お嬢様の修学旅行 初等部編 その1

 東京駅。

 新幹線ホームに制服姿の私達の姿があった。


「修学旅行は京都か。

 まぁ、行けるだけましという所だろうな」


「というか、桂華院さんが強引に押したんでしょ?

 無茶をするなぁ……」


「企画から資金提供まで全部やったんだろう?

 感謝はするが大丈夫なのか?桂華院よ?」


 いつもの面子からのツッコミにえへんと胸をはる。

 このあたりは悪役令嬢のお約束でもある。


「もーっと私を褒めてくれてもいいのよ♪

 修学旅行が無くなるのはやっぱり嫌じゃない」


 同時多発テロのおかげで治安関係を気にした結果、修学旅行が中止になりかかったのだ。

 で、全部丸抱えする事で強引に修学旅行を復活させたのである。

 何しろ、治安リスクの最大要因が私だったのだから。しかたない。


「もっとも、ここまで大げさになるとは私も思っていなかったんだけどね……」


 京都に決定した理由は新幹線が使えるからで、その新幹線を私が抑えていたというのが大きい。

 新幹線を借りきれたのだ。

 とはいえ、借りたのは四国新幹線の東海道直通分の八両のみで、西日本分の八両は通常運行である。

 帝都学習館のクラスは3つで100人で先生が10人。

 それに、護衛が30人にメイドが10人、ついてくる警察の護衛官が3人の計153人。

 これで八両の独占である。

 快適な旅なのは間違いがない。


「みんな整列して乗れー」


 先生の声にしたがって、乗車。

 なお、みんなで楽しむため指定席乗車であり、グリーン車およびラグジュアリークラスは利用していない。

 こうして、修学旅行は始まった。

 なお、カエルをばらまいてくれる車内販売員のおねーさんは当然居ないし、私達も親書を運ぶミッションを受けてはいない。


「はいお菓子とオレンジ。

 何考えているの?

 桂華院さん」


「ありがと。

 春日乃さん。

 無事に修学旅行に行けてよかったなぁと」


「一時はどうなるかと思ったもんねー。

 ねー。蛍」


 私にお菓子とみかんをくれた春日乃明日香さんが更に隣の開法院蛍さんに話を振り、彼女はこくんと頭を縦に振った。

 二人は幼稚園からの仲なので、私の環境を理解してからも物怖じせず、仲良くし続けてくれているのでこんな関係になっている。

 なお、明日香さんは活発系リーダーの特性があり、クラス委員は大体私か彼女が交代してやっている。

 蛍さんは基本寡黙で何か言う時も小声で囁くように言う和系美女である。

 新幹線は定刻通りに東京駅を出発。

 京都まで約三時間ほどの旅である。

 これが思ったより暇なので、皆それぞれに暇潰しをしだす訳で。

 私は東京駅で買ってきた経済新聞を読み、明日香さんはMDプレイヤーで音楽を聞き、蛍さんは読書と言った感じ。


「桂華院さん。

 何か面白い記事はありまして?」


 椅子の向こうから声を掛けてきたのが、高橋鑑子さん。

 彼女のお父さんが橘と知り合いらしく、そのお父さんは警察の偉い人らしい。

 部活は陸上部と剣道部の掛け持ちで、私を部活に誘った体育会系少女でもあった。


「何も。

 世間は色々あるけども、世は全て事も無しですわ♪」


 その新聞の一面ぶち抜きが、『古川通信社長辞任!足尾財閥離脱の背景に銀行団……』なんてでかでかと書かれているが、追い込んだのはうちというか私だったりする。

 古川通信は携帯事業の過当競争が激しくなっており、消耗戦で崩壊するならばと経営再建した四洋電機とくっ付けてしまおうという下心だったりする。

 政府の経済財政諮問会議で次の標的と目されていた会社なので先んじて抑える形になったが、もうしばらくしたら古川通信と四洋電機の業務提携が発表されるだろう。

 ついでだが、民事再生法を申請した大阪の池目鉄工を救済し、越後重工と合併させる事もこの新聞に乗っているが、こっちは隅っこである。

 

「そういえば、京都に着いてからのコースはどうなっていたかしら?」


 私は新聞を畳んで、修学旅行のしおりを確認する。

 三泊四日の修学旅行は京都到着後にそのまま駅前の京都桂華ホテルに入って昼食。

 その後、三十三間堂・清水寺・銀閣寺を観光して一日目は終了。

 二日目は、朝食を食べた後電車で稲荷駅まで行って伏見稲荷神社の千本鳥居を見て電車で戻ってホテルで昼食。

 午後からは、二条城・金閣寺・龍安寺・仁和寺・嵐山と巡って終了。

 三日目は自由行動だけど、嵐山観光や鉄道博物館見学なんかができる。

 で、四日目に東京に帰るという感じになっている。


「こんな感じ」

「桂華院さんは自由行動は何をする予定なのですか?」


 鑑子さんの隣りにいた栗森志津香さんが私に声を掛ける。

 地方財閥の娘さんで、桂華銀行がメインバンクなので全力で媚びを売る姿勢は嫌いではない。


「まだ何も決めていないのよ。

 どうせ誰かからお誘いは来ると思うけど」


 いつもの面々とつるんで何かするのだろうと思ったのはこの場の全員の認識だが、そこは女子。

 口に出さないのがマナーである。

 そんな感じで、私達の乗った新幹線は京都に向かう。




────────────────────────────────


もーっと私を褒めてくれてもいいのよ♪

 艦隊これくしょんの『でかい暁』。

 ちと美少女文庫という官能小説文庫に彼女が出ていると聞いて挿絵だけでレジに持っていった馬鹿が一人。

 まだ読んでいない。

 年齢的には本家の暁のような気がしないでもないが、金髪なのでこっちに。


カエルをバラ撒いてくれる車内販売員のおねーさん 親書を運ぶミッション

 『魔法先生ネギま!』。

 散々二次創作を読み続けた結果、ここまでの流れは覚えてしまった自分に苦笑する。

 ここで力尽きるか、学園祭で力尽きるかが、二次創作の鬼門。


池目鉄工

 感想からのネタ拾い。

 越後重工の強化に使えるので、提供してくださった方に感謝。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る