ねえちゃん、こうこうせいになる
「ちょっとあんたねえ、話聞いてなかったの!?」
オレはあおば小学校っていう、オレがいく学校のことばっかかんがえてたから…っていうかそういえばねえちゃんなんてとこにいくんだっけってきいたぐらいでそんなにどなることないとおもうけどー。
「もう、覚えておきなさい!天命学園よ、て・ん・め・い・が・く・え・ん!
それから、もうちゃんと教科書やノートに名前は書いた?いつまでもあると思うな親と金よ!」
「ちょっと勝美、落ち着いて」
「母さん、私は冷静だよ!母さんこそ」
あっ、ねえちゃんがママにひたいをたたかれた。
すんごいおとがする、なんかちょっとたのしいかも。
「勝美って祐二の事になると本当にこれだから……ちょっとは楽になったら?」
「わかったわかった、ゴールデンウィークになったら楽にするから」
「高校生活なんて一生に一度の体験よ、そんなにガチガチに凝り固まってたら楽しい訳ないじゃない。母さん、わざわざ損をしに行く必要なんかないと思うけどなー」
「………………………でも」
「だいたいね、これから小学生になるって祐二に対して私が死んだらどうするなんて言う突拍子もない言葉が理解できると思う?本気で頭を冷やした方がいいわよ」
「……………交通事故には気を付けてね」
ねえちゃんったら本気でがっくりしてる。
じぶんでは目いっぱいまじめなつもりでオレにちゅういしたはずだったのに、みかたになってくれるとおもってたママからこうやっていわれればあたりまえなのかもなー。
「祐二、勝美ったら高校生活が不安でちょっと怒りっぽくなってるの。悪いけど少し付き合ってちょうだい」
「私には不安なんかないよ、でも祐二が」
「祐二がって言うのをやめなさい、あなたはまだ15歳。世間的に見ればまだまだ子どもよ。自分の不安を他人のせいにするのは子どものする事よ」
「やっぱりねえちゃんも子どもじゃん、アハハハ!」
「祐二、静かに。今は勝美とお話ししてるんだから」
あっいけねえ、ごめんなさい。
「勝美、待ってたよー」
っていうかねえちゃんがいくこうこうの入学しきってはやいんだな、オレのいく小学校のより二日もまえじゃないか。
いざ入学しきにいこうとしたねえちゃんをふみかねえちゃんがげんかんでまってた。すっごくうれしそうだ。
「おはよう文香、今日はきれいね」
「あったり前でしょ、入学式なんだから!」
「ずっとそうしてくれると嬉しいんだけど」
「勝美、そんなんだと友だち増えないよ。美紅も私に言ってたよ、勝美をよろしくって」
「ああそうだふみかねえちゃん、かおるはげんき?」
「ボクはここだよゆうじー」
「あっかおる、もしかしてふみかねえちゃんの入学しきについてくつもりか?」
「駅までね。道のりを覚えるついでって事でさ、母さんにも頼まれて」
「祐二はダメよ……って言ったら文香、どう思う?」
「勝美、今の祐二君の格好ってそんなにみすぼらしい?普通の6歳の男の子ならそんなもんじゃないの?何も祐二君が入学式に行く訳じゃなし」
「そうね…………でももうちょいだけでもきれいにしてくれたら嬉しいかなーって、姉さんは思うんだよねー………」
「オレべつにいきたくない、っていうかねえちゃんめちゃくちゃいやがってるし」
「嫌がってないっての、ただねー、もうちょっとだけでも、ねえ……」
「勝美、入学式だってのにそんな調子でどうするの!もうちょっと大人になりなよ」
ねえちゃんったら、ふみかねえちゃんにおこられてるよ。ああなんかあたらしい。
「わかった、でも祐二今言ったでしょ、別に行きたくないって」
「頭ごなしにあんな事言われればそうも言いたくなるでしょ、もし私が見てなかったらどうしてたつもり?」
「祐二、大人しくしててね、お願いだから…………行くわよ、薫君。お姉ちゃんに迷惑をかけちゃダメよ」
「かおるは大じょうぶだよ、だってオレよりちゃんとしてるもん。そうでしょふみかねえちゃん」
「そうかなあ、祐二君は薫よりテキパキしてて」
「ちょっとこれ以上無駄口を叩いてる暇はないわよ、早くしないと遅れるって」
ふみかねえちゃんったら、けっきょくねえちゃんにひっぱられてる
「オレ、あんなにガタピシはるなんてできないよ」
「違うよ祐二君、ガタピシじゃなくて肩ひじって言うの、じゃあ行ってくるからね」
かたひじ?ふんふんなるほどこれはいいことをおぼえちゃったなあ、オレはまた一つかしこくなった。
ねえちゃんおかえり。ってあれどこいくの?っていうかさっきのパンパンっておとなに?
