いくつかの記事抜粋 ハゲタカ編
『古川通信のTOBが加熱化しつつある。
これは米国パソコンメーカーで行われている委任状争奪戦において創業家が女性CEOの主導する合併に反対し、「買うならフルカワの方がいい」と発言したため。
この発言を受けて、TOBの目標を51%に変更しようという動きがアイアン・パートナーズの側に出ている。
一方で古川通信の動きは鈍く、「足尾財閥諸企業を通じて支援をお願いする」と繰り返すにとどまり市場には失望感も出ている。
現在の古川通信の価格は2236円……』
『経営危機が囁かれていた新田銀行が桂華金融ホールディングス入りを発表。
桂華金融ホールディングスは、桂華ルールを適用してこれを救済する事を発表した。
今回の新田銀行救済に公的資金は使われない模様。
この救済に伴って一条進桂華金融ホールディングスCEOは「これで埼玉県・栃木県を中心に北関東に強固な基盤を持つことができる」とのコメントを発表。
不良債権処理の中核と位置付けられている日光鬼怒川温泉街の債務再編と再開発は桂華ホテルと協力し、帝東鉄道や東日本帝国鉄道とも協力……』
『速報:米国パソコンメーカーの委任状争奪戦、創業家が大差で勝利し女性CEOは辞職を表明』
『四洋電機はホープメモリに500億円の第三者割当増資を決定した。
この資金調達は四洋電機が転換社債を発行し、桂華金融ホールディングスが全額引き受ける事になった。
経営再建中の四洋電機は事業ポートフォリオの最適化を進めており、これと並行して赤字を出していた白物家電事業を松幸電器産業に売却。
経営再建を牽引した小型液晶と電池の他に今回のメモリを手に入れて、IT産業のサプライメーカーとして活路を見出す予定……』
『町下ファンドとアイアン・パートナーズは本日付けで両者の業務提携を解消すると発表した。
米国パソコンメーカーの委任状争奪戦で女性CEOを解任した新経営陣が、その公約となった古川通信の買収に舵を切ったため。物言う株主として穏健な路線を目指していた町下ファンドと米パソコンメーカーに呼応したアイアン・パートナーズの路線対立が表面化し、今回の提携解消となった。
アイアン・パートナーズはそれまで町下ファンドと集めていた古川通信株の名義はこちらにあるとして東京地裁に仮処分を申請。
更に欧米金融機関数社からの資金提供を受けてTOB価格を2600円に引き上げる事を発表。
これを受けて町下ファンドは、古川通信経営陣と合同で会見を開き、このTOBに対して防衛をする事を発表。
古川通信株はストップ高となり……』
『速報:古川通信のTOBに対して、町下ファンドが音頭をとり帝国電話を中心とした企業連合がホワイトナイトを表明。
2800円で対抗TOBを……』
『速報:米長距離通信事業WCI社の不正会計事件でCEOが辞任を表明。米ナスダック総崩れ』
『速報:米長距離通信事業WCI社チャプター11申請。年を越せず』
『速報:アイアン・パートナーズが古川通信へのTOB撤退を表明し帝国電話に持ち株を売却。帝国電話を中心とする企業連合は古川通信株の35%弱を集めたと発表』
『年が変わったが米国ITバブルが完全崩壊し、IT企業は何処も資金繰りに苦慮している。
秋のゼネラル・エネルギー・オンラインに続き、年末に米長距離通信事業WCI社の破綻が尾を引き、日経株価は17500円で大納会を終わっている。
古川通信のTOB等「物言う株主」が始動した年でもあり、財閥の崩壊が加速するか強化されるのか予断を許さない。
一方で、不良債権処理に苦しんだ金融機関はなんとか苦境を脱しようとしているが、今度は先行と後発で体力差が出てきだしており、さらなる再編が進む可能性がある。
先行しているのは桂華金融ホールディングスや帝都岩崎銀行・二木淀屋橋銀行、後発しているのが穂波銀行や五和尾三銀行で、金融庁は「2003年時までの不良債権処理の終了」を目標に特別監査を実行する予定だ。
桂華金融ホールディングスは桂華グループの機関銀行化の懸念を武永大臣が発言する等、株式上場が今後の課題となり、いつ上場するかのスケジュールに注目が集まっている。
またそれ以外の銀行では大手流通企業太永や総合商社、ゼネコン等での不良債権処理が残っており、後発金融機関が持ちこたえるかを市場は注視している』
『桂華金融ホールディングスは、勘定系システム開発について計画を一時延期する事を発表した。
