第五話 エレナの言葉と真実
「レウル、少しでいいから話を聞いてくれないかな?」
「話?」
「うん、ウルスラの事なんだけど」
「その事なら断ったはずだよ、人族の子供を殺しておいて魔族の子供を助けろなんて到底納得できない」
どんな理由があろうと、命令をくだしたのは彼女だ。
老若男女、抵抗できない人間を無差別に殺した奴のいう事を聞き入れる事など到底できるはずもない。
「レウルは誤解してるよ」
「誤解?」
「うん、レウルはリーア村って知ってる?」
その名は僕も知っている村だ。
業火の中、無残に殺された村の人達を魔族が笑って見ていたのを覚えている。
「覚えてるよ、その魔族達は僕が全て殺したんだから」
光景を目にした瞬間、僕は魔族全てを見つけ次第殺した。
そこにいた魔族全てを駆逐した事と皆を守れなかったことを後悔し続けていたのだ。
「それについては私も本部にいたわ、レウル・ラーガスによって全滅という風に報告を受け、後日私はその場を訪れた。 その光景は悲惨そのもので私が報告すると、当時任せていた隊長をウルはその場で殺したの」
エレナは嘘は言っていない。
否、彼女はこういう事に関して嘘を言う性格ではない。
今の話が真実であれば、彼女も言うべきだ。
「何で彼女はそれを言わない? 言ったら僕だって快く受け入れたのに」
「彼女って何でも背負おうとするの、だからあの件も自分が至らなかったと思ってるんじゃないかな」
「面倒くさいな」
「本当にね」
背負いすぎる奴はどいつもこいつも面倒くさい。
とはいえ、一度彼女とは話をする必要がある。
ノウェムが戻ってきたら伝えてみるか。
そうしてしばらくしてノウェムが戻ると僕はウルスラと話したいと申し出た。
ノウェムから通信魔法でウルスラに伝えたと聞いてすぐに空間が歪み、その中から現れた。
空間魔法使えたのか。
「私に用って何の用かしら?」
腕を組んで彼女はそう言った。
なんで喧嘩腰なのだろう?
思い通りにいかないから怒っているのだろうか?
「さっきの件の問いの続きだ。 お前自身は無抵抗の人間を殺したことはあるか?」
「ない、そんなのは絶対にありえない。 無抵抗な相手をいたぶる趣味は私にはないわ」
嘘は、ついてなさそうだが……。
魔族は嘘を吐くと言われている。
まぁ
だが、魔族の子供達には罪はない。
彼女の言葉が嘘だろうと、子供には罪がない。
戦いに巻き込みたくないという思いは痛い程わかるからだ。
「信じていいんだな?」
「魔王として誓うわ」
「子供達を受け入れる為に少し準備したい、二週間ほどくれ」
「いいの?」
「子供には罪はないからな」
「感謝する」
そうして少しして三人は帰っていった。
「よかったのですか?」
三人が返ると、ラナが問いかけてきた。
「駄目だったか?」
「いえ、ですが信用できるのですか?」
正直信用できるかと言われれば否だ。
あの答えを出した理由はエレナが言うからだ。
ウルスラを信用したのではなく、エレナを信用したのだ。
「信用する、駄目か?」
「いえ、ご主人が言うのならこのラナーク、従うのみです」
「他の奴はどうだ?」
僕の後ろにいたレティシア・レイン・ベル・ミリア・セリスに問いかける。
レティシア「私は、兄様がいいならいいよ」
レイン 「勝手にすれば」
ベル 「レインはいいってさ、私もいいよお兄ちゃん」
ミリア 「私も構わないわよ」
セリス 「私も構いません」
「皆、ありがとう」
そう言って僕らは家に戻った。
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「初めまして、僕はレウル……この屋敷の管理人をしている。 皆、よろしくな」
僕がそう言うと、3~14歳くらいの少年少女達が「よろしくおねがいします」
と元気よく挨拶してくる。
総勢23名、現在僕が預かれる数の限界だ。
魔族の3歳くらいの見た目と言っても魔族は人族の約二倍は生きていると言われている。
大体魔族の平均寿命は200歳前後だ。
平均と言っても魔王等、強力な魔力を持った奴は、その魔力が大きければ大きい程長生きする。
「それじゃあ、皆案内するから、年上のお兄ちゃんお姉ちゃんと手を繋いでいこうね」
加奈という女の子がそう言うと、彼女を含め10~14歳くらいの少年少女たちは小さい子達の手を繋ぐ。
一人余るが、この中で一番しっかり者で他の子がはぐれないように監視してもらう役目としてあらかじめ案内は済ませてある。
皆の遊ぶ場所と食事処と屋敷を案内する。
この屋敷は来客用にと元々、住み初めの頃から建てていたのでそう時間はかからなかった。
真ん中は広場になっており、噴水などを作る予定だったが子供たちが遊べるように更地に変更した。
「以上で、ここの案内は終わり、次は二人一組で暮らしてもらう」
ウルスラから前もって決めてもらい、僕は部屋分けを発表した。
子供達の部屋に班分けをして各自自由時間として僕は一旦自分の家へ帰ることにした。
「何でお前らがいる」
目の前にはウルスラ・エレナ・ノウェムの三人がいた。
「お邪魔してま~す」
「不法侵入」
「固いこと言わない~」
ノウェムが口に人差し指を当てながら言う姿は可愛いが、そんなことでうやむやにはしない。
「出ていけ」
「えぇ~、こんな可愛い子を外にほったらかすなんて~、襲われちゃってもいいの~?」
両手を顔に当てて可愛い子振る彼女に少しドキッとしてしまった。
「大丈夫だ、外には魔物が居ないから」
「あれあれ~、照れてる~可愛いなぁ~」
ノウェムは悪戯っぽい顔で僕を見る。
「う、うるさいな! お前ら毎日毎日来やがって!」
「えぇ~、私達が来て嬉しいくせに~」
「いい加減にしなさい、レウルの女性耐性がもう限界よ」
エレナがノウェムを嗜めるように言うと、何かを見透かしたような顔でエレナを見つめる。
「えぇ~、それはエレナもじゃないの~?」
「何の事?」
「そ・れ・は~、むごっ!?」
何かを言おうとするノウェムの口を塞ぐエレナ。
もごもごと口を動かすノウェム、心なしか苦しそうだ。
「エレナ、死ぬぞ」
「あ……」
僕がそう言うと、ノウェムの口から手を離すと、彼女は呼吸をしようとして
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