「洗面台。外から帰って来た時はちゃんと手洗いうがいを忘れずに。それからこの時期はまだ花粉が飛んでるから気を付けて!」
ああ、かふんしょーってやつ?パパは大じょうぶみたいだけどママは目をこすってることがある。オレはかんけいないけどね。
「あのね祐二、母さんが目をつらそうにこすってるの見えないの?外に出て薫君たちと遊ぶのはいい事だけど、ちゃんと手洗いうがいしないとダメよ。それからしあさってから小学生になるんだから、ちゃんと持って行く物を確認して」
ちょっとへんじをぐずったらまたこれ。
「ねえちゃん、4かい目だよそのことば」
「6回目よ。お正月と、2月の頭と、私が天命学園に受かった時と、3月の頭と、3月の後半と…日付があいまいでごめんね」
「それよりねえちゃんは大じょうぶなのかよ、あさってから学校でしょ」
っていうかオレいまてきとうにいったつもりなのにさ。
「発言には責任を持たないとダメよ、口から出任せで無責任な事ばっかり言ってるとだーれも信用してくれなくなるわよ。
祐二覚えてないの?祐二が幼稚園に上がった頃夜眠れなくってお話し聞かせてって言って来たじゃない、その時に母さんと私で聞かせてあげてた男の子の話、忘れちゃったって言うんじゃないでしょうね」
ああオオカミ少年ってやつ?でもさ、すくなくともさいしょのころはしんじてくれたんだろ?
「もしずっと、しぬまでずーっとほんとうのことしかいえないってなったらオレそんなのやだうお」
「それはちょっと難しい話なんだけどね、嘘でもいい嘘と悪い嘘があるの。そうかなあ、相手にいい思いをさせるためにつく嘘ってのがいい嘘で、相手を嫌な気分をさせるためにつくのが悪い嘘、って言うのが私の考えなんだけどね。これはあくまでも私の考えだから本当は違うのかもしれないけどね」
オレはねえちゃんのいったことにたいしてすんなりそうだよねっていう気分になれなかった、まちがってるなんてぜんぜんおもえないのに、なぜなんだろう。
でもママにいうとねえちゃんにすぐもれてまたくどくどいわれるからいえないし、かおるやふみかねえちゃんなんてもっとだめ。
まあふみかねえちゃんはねえちゃんのともだちだからこそいいたいこともすきなだけいえるんだろうけど、だからといってなんでもかんでもぽろぽろいうのはやめてもらいたい。
ねえちゃんもねえちゃんで、おにごっこがおもしろくってほんの20ぷんほどかえってくるのがおくれたぐらいであんなにこわそうなかおしなくたっていいじゃないか。
「とにかく、基本的には嘘をついちゃダメって事なの。まあそれも含めてだけど、他の人から見て嫌な奴だなって思われるような事をしちゃダメよ。薫君たちと一緒に遊ぶ時もちゃんとルールを守らなきゃダメよ、薫君たちが怒っちゃって遊んでくれなくなったら嫌でしょ?ねえ、わかるわよね祐二はもう小学生になるんだから」
「………ねえちゃん、カバン下ろしたら?」
「ああいけない、全く祐二の顔を見るといつもこうなのよね私…まあ今度からは気を付けないとね、私も今日から高校生なんだから………」
ねえちゃんはまたくらそうなかおをしてた。
入学しきっておめでたいことのはずなのになー、パパもママもふみかねえちゃんのママもそういってたのに、どうしてあんなかおになっちゃうのかなー。
「そう言えば勝美、あなた部活ってどうするつもり?」
「料理部」
ねえちゃんのかおがようやくやわらかくなったのは、おひるごはんになってからだ。
「ぶかつってのは学校でじゅぎょうをうけるのとべつにいろいろすきなことをするっていうやつだったっけ?」
「そうよ祐二、私は料理が好きだから料理部に入る事にしたの。祐二も、ちゃんとご飯食べなさい」
オレにはわかる、わたしとおなじこうこうせいになったらどうするべきかかんがえておきなさいっていおうとしてねえちゃんは口をとじたんだ。