複数金融機関の合併によってできた桂華金融ホールディングスは、勘定系システムがバラバラでその統一を目指した新規システムの開発を計画していたが、あまりに複数にまたがる金融機関のシステム統合への懸念と、救済した新田銀行の再建でシステム開発を一時凍結。
代替案として、複数金融機関の勘定系システムを統括処理するデータセンターを都内に設置し、バックアップラインを構築。
その上で、金融・証券・保険でまずシステムをまとめ、それから統一システムに移行するという三段階のシステム移行を発表した。
期間は五年、これにかかるシステム費用は2500億円を予定し……』
『経営不振が囁かれていた米国パソコンメーカーのポータコンがシリコンバレーのファンドであるムーンライトファンド傘下に入ったことを発表した。
ポータコンは米国PCメーカー第二位だが、近年は経営不振でITバブル崩壊の波に飲まれて苦境に立たされていた。
起死回生の一手として同業他社との合併に望みをかけたが、委任状争奪戦で大敗した結果合併は白紙に。
米長距離通信事業WCI社のチャプター11表明でナスダックが総崩れとなった中、資金繰りが悪化しムーンライトファンドに駆け込む形となった。
ムーンライトファンドは日系財閥桂華グループが抱えるファンドで、シリコンバレーに本拠を置きIT投資で財を成し、近年は原油を中心とした資源ビジネスに注力している。
傘下企業の一つである四洋電機はメモリと電池と小型液晶に強みがあり、ポータコンはノートパソコンを中心に直販体制を立て直して事業の再構築を……』
『古川通信のTOBで集めた株式だが、帝国電話以外の企業はその持ち株に対して苦慮している。
時価会計解禁が叫ばれる中、高値掴みで評価損が出る可能性が高く、米国市場がITバブル完全崩壊で何処も資金繰りに余裕はなく、買収の可能性は無いと判断して現金化したいというのが本音だ。
実際、いくつかの企業はこの騒動の発端となった桂華金融ホールディングスに株を売却したものとみられ、早くも帝国電話を中心とする企業連合内で足並みの乱れが露呈する結果となった。
桂華金融ホールディングスも、己の勘定系システム開発発注を餌に彼らとの関係改善を画策しており、帝国電話内部でも米国内に伝のある彼らを使ってWCI社の買収を目指すべきだという声が……』
『速報:古川通信と四洋電機の経営統合を発表。ムーンライトファンドより米パソコン企業ポータコンを買収し、日米にまたがる巨大コンピューター企業が誕生』
『速報:帝国電話が米WCI社救済に名乗り』
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女性CEOの委任状争奪戦
結局彼女は追放されたが、その方向は間違っていなかったという結論が調べてみて出ていたのは笑った。
米国はかくもシビアなのである。
鬼怒川温泉
東京の奥座敷であり、バブルの象徴であり、バブル崩壊の象徴でもある。
近年は客が戻っているらしい。
ホープメモリ
別名『日本銀行に殺された会社』とwikiに書かれていたのには吹いた。
転換社債
事前に決められた価格で株式に転換できるのがポイント。
転換価額よりも株価が上なら、株式に転換して売却する事で利益を得る。
逆に転換価額より株価が下なら、転換せずに満期日まで待つことで社債としての利息を受け取り続けることもできる。
ただ、転換されると必然的に株式が希釈化されるのがデメリットだが、近年はTOB対策としてそれを狙った社債も出ていたり。
松幸電器産業
大阪のあの会社。
現実ではこの時期家電総崩れで、各社合わせて数万ものリストラ人員が出ている。
ホワイトナイト
TOB用語で敵対的買収を仕掛けられた対象会社を、買収者に対抗して友好的に買収または合併する会社の事。
今回は帝国電話を中心に企業連合が組まれているあたり実に日本的である。
WCI社
実際に破綻したのは2002年7月。
もちろん、TOBでハゲタカがうるさくなった瑠奈が垂れ込んで、ハゲタカの巣を叩き潰した。
ポータコン
HPとの合併話が流れて資金繰りが悪化した結果、ムーンライトファンドに身を寄せる羽目に。
米企業でドルが救済に使える事がこの会社を救った。
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