微精霊の優しさ

「泣いてるのですか?」

「泣いてないよ、どうしてそう思ったんだい?」

「何だか、とても悲しそうな顔をしています」

「まぁ、悲しいことはたくさんあったね……こんな世界だ、何かしら悲しいことはあるだろ?」


 そう言うと、服の袖を引っ張る。

 しゃがめという事だろうか。

 背伸びをしながら僕を見ている。

 しゃがむと、僕の頭に小さな手を乗せる。


「何してるんだ?」

「こうすれば、少しは悲しみが晴れると思って……違った?」


 彼女の純粋な励ましに癒されないことはない。


「いや、少し心が晴れたよ……ありがとう」


 微精霊に感謝を伝えると、彼女は嬉しそうな顔で見る。


「私も悲しい時や辛いとき、お姉ちゃんにやって貰ってるから元気なってよかったです」

「精霊にも姉妹がいるのか?」

「しまい?」

「いや、そんな概念はない……彼女がその精霊を慕っているだけだ」


 微精霊の代わりに精霊王が答える。


「そうか、大切なんだな」

「はい! 私にとって大切な家族です!」

「大切にしろよ」


 用が済んだので僕は精霊王に挨拶してこの場を去る。

 

「少し待て勇者」

「なんだ?」

「二人で話がしたい、席を外してくれ」

「あ、はい! わかりました」


  そう言うと、微精霊はその場から消え去った。


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