。

 大人になって何もすることがなくなったら、一人ずつ普通に幸せな生活をブチ壊しに行こうかな…。

 そんなすさんだ心の整理をつける時、よく来る特別棟の校舎裏に、先約が。

小谷こや、どうしたの…?」

 同じクラスの大槻おおきくん。顔面偏差値高いで有名なヒト。くらいの認識です。

「どうもしませんよ」

「そっか…」

 食べる?と、何か渡されました。警戒心が強くなってる私は渡されたモノを反射的にね退けてしまい、結果、コンクリートの床に落としてしまいました。

「ごめんなさい…」

「いいよ。それは俺が食べるから。はい。コレ」

 差し出されたのは、幼い頃よく食べたスルメイカの甘辛駄菓子。

 あーん。って言うのであーんと返したら、口に入りました。

「美味しい?」

「はい…」

「でしょ?」

 学校での事を忘れたくて何かを食べて忘れる生活で、すっかり味覚は後回しになってたようで…。

 久々に、美味しく食べた…。泣きながら。

「泣くほど美味しいの??」

 頷いて、

「好き…大好き…」

「そんなに、か…」

「はい…」

「もっと食べる?」

「いえ、結構です」

 それが、大槻くんと仲良くなったきっかけでした。

「………」

「………」

 ある日、目が合うと気分の悪い事を言うクラスメイトは何も言わなくなりました。逆に、気持ち悪い…。

「小谷さん、ごめんなさい」

「ごめんなさい…」

 そして、謝る。

「あ。はい…」

 私は、空返事した。

 本当に謝る気はないのだろう。それなら謝るなよ。もっと自分の意志を持て。

「小谷、顔が怖い…」

「元からこんな顔です」

「寄ってる…」

 皺。って言って、大槻くんは私の眉間を触る。

「やめてください…」

「やめない。だって、スゴい目ヂカラよ?」

「そう…?」

 大槻くんのおかげなのか、前ほど学校へ行くのが億劫ではなくなった。

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