精霊王から勇者へのお願い

「頼みがある」


 精霊王からの頼み、それは恐らくとても重要なのだと……見えなくとも声色で真剣な事だと感じた。


「僕に出来る事なら」


 断る理由もなのでそう答える。


「そうか、ではあの微精霊についてだ」


 だから微精霊を離れさせたのか……。

 彼女がいては話せないという事だろうか。


「精霊とは微精霊の前段階なのは知っているな?」


 微精霊は精霊になる前の姿、魔力で身体が確立する前の存在だ。

 微精霊は精霊王から名前を与えられて魔力が数段階上がって精霊となるが、魔力が少なければその微精霊は世界に確立することが出来ず、霧散するそうだ。


「ここに来たのも何かの縁だろう、良ければ 微精霊あの子に名前を与えてやってくれないか?」

 

 それ即ち、微精霊あの子と契約してくれという事だった。


「あの子は私では、恐らく……だから其方にお願いしたいのだ」

「貴方でもできないのに、僕で大丈夫なのでしょうか?」

「大丈夫、確証はある……やってくれるか?」

「やってもいいですが、彼女の意思を確認したい」

「彼女ならいいといってくれ……」

「それは貴方が精霊王ですから、微精霊にとって精霊王のいう事は絶対だから面と向かって断れないですよ」


 微精霊は精霊王の魔力の集合体、いわば生みの親だ。

 断れるわけもない。


「なら、どうすれば……」

「僕は三日ここに泊まる、その間に彼女と話をさせてくれ……あと、契約の件については絶対に話さないでください」


 三日ぐらいの帰還遅れ、不都合はないはずだ。


「わかった、案内は微精霊に任せよう」


 微精霊が再びその場に現れる。

 

「話は伺いました、宿舎へ案内いたします」


 そう言って僕は微精霊についていくのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る