六月某日放送 ニュースの焦点 総裁選と総選挙の見かた

『泉川内閣は選挙管理内閣です。

 七月末の総選挙を宣言しており、そのために六月末に与党は総裁選を実施。

 泉川総理は総裁選に出馬せず、新しい総裁を選ぶことを決めています。

 今日のニュースの焦点は、この総裁選と総選挙を詳しく見てゆこうと思います』


『まずは総裁選から。

 党内の候補者は総理総裁候補と呼ばれながら去年の総裁選に出馬して反主流派に回ってしまった加東元幹事長に、今回が顔見世の阿蘇経済企画庁長官、鶴居元建設大臣に、林幹事長の四人が立候補を表明。

 ここから第一のふるいである二十人の推薦人集めがあります。

 国会議員二十人の推薦人を集められるかどうかで、その候補者が立候補を受け付けられるかというハードルがあるのです。

 与党の派閥が世論に叩かれながらも維持されているのはこの二十人の推薦人の為とも言ってもいいでしょう。

 もちろん、戦の帰趨を決めるまえに候補者に賭けるのだから、総裁になれば総理になった時に大臣の椅子が約束されているなんて事も考えられます』


『……立憲政友党総裁選は各候補者がそれぞれ二十人の推薦人を集めた模様です。

 国会議員票及び地方票を足した514票の過半数を取った者が総理総裁になる訳ですが、解説の……さん。現在の各候補者票読みはどのようなものでしょうか?』


『現在の所、林幹事長がリードしているみたいですね。

 林幹事長には自分の派閥の他に渕上前総理の派閥が支持しており、その次が加東元幹事長、鶴居元建設大臣に、阿蘇経済企画庁長官の順になっています。

 渕上前総理の派閥は、先の総裁選で加東元幹事長の派閥を徹底的に干したので、加東元幹事長が総裁になったらその報復を恐れているという事なのでしょう。

 とはいえ、地方票は加東元幹事長の方が優勢であり、まだ予断を許さない状況になっております』


『その後に行われる総選挙の状況についてはどうなっているでしょうか?』


『与党総裁選の影に隠れて、野党の話題が隠れている為か、全体的に連立与党優勢で進んでいるみたいです。

 現在の所与党の過半数確保は硬いだろうと言われています。

 ただ、その状況も波乱要因が無い訳ではありません』


『と、申しますと?』


『現在の三党連立は火種を抱えており、立憲政友党帰参を狙っていた連立与党の一党との協議が宙に浮いたままなのです。

 彼らは選挙資格が無いのにも関わらず公然と加東元幹事長を支援しており、加東元幹事長の地方票の優勢はこれが原因だと言われています。

 更に、野党ともパイプを有しており、総選挙の動向次第では野党と手を組んで首班指名選挙で強引に総理を狙うなんて噂も永田町では飛び交っています』


『そのためなのでしょうか、泉川総理と彼の派閥は中立を宣言していますね』


『ええ。泉川派の46人の動向はこの総裁選で決定的な影響力を持つだろうと言われています。

 また、暫定政権にも関わらず桂華鉄道が全額負担を宣言した四国新幹線の建設許可を出した事で、四国の地方票も泉川派に流れました。

 泉川派が何処に付くかで総裁が決まるとも言われる所以です』


『林幹事長と加東元幹事長のどちらに付くと思われますか?』


『選挙管理内閣とはいえ泉川総理は渕上前総理から禅譲された恩があるので林幹事長に付くのではと言われています。

 ですが、渕上前総理もそうなのですが、総理に『上がった』為にかえって派閥の締め付けが弱くなる可能性があり予断を許しません。

 連立与党や野党からも切り崩しが考えられる現状で、どこまで中立を維持できるかという所でしょうか』


『泉川内閣の内閣支持率と与党立憲政友党の支持率を足しても、政権が倒れる目安である50は届かず低迷しています』


『内閣支持率は選挙管理内閣だけに低迷は仕方ないとしても政党支持率が伸び悩み、野党の支持が伸びている所が気になります。

 彼らは『財閥解体・不良債権処理・政財官の癒着一掃』を合言葉に無党派層に支持を広げていますね』


『それでも、与党が過半数を確保する勢いですか?』


『小選挙区の怖い所で、野党が分裂しているから一議席の勝ち抜きである小選挙区で与党が優勢になるのです。

 野党の勢力拡大は比例代表で伸びてくるでしょうね』


『ありがとうございました。

 続きましては経済ニュースです。

 本日大手スーパーのサチイが東京地裁に民事再生法の適用を申請。

 負債総額は一兆九千億円にのぼる戦後最大規模の倒産……』




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与党帰参

 渕上総理が早く引退したからとある党が割れずに連立に残っている。

 つまり、彼にとってのフィーバータイム発動中。


50を超えると

 青木率。

 ちなみに、この人この時代だとまだ現役で参院のドンの一人で頑張っている。

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