三流ゴシップ誌トップインタビュー『ピューリッツァー賞写真家石川信光ヌード写真&独占インタビュー!』

--石川さん。今日は独占インタビューありがとうございます--


「ありがとう。ここでヌード写真を撮っていたのが昔のようだわ」


--今では世界が認めるピューリッツァー賞写真家ですからね。今回はこちらのヌードモデルを撮りながらのインタビューとなります--


「いいねぇ。そういう下世話な空気は私も好きだわ。賞とって名前は売れたけど、高尚なのを求める客も増えてね。こういうのが無性にやりたくなるのよ」


--うちのヌード写真を含めて3000人ぐらい撮っていますよね?--


「没になったやつや名前を出せない仕事のやつも入れると倍は撮ったわね。しかし、今はモデルが美人さんになったわねー」


--アダルトビデオとのタイアップでそっちの女優が増えましたからね。向こうも名前が売りたいし、こっちも良いモデルが勝手にやってくると--


「いいねぇ。またそういう仕事をしたくなってきたわ」


--女遊びは今はやっているんですか?--


「これがねぇ。有名になると勝手に美女が寄ってくる。そうなると燃えないのよ。綺麗なだけの女はごまんといる。けど、写真に写る一瞬を美人にできる人間は本当に少ない。この手の仕事の性よね。ファインダー越しで見る女の方が生身の女より良くなってきた訳」


--うらやましい限りですよ。今の仕事はどういうのを撮っているんですか?--


「仕事も向こうからやってくる始末。やれファッション誌のモデルだ、やれ週刊誌の表紙だ、やれ映画のピンナップだ……最近は好きな女の裸を撮る時間すら作れなくなりつつあるわよ」


--じゃあ、うちの仕事は渡りに船だった?--


「そういう時にこの仕事を投げてきた編集長を褒めてあげなさい。あの人は私がペーペーの頃からの付き合いなのよ。断れるわけないじゃない」


--この業界に入ったきっかけは?--


「まぁ、単純で女が好きだったこと。まだアダルトビデオなんてのが普及する前の時代でポルノ映画が全盛の青少年時代、映画館は入れる年じゃないが映画館のポスターは見ることはできて、それで興奮していた訳」


--で、それを撮ろうとこっちに?--


「もちろん食える訳もなく、最初はバイトしながら仕事をしていたわね。だが、時代が良かった。バブルと同時にビデオが普及しアダルトビデオが増えた。つまりパッケージ撮影が莫大に増えたのよ。あれの撮影ができる人間は少ないの」


--どういう事です?--


「写真家を雇う金もコネもないからメーカーの連中は最初自前で撮っていたの。そういう所に営業に行って散々裸を撮らせてもらったわけ。結果、女を撮らせたらそこそこ有名になり、生涯を賭けて撮りたいモデルに出会った」


--それが、今話題の桂華院瑠奈公爵令嬢な訳ですね--


「ああ。芸術家の戯言に『これをするために生まれた』なんてのがあるけど、まったく信じていなかったわ。彼女を見るまではね。最初は帝西百貨店のモデル撮影の打ち合わせで出会ったんだけど、向こうが用意したモデルよりも明らかに素材が違っていた。今でも覚えているわ『この子はこの百貨店の将来を決める』と言った私の言葉への返事『帝西百貨店はこの人に賭け、この人は私に賭けた。見る目がある人みたいだから、私達も賭けましょう』と」


--で、あれ以降帝西百貨店キャンペーンガールとして一気に人気が爆発したんですよね。TVに映画に大活躍。そろそろあの写真の話を聞いていいですか?--


「ああ。多くの人間の運命を変え、歴史が変わった九月十一日の写真ね?あれはいまだにタイトルはつけられないわね。ちなみに、あの写真は世に出すつもりはなかったのよ」


--そうなんですか!?--


「ええ。私もあの時呆然としていた。けど、体は自然と構えてあの一枚を撮っていた。帰ってフィルムを現像して初めて気づいたわけ。その日のうちに貴方の所の編集長に見せたわ」


--どうしてなんです?--


「この一枚が時代に、歴史に残る一枚になる事は私も編集長も理解していた。けど、それを出す勇気が私にはなかったの。私はただ女を撮っていただけの写真屋で良かった。それなのに、時代に残る一枚を撮ってしまった。それを送り出す事が怖かったのよ。貴方の所の編集長が今までで一番真剣な目で私を叱ってくれたわ。『これを世に出せ。それはお前の運命であり、俺はこの運命を世に出す為にこの仕事をしていたんだ!』ってね。三流ゴシップ誌の編集長のくせに、ちゃんとジャーナリストだったんでしょうね」


--具体的にどういう経緯で世に出たんでしたっけ?--


「あまりにも歴史的な一枚をここから送り出すには格が違い過ぎたわ。編集長は同じ出版社の週刊誌の編集長を叩き起こして彼にその一枚を見せた。その週の週刊誌の表紙となって、あとは言うまでもないでしょう?」


--で、写真家石川信光の今に至ると--


「編集長の判断は間違ってはなかった。それは私も分かっているけど、内心悔しかったんでしょうね。この一枚をここから出せなかった事を。私も編集長への恩は忘れていないから桂華院瑠奈公爵令嬢のヌード写真を撮ったらここに載せるって決めているのよ」


--いいですね!その時はトップ空けて待っていますよ。けど今をときめく桂華グループの公爵令嬢に『ヌード撮らせろ』と迫っておとがめなしなのは石川さんぐらいなものですよ--


「言い続けると、けっこう効くみたいで、最近あの子のガードが下がっているのよね。水着写真まで来たからヌードまではもうすぐ……」






「このゴシップ誌出版前に全部買い占める事になったんですけど、何か言い訳はあります?先生?」


 頭にオコマークをつけて写真家の先生を詰問する。

 なお、買い占めの決定的理由はもちろんヌード云々である。特に『成田空港テロ未遂事件以降、明らかにヌード撮影OKの空気が本人以外からそれとなく伝えられていた。これはあんな危ない目に合うなら、色恋沙汰の方がはるかにまし……』という先生のお言葉なのは間違いはない。

 なお、読んだ私は呆然としつつも、たしかになぁと納得した。

 という訳で、オコも演技ではあるが、こうやって怒る事をしておかないと面子というか、そのまま裸にされそうなので。


「全部綺麗に買い占めてくれたんでしょう?

 良かったわ。あのゴシップ誌来月休刊予定なのよ。編集長以下編集部も最後の花道が飾れたわけね」


「あー。確定でヤバい情報を書かせて、こちらにリークして買い占めさせたって訳ですか」


「雑誌が全部売れるならば、一人でも構わないって訳。

 大人になるとこういうずるさも身につけるの。覚えておきなさい」


 そんな事を笑顔で言うから、怒るに怒れない私が居た。

 これで終わればイイハナシダッタノニナー


「という訳で、瑠奈ちゃんのヌード撮影だけど……」


「帰れ!!!」




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いい加減にあの写真家の名前をつけようという回


2004年のAV事情

 及川奈央がこの年実質的引退。

 早坂ひとみは現役。

 小沢菜穂も現役。

 あ、性癖ドストライクだった綾乃梓は2004年デビューなのか。


 このあたりから飯島愛から始まるAV女優のTVタレント化が本格的になりだす。

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