オレがねえちゃんにかったきもちになってにやにやしているとママがゆうじったらずいぶんおいしそうにたべてくれてるのねってほめてくれた、ちょっとちがうんだけどまあいいか。まあほんとうにおいしいからどんどん入っちゃうんだけどね。
「祐二、お願いだからもうちょっとだけゆっくり食べてくれると」
「料理が冷めちゃうわよ」
ああまたねえちゃんのかおがゆがんだ、ほんっとねえちゃんってわらわない。
いっつもニコニコしてるのとむすってしてるの、どっちがみててきもちがいいかオレでもわかりそうなのにどうしてねえちゃんはわかんないんだろう。
ねえちゃんがそんなくらそうなくうきを出してるからオレもはしがうごかない。ねえちゃんもねえちゃんでようやくのろのろとはしをうごかしてる。
「ちゃーんとよく噛んで食べないと、いけないからね太るの嫌だし」
どこがふとってるんだよねえちゃんってふみかねえちゃんよりずっとほそくてきれいじゃん、ってオレはいおうとしたけどやめた。
ねえちゃんはいま、ひっしにがんばってるんだから、それをじゃましちゃいけないっておもったから。なんとなくだけど。
「じゃ行って来るから!」
ねえちゃんがかようてんめいがくえんってとこの入学しきから二日あと、オレのかようあおば小学校の入学しきの日がやってきた。
それなのにねえちゃんはめちゃくちゃドタバタうるさくて、オレよりずっとはやくいえを出てった。まるでオレとかおをあわせたくないような、オレからにげるようなかんじでいえから出てった。
ママはきょうからもうふつうのじゅぎょうがはじまるからいきなりちこくするのはやだなんだろうなっていってたけどさ、あんなにいそいで出たらかみのけとかせいふくとかどっかみだれてるかもしれないよ、それで何かきょうかしょとかノートとかわすれてるかもしれないしとおもってねえちゃんのつくえの上をみたけど、なんにもわすれてない。
おんがくのきょうかしょがおいてあったけど、つくえの上にあるじかんわりってのをみるとおんがくのじゅぎょうはどうも金よう日しかないみたい、それじゃねえちゃんがもってかなかったのもあたりまえだよねー。っていうかねえちゃんってほんとうすごいや、あんなにドタバタしてたはずなのにこんなにきっちりしてるなんて。
そんでママにつれられてやってきたあおば小学校、さくらっていうきれいなお花がいっぱいさいていた。まあほんとのこというときょねんもみてたんだけどね、そのとき上むいてさくらの花ばっかりみててねえちゃんにどなられたからお花についてはあんまりよくおぼえてないんだけれど。
でもことしのさくらはよーくおぼえられそうだ。
なにせ、さくらの花びらがはなに入ってくしゃみをしちゃった女の子をみたから。ねえちゃんにいったらどんなおぼえかたをしてるのよとかいわれるとおもうけど、オレはべつにそれでなんのもんだいもないとおもってる。
で、入学しきって、しょーじきつまんない。こうちょー先生っていうおじいさんがきみたちはなんとかかんとかっていってるけど、いみがあんまりよくわかんない。オレのたんにんのふじもと先生とかっていうおじさんいがい、先生もあんまりおぼえてない。
気になってたのはけさ、ねえちゃんがきょう、なんであんなにあわてふためいててんめいがくえんってとこにいったのかってことばっかり。もしかしてぶかつどうってのがはじまるからねえちゃんあんなにいそがしがってたのかな。
「ぶかつどうがはじまるのはらいしゅうからだってねえさんいってたよ、ねえさんが入るまんがぶとゆうじのねえさんが入るりょうりぶじゃちがうのかもしれないけど」
かおるはそういってたけど、オレにはどうもなっとくいかない。ねえちゃんはいったいどうしちゃったんだろう。
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