月刊経済誌財閥 2003年10月号特集 樺太疑獄と桂華グループ組織再編と株式上場のタイムスケジュール 続き

桂華電機連合--負け組からの脱却に向けて重くのしかかる内部闘争とのれん代--


 米国IT企業買収の台風の目として注目を集めているのが桂華電機連合だ。

 立て続けの大型買収を決めただけでなく、国内ではゲーム企業数社を手中に収めて業界再編を促している。

 とはいえ、その真価が問われるのはこれからだと関係者は語る。


「元々桂華電機連合はITバブルの負け組連合という側面があるのは否定できません。

 その為に規模を大きくして新技術開発と生産の投資ができるようにという訳ですが、そうなると今度は中の派閥が足を引っ張るでしょう。

 米国内の事業規模の急拡大によってカリン・ビオラCEOは現地でリストラに奔走することとなり、不在の間に国内の旧古川通信と旧四洋電機が水面下で激しくさや当てを繰り広げています。

 規模と帝国電話との繋がりから旧古川が主導権を握ろうとしているのに対して、小型液晶シェアNo1の巨額の稼ぎ頭を持つ旧四洋が激しく抵抗するという感じです」


 事実、携帯電話の爆発的流行に対応できた旧四洋の小型液晶は業界を席巻しており、カリンCEOの次の椅子は旧四洋から出るのではないかという憶測も流れている。

 一方で、米国での巨額買収は桂華電機連合に多額ののれん代を背負わせることになる。

 米国IT業界に詳しい有識者はインタビューに答えてくれた。


「巨額買収を繰り返した桂華電機連合は多額ののれん代を抱えることになり、その償却は大きな問題になると思います。

 桂華電機連合は、旧四洋と旧古川が合併した上で旧ポータコンを買収したという形になっているため、北米事業を統括する旧ポータコン側にこれらの買収企業をくっつけてそこでの処理という形に留めようとしています。

 要するに、米国会計基準と日本国内の会計基準の違いをうまく活用してのれん代を償却しようとしている訳です。桂華電機連合の首脳陣もそのあたりは理解しているみたいですね」


 桂華電機連合は収益の一部を自社株買いに当てる事を発表。桂華金融ホールディングスと三千億円のコミットメントラインの設定する事を合意しており……



桂華鉄道--桂華グループの本命?上場予定なしに潜むバブルの亡霊と新幹線--


 全国規模で巨額投資を繰り返して、今や公共事業において無くてはならないプレイヤーとなったのは桂華鉄道。

 だが、その桂華鉄道は事業再編後も上場予定なしという発表が水面下を騒がせている。


「元々日本の財閥の形成において鉄道は常套手段の一つでした。桂華グループは戦後の企業であり、その急膨張は1990年代後半の不良債権処理からでした。

 桂華グループのオーナー家である桂華院家が財産を次代以降に引き継がせるのならば、桂華鉄道こそが本命なのかもしれません」


 桂華鉄道は本業の鉄道だけでなくその子会社に上場済みの帝西百貨店や桂華ホテルを抱え、AIRHOや歌劇団なども抱える巨大グループではあるが、その中核である鉄道業においては目玉である新宿新幹線と新常磐鉄道、なにわ筋鉄道の工事の進捗に伴い、かつてのバブルの紳士達が近寄っているという噂が後を絶たない。

 筑波学園都市から秋葉原を経由して東京駅地下ホームに合流する新常磐鉄道、大阪の中心部を地下鉄で結ぶなにわ筋鉄道、新宿ジオフロントの中核事業である新宿新幹線は巨額の金が動くだけでなく、それに伴う周辺の地価高騰でバブル崩壊と共に消えていた地上げ屋が復活しているというのだ。

 元地上げ屋に話を聞いてみた。


「まだ寄ってきている段階で、本格的に動いているという形跡はないみたいですね。

 この手の地上げは、金主となる不動産会社や建設会社、そこに金を貸す金融機関がそろって初めて動けるもので、この三者はバブル崩壊で致命傷を受けて、いまだ新規投資すらしにくい所が多いはず。

 この話は、自分たちを桂華鉄道側に有益だから使ってくれというアピールなんでしょう。

 不動産会社や建設会社は地元の名士が多く、必然的に政治家がついてくるから、政治がらみの圧力もあるのかもしれません」


 新宿新幹線の終点となる新宿駅はともかく、そのほとんどが地下となる新宿新幹線は他に駅ができるのかどうかで、その駅の地価が上がりかねず、ルート上の自治体関係者も穏やかでない。

 既に池袋駅は当確しており、合流点近くになる赤羽駅に新幹線駅を作ってくれという動きは駅周辺の住民を巻き込んで大きくなっているという。

 金は全額桂華鉄道が出すことから国は認可を与える立場に過ぎないため、政治家の関与については比較的抵抗できるのが強みではある。しかし、この手の動きに政治家が追随した場合、何が起こるかは我々はバブルで経験済みであり警戒が必要であろう。

 ある金融ジャーナリストは匿名でこんな事を話してくれた。


「金融機関の不良債権処理についてはメガバンクについてはほぼ峠を越えました、残るは地銀とゼネコンです。

 地銀はいずれ金融庁主導で合併の嵐が吹き荒れるでしょうが、ゼネコンの処理については内部でも意見が割れている所です。

 恋住政権は不良債権処理の完遂を目指してこれらの処理を早めようとしていますが、ゼネコンの多くは少しずつ息を吹き返しつつあるのです。

 それを支えているのが桂華鉄道の巨額の鉄道建設事業であり、ゼネコンから下請け孫請けを通じて地方金融機関に金が流れているので、ゼネコンを潰すと地方も潰しかねないと。

 メガバンクをはじめとした大手金融機関は今年夏のドル高相場に伴って、多くの利益を得ており、その利益の殆どを不良債権処理に突っ込むことが可能になっています。

 つまり、金の流れで言えば上下どちらも一定の止血ができたことで時間的猶予が与えられた訳で、無理に処理するより治癒に舵を切ってもいいのではないかという……」




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のれん代

 これ、説明が凄く面倒なのでwikiを見てくれとぶん投げる

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AE%E3%82%8C%E3%82%93_(%E4%BC%9A%E8%A8%88)


のれん代償却

 日本は「価値が続く間、一定的かつ継続的に処理しろ」で、欧米は「処理するな。ただしのれんの価値が失われた時に一括処理しろ」である。

 もちろん、処理すると費用UPになるので、欧米式の方が決算の見栄えはいい。

 にもかかわらず、日本でのれん代の処理をしているのは、お嬢様が表舞台に立つであろう10年後を見据えてであり、その時に綺麗に会社を渡そうというカリンの誠意である。

 なお、破滅後のタイミングになるので知ったこっちゃないという感覚で、当のお嬢様はあまりピンと来ていないからお買い物をして叱られるのだ。


新宿新幹線

 田端駅でくっつけるか赤羽でくっつけるかで迷ったのだけど、ほとんど地下だからで赤羽にした模様。

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