月刊経済誌財閥 2003年10月号特集 樺太疑獄と桂華グループ組織再編と株式上場のタイムスケジュール 続きの続き

桂華商会--実質的司令塔に試される統合作業と内憂外患--


 桂華グループの中枢と言われるムーンライトファンドが統合作業中の桂華商会に移管されたが、その統合作業中に発覚した鐘ヶ鳴紡績の粉飾決算に頭を悩ませている。

 関係者がぼやく。


「あまりに粉飾が酷くて、最初どこから手を付けていいかわからない有様でした。

 この桂華商会の経営統合は帝商石井・帝綿商事・鐘ヶ鳴紡績の実質的な救済という事もあり損は覚悟の上でしたが、まず損がどこからなのかがわからないという有様で、統合作業は遅れに遅れています。

 鐘ヶ鳴紡績については刑事事件として関係者を司直の手に委ねましたが、桂華商会を持ち株会社にしてその下に帝商石井・帝綿商事・鐘ヶ鳴紡績の三社を束ねて各事業ごとに再編、という当初の合併スケジュールはかなり遅れそうです」


 それでも桂華商会の今期の業績は絶好調だ。

 その理由は、桂華グループの中枢であるムーンライトファンドが桂華資源開発として桂華商会の子会社に収まったからだ。


「帝商石井・帝綿商事・鐘ヶ鳴紡績の三社で数千億円の特損が出るかもと言われていますが、それにびくともしない稼ぎをムーンライトファンド(現・桂華資源開発)はたたき出しています。

 今や桂華資源開発は、民事再生法を申請した日樺石油開発の救済に名乗りを上げ、これが実現したら日本に運ばれる原油総量の三割から四割を押さえるメインプレイヤーに成り上ります。

 原油相場は上昇基調にあり、和製メジャーの誕生に経済産業省も期待を隠そうとしていません」


 ただ、日樺石油開発は現在ワイドショーを騒がせている樺太疑獄こと樺太銀行マネーロンダリング事件に深くかかわっており、桂華資源開発による同社の救済には紆余曲折が予想される。

 統合作業中の桂華商会は、中の鐘ヶ鳴紡績の不正会計、外の日樺石油開発救済という二つの懸念事項を抱えながら体制作りを進めざるを得ない状況に陥っているためだ。

 関係者が匿名で語ってくれた。


「実質的な救済という事で、藤堂長吉社長はしっかりと社内を掌握していますし、桂華資源開発の社長になった岡崎祐一常務取締役も藤堂社長の子飼いです。

 ただ、旧帝商石井役員で真っ先に副社長に就任した天満橋満氏が社内で主導権を発揮しており、年齢的に岡崎氏が社長になる前のワンポイントで社長に就くのではという噂が流れては消えています。

 天満橋副社長は鐘ヶ鳴紡績、岡崎常務取締役が日樺石油開発と担当が分かれているのも藤堂社長の指導力と言われているゆえんです」


 桂華商会広報は「いずれは株式を上場したいが、今はまだ遅れている経営統合を完遂する事に全力を注ぐ」とコメント……



財団法人鳥風会--桂華院家の財産管理団体?社長会が与える影響と次期当主の噂--


 元々は桂華グループの社長会であった鳥風会だが、財団法人化して桂華グループのメセナ事業を管理する事が今春に発表されている。

 元は中堅財閥だった桂華グループがここまでの巨大財閥に成り上った以上、その社長会が意思疎通の場として機能するのはある種の必然と言えよう。

 ここでは、週に一度各社の取締役が一堂に集まって会食を行っている。

 参加者がその様子を語ってくれた。


「鳥風会の食事会は九段下桂華タワーのホールを使って行われています。

 基本、桂華院瑠奈公爵令嬢が挨拶をして皆で食事をする。公爵令嬢が未成年者という事もあって酒も煙草もなしという形の食事会ですね。

 彼女が居ない場合は代理として、橘隆二桂華鉄道会長が挨拶をし、その左右を一条進桂華金融ホールディングスCEOと藤堂長吉桂華商会社長が固めるというのが大体のパターンですね」


 これは、桂華グループを動かしているのが彼らであるという証明でもある。

 事実、桂華院家本家が社長を務める桂華岩崎畑辺製薬はグループ創業企業という事で上座を与えられているが、その実権はないに等しい。

 桂華院家一族の関係者が語ってくれた。


「元々桂華グループは今の桂華院清麻呂公爵と、ご兄弟だった桂華院乙麻呂氏が作った極東グループが母体となっています。

 現在の桂華グループはその旧極東系が作り出したものなのです。

 桂華院瑠奈公爵令嬢は実の父が乙麻呂氏であり、橘氏は瑠奈様つきの執事。

 一条氏は元極東銀行であり、藤堂氏は桂華商会ですが橘氏と交流がありました。

 一方で、桂華岩崎畑辺製薬はメガファーマのアーツノヴァ社と戦略的提携という形で外資の下におちました。

 鳥風会が財団法人化した結果、桂華院公爵が理事長についたのは、このあたりの差配があったのではと思っています」


 桂華グループは、桂華院瑠奈公爵令嬢を旗印にした旧極東グループ系が作り出したという話が事実だとしても、彼女が未成年であるという点が足を引っ張る。

 その為、桂華院公爵の一人息子である桂華院仲麻呂氏の出番が来ると先ほどの関係者は語る。


「仲麻呂氏は朝霧侯爵家息女である桜子様とご結婚し、先ごろ男子がお生まれになられたばかり。

 桂華院家の後継者については安泰ですが、問題は瑠奈様の方で、どなたの元に嫁ぐかは未だ未定なのです。

 実は桂華院家は岩崎財閥と縁が深く、清麻呂公爵の奥方が岩崎化学の重役の娘で、朝霧侯爵家の婦人が帝都岩崎銀行頭取である岩崎弥四郎氏の娘だという関わりがあります。

 岩崎財閥としては、この縁から取り込みをという考えもなくは無いのでしょうが……」


 ここで口を濁してそこから先は聞けなかった。

 ただ、話そのものは話題を変えて続けてくれた。


「鳥風会は財団法人化した際に、その運営費として桂華グループの株式が提供される事になりました。

 また、ムーンライトファンドからも多額の資金提供を受けています。

 ここが桂華院家の財産管理団体になるのは時間の問題でしょう。

 おそらくは、次期理事長に仲麻呂氏が就いて、そこから桂華院家の側近や一族が桂華グループに指導をというのが筋書きなのでしょうが、今の桂華グループを作り上げた橘・一条・藤堂の三氏がそれに従うかは疑問で……」




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こー言うのを書いている時は、作者が設定を忘れかかっている時だったりする


 こうやってまとめてみると、岩崎とのからみが不自然なまでにないのが気になるが、瑠奈の父である乙麻呂氏の東側内通事件がそれだけでかかっんだろうなぁと思ったり。

 ただ、事こうなった以上、岩崎としても瑠奈の取り込みはやらねばという訳で、青春よろしく岩崎一族のイケメンがやってくるという乙女ゲー展開にできればいいなぁ……

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