レティシアの最後

「それで、その大精霊様はどうして死んだんだ?」


 大精霊となれれば、その辺の冒険者や敵にでも後れを取ることはない。

 契約者が死ねば、契約は解除されて自由の身になるか、契約者と運命を共にするかだ。


「彼女は、契約者と運命を共にしたわ」


 という事は契約者の寿命……この世界の運命の契約者と地位と名誉を捨てて命を共に天へ消えたのだ。

 それは、いい最後だっただろう。

 誰に殺されたわけでもなく、安寧な最期を迎え大好きな契約者と共に旅だったのだから。


「愛されてたんだな、そいつは」

「そりゃ~、もう相思相愛って感じで、羨ましいくらい」

「お前もそういう魔族がいるんじゃないか?」


 魔王であり、孤高の存在……憧れや恋心を持つものだって少なくないはずだ。


「いない、そもそも私はそんなにモテる方じゃない」

「意外だな、モテそうなのに」


 正直、彼女の性格は一言で言うなら真面目だ。

 己の信念に常にまっすぐで、気が付いていないだけでモテそうな部類ではある。


「喧嘩を売ってるのか?」


 ウルスラは僕を睨む。

 何か気に障る事でも言ったのだろうか。

 

「魔族の中で一番モテるのはカノンだぞ?」

「あの子が?」


 正直、意外だった。

 少ししか会話をしていないが、どこか彼女はお堅いイメージがあるのだ。


「言っとくが、君の前では人見知りと敵意だ」

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