正夢

健さん

第1話

俺の名は五木進一。幼稚園からずっと一緒で今でも仲がいい親友がいる。森ひろしだ。仕事は違うが、お互い時間を作っては、釣りをしたり、ボーリングしたり、行きつけの居酒屋に、よく飲みに行く。ある時、俺は夢を見た。ひろしが、交通事故にあって、病院に運ばれたのだ。俺は、やつが寝ているベットの横にいる。すると、医者が、「今夜が”ヤマ”です。」と、言った。ひろしは、苦悶の表情で、呻き声をあげている。(おーい!ひろし!ひろし!)ん?ん?何だよ。となりで寝ていた女房の秀美が、俺を起こした。「何だよじゃないわよ。うなされてたわよ。」「夢か?汗びっしょりだ。変な夢みたな~。ところでひろしは、どうなったかな?」「あなたの夢のことなどわかるわけないでしょう!」「大事なところで起こすなよ。もう一回寝よ。」俺はすぐに夢の中へ引きこまれた。ん?ん?ここはどこだ?見た事のある川だと思ったら近くの広瀬川だ。家から歩いて15分くらいのところにある川だ。その広瀬川に俺は釣竿?片手に浅瀬をなぜだか歩いている。周りをよく見ると、向こうの岸に誰かいるぞ。ひろしだ。その隣にいる女は?見た事ある女だな。「おーい!ひろしここで何やってるんだ。」「お前こそ釣りか?」「まあね。お前今日子という奥さんいるだろう?誰だその女は?お前の彼女か?」「お前忘れたのか?中学の時の同じクラスだった雅子だよ。」「雅子?なんでここにいるの?っていうか確か白血病で亡くなったはずだが、、、。」まあいいや、俺も今そっち行くよ。そして向こう側の岸に渡ろうとした時、「あなた、早く起きてよ!会社遅れるわよ!」またしても、起こされた。(いいとこだったのに。もう!)それから何日かしてひろしと会った。「進一、この前さあ、変な夢みてさあ。」「変な夢?」「交通事故でお前が病院に運ばれて、、」「運ばれて?それで?俺死んじゃった?」「残念だけど、命に別条はなかった。」と、ひろしが、ふざけ半分に言った。「あー、何だよかった。偶然だな。俺も見たんだ。お前も交通事故で病院に運ばれたんだ。全く同じ夢だな。」「それで、俺どうなった?先生は、今夜がヤマだというところで、女房に起こされたんだ。」「いやあ、気になるなあ。俺どうなったのかな?ヤマって?死んだの?」「まあ、気にするな、ただの夢だから。ついでに、そのあと二度寝したら、今度は、広瀬川で、お前と中学の時の同級生の秋目雅子がいて、俺は釣りしてたのか、そのあと、お前らのところに行こうと思ったら、またしても女房に起こされた。」「秋目雅子ってたしか白血病で死んだよな。何で俺と一緒にいたの?別に付き合っていたわけでもないのに。中学の時、話した記憶もないのに。」「所詮、夢の中の話だからよ。気にするな。」と、俺はなだめた。するとひろしは、思い出したかのように、「広瀬川で思い出した、確か今日花火大会だな。これから近くに駐車場もあるから、車で行こうか。」「夢のこともあるから車は、よそうぜ。歩いて行こう。」そして、俺たちは、国道を歩いた。すっかり夕方だが、車少なく渋滞していなかったが、後方から、大型トラックが、俺たちに向かって突っ込んできた。俺たちは、”餌食”になってしまった。あとからわかったことだが、酒酔い運転だった。ん?ん?ここは?広瀬川?雰囲気が少し違うな。お花畑?向こうの岸に見えるのは、夢と全く同じだ。ひろしと、雅子だ。よ~し今度こそ”そっち”行くぞ。待ってろ。すると、ひろしが何やら叫んでいる。「こっちに来るんじゃない!早く帰れ!」って言って河原の石を投げてきて俺のこめかみに命中した。そして目が覚めたらそこは、病室のベットだった。どうやら俺は、助かったようだ。「ひろしは?」側にいた秀美に聞いた。秀美は首を左右に振った。(え!!死んだのか?)今のは、三途の川だったのか。俺が見た夢は、まさに、正夢になったな。ひろしが死んだのも運命、宿命だったかもしれないな。でも、今考えると、正夢になったってことは、あの時、秀美に起こされなかったら、完全に向こう岸に渡っていたに違いない。そしたら今頃、ひろしと一緒だったろう。雅子?どうしているの?そうか、ひろしを迎えに来たのかもしれないな。俺は、秀美に向かって言った。「秀美、退院したら、前から欲しがっていたグッチのバックプレゼントするよ。」秀美は、思わず自分の頬をつねった。

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正夢 健さん @87s321n

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